東京五輪のテストイベントを兼ねて5月5日に開催された「北海道・札幌マラソンフェスティバル2021」。注目のレースを制したのは男子ハーフマラソン、10kmともアシックスが3月末に発売したレーシングシューズ「METASPEED Sky(メタスピード スカイ)」を履いた選手だった。
このレースには大学駅伝強豪校の選手たちも同じメタスピード スカイを履いて出走していた。大学生ランナーは実戦の場でどんなことを感じたのだろうか。
5月5日に開催された「北海道・札幌マラソンフェスティバル2021」。写真は10kmのスタートシーン
早大と帝京大の選手が「METASPEED Sky」を着用
新素材の採用で推進力がアップ
発売前のプロトタイプの段階で大きな話題を集めていたアシックス史上最速レーシングシューズ『METASPEED(メタスピード)』シリーズが、いよいよ公式レースでお目見えした。
5月5日に開催された「北海道・札幌マラソンフェスティバル2021」では、男子ハーフマラソンを1時間0分46秒の自己新で制したヒラリー・キプコエチ(ケニア)の足元が、アシックスのメタスピード スカイだった。そして、大学駅伝の強豪校である早大と帝京大の学生ランナーたちもこの話題のシューズに足を入れ、札幌市内を駆け抜けた。
1時間0分46秒で男子ハーフマラソンを制したヒラリー・キプコエチ(ケニア)
分厚いミッドソールが目を引くメタスピードシリーズは、アシックスが満を持して開発したトップランナー向けの厚底レーシングシューズだ。このシューズに、アシックスの先進的技術が惜しみなく注ぎ込まれている。
ミッドソールには全面に、アシックスの軽量フォーム材の中で最も反発性に優れた「FF BLAST TURBO(エフエフ ブラスト ターボ)」を採用。踵部から前足部にかけて軽量なカーボンプレートを内蔵し、足の動きを安定させて、効果的に身体を前方向へ推進させることをサポートしてくれる。これらの効果により、メタスピードシリーズを履くと従来モデルに比べてストライドが伸びることが証明されている。
分厚いソールが特徴的なアシックスの「METASPEED Sky(メタスピード スカイ)」。ミッドソールにはアシックスの軽量フォーム材の中で最も反発性に優れた「FF BLAST TURBO(エフエフ ブラスト ターボ)」を採用し、軽量なカーボンプレートを内蔵している
さらに、メタスピードシリーズの最大の特徴は、自分の走法に合わせて2つのタイプのシューズから選べる点にある。走行スピードが上がる際に歩幅が長くなっていく〝ストライド型〟であればメタスピード スカイ。走行スピードが上がるにつれてストライドが伸びるだけでなく脚の回転数も上がる〝ピッチ型〟であればMETASPEED Edge(メタスピード エッジ/6月4日発売)と、自らの走りに合ったシューズを選ぶことで高いパフォーマンスを引き出してくれるのだ。
ハーフマラソンで大学生が好走
「自然とストライドを伸ばしてくれる」
札幌では先に発売されたメタスピード スカイを履いて学生ランナーたちは走った。新シーズンを迎えたばかりとあって、まだこれから調子を上げていく段階だが、それぞれ好印象を口にしていた。
今季、帝京大の主力に成長することが期待されている2年生の西脇翔太は、初挑戦のハーフマラソンで1時間4分40秒(38位)と好走。10km地点は30分24秒と、トラック10000mの自己ベスト(30分36秒47=2019年)を上回るタイムで通過した。
「(メタスピード スカイは)自然とストライドを伸ばしてくれます。ガラスに映ったフォームを確認しながら走りましたが、ピッチはいつも通りなのに『こんなにストライドが伸びているんだ』と驚きました。メタスピード スカイを初めて手に取った時にソールの柔らかさにびっくりしましたが、そのクッション性があって、後半の余裕度につながったのかなと思います。10~15kmをペースアップすることができました」
初ハーフとあって終盤はさすがにペースダウンし、自己採点は「51点」と厳しめだったが、失速を最低限度に食い止めて走り切った。
自身初のハーフマラソンで1時間4分40秒(38位)と健闘した帝京大2年生の西脇翔太
早大4年生の河合陽平は、この冬にはマラソンに挑戦するなどスタミナを強化してきた。このハーフマラソンには練習の一環として出場しながら1時間6分05秒(44位)の自己新をマークした。
「メタスピード スカイはアッパーが結構柔らかい素材でできていて、足を入れた時のフィット感がすごくいいなと思いました。僕は身長が低いので(160cm)、監督とも相談してストライドを大きくすることを意識して走っていますが、15km以降もストライドが落ちている感覚はありませんでした。むしろ、『どんどん伸びているんじゃないか』というぐらいの感覚でした」
後半は狙い通りにペースアップして走り切った。学生ラストイヤーに懸ける思いは強く、首脳陣にもしっかりとアピールする走りだった。
ハーフマラソンに3人が出場した早大は1時間5分42秒(40位)の佐藤航希(2年、左)がチームトップ。中央は1時間5分47秒(41位)の向井悠介(4年)、右は1時間6分05秒(44位)の河合陽平(4年)
注目ルーキー・伊藤が10kmに出場
「踏み込めばそのまま反発力として返ってくる」
10kmの部には、5000mで高校歴代2位の13分36秒57を持つ早大の注目ルーキー・伊藤大志が出場した。優勝は先輩の辻文哉(2年)に譲ったが、最後まで余裕を残しながら辻と同タイムの30分08秒でフィニッシュした。
「練習の一環として、最初の3kmを1km2分50秒ペースで走ったところ、スーッとスピードを上げることができました。後半はストライドを大きくする走りを意識して走ったのですが、ピッチを維持しながらも、予想以上にうまく走れました。厚底シューズなのに沈み込むこともなく、踏み込めばそのまま反発力として返ってきてくれるのを感じました」と、シューズの性能を実感。堂々とした走りは大学1年目からの活躍を予感させた。
練習の一環ながら30分08秒の同タイムで10km部門の1、2位を占めた早大の辻文哉(2年、右)と伊藤大志(1年)
10kmの部で3位に入ったのは、ケガからの復帰レースだった帝京大3年の新井大貴。
「僕はつま先接地ではなくて、フラットに接地するタイプなのですが、メタスピード スカイは自分の走りに合っていて、走っていてふくらはぎなどの筋肉に余計な力が入らず、力みなく走れました。ラスト1kmは風が強かったのですが、そんな中でもグリップが効いて、しっかりと地面をとらえられる感触がありました。風にも押し負けず、大きいストライドで走れたことにびっくりしました。今後もロードレースで積極的に使っていきたいです」
過去2年間は主力メンバーと見られながらも駅伝に出場する機会はなかったが、今季は新しい武器で飛躍を誓う。
帝京大は1年生の西久保雄志朗も10kmの部に出場した。
「もともとストライド走法ですが、メタスピード スカイを履いて走ってみると、楽にストライドを伸ばせる感覚がありました。実際にデータを見てみると、いつもはストライドが180cmぐらいなんですが、196cmまで伸びていました。他社の厚底シューズを履いた時には反発力に脚が負けて後半疲れてしまっていたのですが、メタスピード スカイは後半にもしっかり脚を残すことができた感じがありました」
まさに西久保の走法に合致したシューズだったようだ。ルーキーながら札幌遠征に参加できたのは、指揮官の期待の表れ。ストライド走法に磨きをかけ、育成のチームでぐんぐん力をつけていきそうだ。
帝京大は新井大貴(3年、左)と西久保雄志朗(1年)が10kmに出場。ともに最初の5kmを14分台で入り、新井は30分38秒で3位、西久保は31分18秒で6位だった
『エッジ』の登場で選択肢がさらに拡大
「自分に合ったシューズを選べるように」
メタスピードシリーズの登場により、指導者たちも長距離界に新たなトレンドが生まれる気配を感じ取っている。
「選手たちが厚底シューズをレースで履くようになって、前半から積極的なレースをしても、後半も脚がもつようになったと感じています。心理的な壁を取っ払って、前半から突っ込めるようになったのが大きいのかなと思います。アシックスから厚底のレーシングシューズが登場したのは非常にありがたい。選手からのフィードバックを聞いても、好印象を持っている選手が多いようです」
こう話すのは早大の相楽豊駅伝監督だ。レースシーンで厚底シューズが席巻するなか、新しい選択肢が増えたことを歓迎している。
帝京大の中野孝行監督は「今は、選手たちはメタスピード スカイを履いていますが、明らかに走りが大きくなっているのがわかります」と、選手たちの走りの変化を認めている。また、中野監督にとっても、新しい選択肢が増えたことは待ち望んだことだった。
「ピッチ型とストライド型と、2種類のシューズから選べるのは非常に画期的。アシックスは風穴を開けてくれたと思います。今はメタスピード スカイだけですが、メタスピード エッジが発売になったら、そちらを選ぶ選手も出てくると思います。棒高跳の選手が、いきなり6mを跳ぶための硬いポールを使おうとしても使いこなせません。それと同じことがシューズでも言えると思います。選手たちには自分に合ったシューズを選べるようになってもらいたいですね」(中野監督)
メタスピードシリーズはまだ登場したばかりだが、多くのトップランナーにとって、新たな選択肢になりそうだ。
文/福本ケイヤ
<関連リンク>
「METASPEED」特設ページ(アシックス公式サイト)
早大と帝京大の選手が「METASPEED Sky」を着用 新素材の採用で推進力がアップ
発売前のプロトタイプの段階で大きな話題を集めていたアシックス史上最速レーシングシューズ『METASPEED(メタスピード)』シリーズが、いよいよ公式レースでお目見えした。 5月5日に開催された「北海道・札幌マラソンフェスティバル2021」では、男子ハーフマラソンを1時間0分46秒の自己新で制したヒラリー・キプコエチ(ケニア)の足元が、アシックスのメタスピード スカイだった。そして、大学駅伝の強豪校である早大と帝京大の学生ランナーたちもこの話題のシューズに足を入れ、札幌市内を駆け抜けた。 1時間0分46秒で男子ハーフマラソンを制したヒラリー・キプコエチ(ケニア) 分厚いミッドソールが目を引くメタスピードシリーズは、アシックスが満を持して開発したトップランナー向けの厚底レーシングシューズだ。このシューズに、アシックスの先進的技術が惜しみなく注ぎ込まれている。 ミッドソールには全面に、アシックスの軽量フォーム材の中で最も反発性に優れた「FF BLAST TURBO(エフエフ ブラスト ターボ)」を採用。踵部から前足部にかけて軽量なカーボンプレートを内蔵し、足の動きを安定させて、効果的に身体を前方向へ推進させることをサポートしてくれる。これらの効果により、メタスピードシリーズを履くと従来モデルに比べてストライドが伸びることが証明されている。 分厚いソールが特徴的なアシックスの「METASPEED Sky(メタスピード スカイ)」。ミッドソールにはアシックスの軽量フォーム材の中で最も反発性に優れた「FF BLAST TURBO(エフエフ ブラスト ターボ)」を採用し、軽量なカーボンプレートを内蔵している さらに、メタスピードシリーズの最大の特徴は、自分の走法に合わせて2つのタイプのシューズから選べる点にある。走行スピードが上がる際に歩幅が長くなっていく〝ストライド型〟であればメタスピード スカイ。走行スピードが上がるにつれてストライドが伸びるだけでなく脚の回転数も上がる〝ピッチ型〟であればMETASPEED Edge(メタスピード エッジ/6月4日発売)と、自らの走りに合ったシューズを選ぶことで高いパフォーマンスを引き出してくれるのだ。ハーフマラソンで大学生が好走 「自然とストライドを伸ばしてくれる」
札幌では先に発売されたメタスピード スカイを履いて学生ランナーたちは走った。新シーズンを迎えたばかりとあって、まだこれから調子を上げていく段階だが、それぞれ好印象を口にしていた。 今季、帝京大の主力に成長することが期待されている2年生の西脇翔太は、初挑戦のハーフマラソンで1時間4分40秒(38位)と好走。10km地点は30分24秒と、トラック10000mの自己ベスト(30分36秒47=2019年)を上回るタイムで通過した。 「(メタスピード スカイは)自然とストライドを伸ばしてくれます。ガラスに映ったフォームを確認しながら走りましたが、ピッチはいつも通りなのに『こんなにストライドが伸びているんだ』と驚きました。メタスピード スカイを初めて手に取った時にソールの柔らかさにびっくりしましたが、そのクッション性があって、後半の余裕度につながったのかなと思います。10~15kmをペースアップすることができました」 初ハーフとあって終盤はさすがにペースダウンし、自己採点は「51点」と厳しめだったが、失速を最低限度に食い止めて走り切った。 自身初のハーフマラソンで1時間4分40秒(38位)と健闘した帝京大2年生の西脇翔太 早大4年生の河合陽平は、この冬にはマラソンに挑戦するなどスタミナを強化してきた。このハーフマラソンには練習の一環として出場しながら1時間6分05秒(44位)の自己新をマークした。 「メタスピード スカイはアッパーが結構柔らかい素材でできていて、足を入れた時のフィット感がすごくいいなと思いました。僕は身長が低いので(160cm)、監督とも相談してストライドを大きくすることを意識して走っていますが、15km以降もストライドが落ちている感覚はありませんでした。むしろ、『どんどん伸びているんじゃないか』というぐらいの感覚でした」 後半は狙い通りにペースアップして走り切った。学生ラストイヤーに懸ける思いは強く、首脳陣にもしっかりとアピールする走りだった。 ハーフマラソンに3人が出場した早大は1時間5分42秒(40位)の佐藤航希(2年、左)がチームトップ。中央は1時間5分47秒(41位)の向井悠介(4年)、右は1時間6分05秒(44位)の河合陽平(4年)注目ルーキー・伊藤が10kmに出場 「踏み込めばそのまま反発力として返ってくる」
10kmの部には、5000mで高校歴代2位の13分36秒57を持つ早大の注目ルーキー・伊藤大志が出場した。優勝は先輩の辻文哉(2年)に譲ったが、最後まで余裕を残しながら辻と同タイムの30分08秒でフィニッシュした。 「練習の一環として、最初の3kmを1km2分50秒ペースで走ったところ、スーッとスピードを上げることができました。後半はストライドを大きくする走りを意識して走ったのですが、ピッチを維持しながらも、予想以上にうまく走れました。厚底シューズなのに沈み込むこともなく、踏み込めばそのまま反発力として返ってきてくれるのを感じました」と、シューズの性能を実感。堂々とした走りは大学1年目からの活躍を予感させた。 練習の一環ながら30分08秒の同タイムで10km部門の1、2位を占めた早大の辻文哉(2年、右)と伊藤大志(1年) 10kmの部で3位に入ったのは、ケガからの復帰レースだった帝京大3年の新井大貴。 「僕はつま先接地ではなくて、フラットに接地するタイプなのですが、メタスピード スカイは自分の走りに合っていて、走っていてふくらはぎなどの筋肉に余計な力が入らず、力みなく走れました。ラスト1kmは風が強かったのですが、そんな中でもグリップが効いて、しっかりと地面をとらえられる感触がありました。風にも押し負けず、大きいストライドで走れたことにびっくりしました。今後もロードレースで積極的に使っていきたいです」 過去2年間は主力メンバーと見られながらも駅伝に出場する機会はなかったが、今季は新しい武器で飛躍を誓う。 帝京大は1年生の西久保雄志朗も10kmの部に出場した。 「もともとストライド走法ですが、メタスピード スカイを履いて走ってみると、楽にストライドを伸ばせる感覚がありました。実際にデータを見てみると、いつもはストライドが180cmぐらいなんですが、196cmまで伸びていました。他社の厚底シューズを履いた時には反発力に脚が負けて後半疲れてしまっていたのですが、メタスピード スカイは後半にもしっかり脚を残すことができた感じがありました」 まさに西久保の走法に合致したシューズだったようだ。ルーキーながら札幌遠征に参加できたのは、指揮官の期待の表れ。ストライド走法に磨きをかけ、育成のチームでぐんぐん力をつけていきそうだ。 帝京大は新井大貴(3年、左)と西久保雄志朗(1年)が10kmに出場。ともに最初の5kmを14分台で入り、新井は30分38秒で3位、西久保は31分18秒で6位だった『エッジ』の登場で選択肢がさらに拡大 「自分に合ったシューズを選べるように」
メタスピードシリーズの登場により、指導者たちも長距離界に新たなトレンドが生まれる気配を感じ取っている。 「選手たちが厚底シューズをレースで履くようになって、前半から積極的なレースをしても、後半も脚がもつようになったと感じています。心理的な壁を取っ払って、前半から突っ込めるようになったのが大きいのかなと思います。アシックスから厚底のレーシングシューズが登場したのは非常にありがたい。選手からのフィードバックを聞いても、好印象を持っている選手が多いようです」 こう話すのは早大の相楽豊駅伝監督だ。レースシーンで厚底シューズが席巻するなか、新しい選択肢が増えたことを歓迎している。 帝京大の中野孝行監督は「今は、選手たちはメタスピード スカイを履いていますが、明らかに走りが大きくなっているのがわかります」と、選手たちの走りの変化を認めている。また、中野監督にとっても、新しい選択肢が増えたことは待ち望んだことだった。 「ピッチ型とストライド型と、2種類のシューズから選べるのは非常に画期的。アシックスは風穴を開けてくれたと思います。今はメタスピード スカイだけですが、メタスピード エッジが発売になったら、そちらを選ぶ選手も出てくると思います。棒高跳の選手が、いきなり6mを跳ぶための硬いポールを使おうとしても使いこなせません。それと同じことがシューズでも言えると思います。選手たちには自分に合ったシューズを選べるようになってもらいたいですね」(中野監督) メタスピードシリーズはまだ登場したばかりだが、多くのトップランナーにとって、新たな選択肢になりそうだ。 文/福本ケイヤ <関連リンク> 「METASPEED」特設ページ(アシックス公式サイト)
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