2021.04.14
この春、男子陸上部を旗揚げした不動産会社のメイクス。42歳の仲村周作社長(右)が31歳の三田裕介氏を招聘した
マラソンで〝世界一〟を目指す
大きな夢を語り、いかに覚悟を持って挑むのか。それはビジネスもスポーツも同じかもしれない。コロナ禍で停滞感が漂う中、これまでにないスケールの大きな実業団チームが誕生する。「マラソンで世界一になる」ことを目標に不動産会社メイクスが4月1日に男子陸上競技部を立ち上げたのだ。監督には早大OBの三田裕介氏を招聘。この春、新チームが始動する。
42歳の経営者と31歳の新監督
株式会社メイクス(本社:東京都渋谷区)は2006年3月に設立されたベンチャー企業。グループ全体で従業員は201人(2021年)、売上高は152億5100万円(2020年)で、デザイン性と実用性を追求した都市型コンパクトマンションの分譲を中心に年々業績を伸ばしている。今年4月からは名古屋支店が立ち上がり、来年春には大阪支店もできる予定。「今日より明日をワクワク生きる」を企業理念としており、陸上競技部についても基本方針は変わらない。仲村周作社長は各世代で活躍した三田裕介氏に監督を依頼。2人は「マラソンで世界一になる」という夢を掲げている。
42歳の若き経営者は多忙を極める中で、4年前からトライアスロンに挑戦している。平日は朝5時半からトレーニングを行い、1週間でアイアンマンの距離(スイム3.8㎞、バイク180㎞、ラン42.195㎞)をこなしているという。そのラニングコーチを務めていたのが現在31歳の三田監督だ。
「三田さんが実業団チームの監督になったらどんなことができるのか、興味が湧いたのです。実業団は大手企業が多いのですが、ベンチャー企業だからこそできることもある。陸上競技部が強くなることで会社としての信頼感も増しますし、世界一を本気で目指すからこそ、実現できる可能性があると思っています」(仲村社長)
若さとバイタリティーでメイクスを率いる仲村社長。企業として日本陸上界にどんな新風を吹き込むか
指導者として夢を実現させる
三田監督は中学時代、野球部に所属しながら陸上競技の大会にも出場。「今までにいない選手になりたい」という熱い想いで愛知・豊川工業高校から本格的に陸上を開始した。1年時には3000mで8分13秒94の高1歴代最高記録を樹立。全国高校駅伝では3区で区間賞を獲得している。3年時にはインターハイ5000mで4位(日本人2位)、全国高校駅伝1区では日本人トップ(区間3位)という結果を残した。
早大では1年時からチームの主力として活躍。3年時には正月の学生駅伝の優勝メンバーにもなっている。大学卒業後は実業団チーム(JR東日本、NTN)に4年間在籍。その後は低酸素トレーニングを中心にスポーツ科学に基づくメニューを提案するランニングサイエンスラボの代表として、約4年間さまざまなレベルのアスリートを指導した。
「選手として本当に良かったのは高校1年生の時くらいで、自分が思い描いていた競技人生ではありませんでした。実業団1年目に10000mを28分15秒02で走り、ようやく(競技人生の)スタートラインに立てた気持ちになったのですが、その後は故障もありましたし、競技者として未熟だったなと思います」
三田監督は現役時代に叶えられなかった〝夢〟を、今度は指導者として目指すことになった。
愛知・豊川工業高校、早稲田大学時代に駅伝で大活躍した三田氏
ケニア・イテンにも拠点を設置
メイクスは「能力の最大化」をテーマに社員育成をしているが、それは陸上競技部も同じ。選手が持つポテンシャルを最大限に引き出すために3つの方針を掲げている。
1つ目は、「適正なトレーニングメニュー」を重要視。個々にスポーツ科学を応用したオーダー型のメニューを提案する。2つ目は、週に一度の「ワン・オン・ワン・ミーティング」だ。選手と監督が密にコミュニケーションを取り、選手の状態と方向性を確認していく。3つ目は、「練習拠点を世田谷区の用賀とケニアのイテンに置く」ということ。
本社は渋谷にあるため、国内の拠点は会社へのアクセスとトレーニング環境を考慮。近くにはクロスカントリー走ができる砧公園があり、トラックは世田谷区総合運動場陸上競技場や近隣の大学を使用する予定だ。そして〝マラソンの聖地〟と呼ばれるケニアのイテンにも選手寮を構え、数ヵ月単位でトレーニングに打ち込める環境を作る計画を立てている。
三田監督は指導に当たり、「選手のデータを取得し、ランニングフォームの改善、個々に合わせたトレーニングメニューを組むことが重要です。マネジメントする側として、選手がどんな状況であるのか。コミュニケーションも大切になってきます。そして世界のトップクラスが集まる環境でトレーニングする。世界一を目指すにはすべてが必要なこと。長期計画で選手を育成していきたいです」と熱く語った。
目指すは世界大会の金メダル
メイクスはマラソンで「世界一」を目指すだけでなく、実業団駅伝にも参戦する予定。コミュニケーションを大切にしていることもあり、最終的にはケニア人ランナー1~2人を含めて、選手9~ 10人の少数精鋭のチームにしていく方針だ。初年度は環境作りと選手・コーチのリクルート活動が中心になるという。
「走ることが速いのに越したことはないですが、重要視するのは、高い志を持ちチームの理念に共感できることで、そのような選手とやっていきたいですね。どんな状況でもあきらめない人間しか目標は達成できないと思っています。いかに覚悟を持って取り組むことができるのか。かつて日本は世界のトップを走っていました。その状況にもう一度したいと思っています。目指すは世界大会の金メダルです。4年ごとのビッグゲーム、2年ごとの世界陸上、どこで狙うのかプランニングして、小中学生が描くような大きな夢を本気になって実現します」(三田監督)
メイクスという社名には顧客に喜ばれる未来を「つくりだす」、顧客に信頼される人財を「つくりだす」、顧客の記憶に残るマンションを「つくりだす」ことへの意思と情熱が込められているという。ベンチャー企業が立ち上げた新チームが日本陸上界に〝新たな価値〟を創造する。
新たな挑戦に気を引き締めている三田監督
文/酒井政人
撮影/樋口俊秀
※この記事は『月刊陸上競技』2021年5月号に掲載しています
<関連リンク>
makes陸上競技部 創設のお知らせ
マラソンで〝世界一〟を目指す
大きな夢を語り、いかに覚悟を持って挑むのか。それはビジネスもスポーツも同じかもしれない。コロナ禍で停滞感が漂う中、これまでにないスケールの大きな実業団チームが誕生する。「マラソンで世界一になる」ことを目標に不動産会社メイクスが4月1日に男子陸上競技部を立ち上げたのだ。監督には早大OBの三田裕介氏を招聘。この春、新チームが始動する。42歳の経営者と31歳の新監督
株式会社メイクス(本社:東京都渋谷区)は2006年3月に設立されたベンチャー企業。グループ全体で従業員は201人(2021年)、売上高は152億5100万円(2020年)で、デザイン性と実用性を追求した都市型コンパクトマンションの分譲を中心に年々業績を伸ばしている。今年4月からは名古屋支店が立ち上がり、来年春には大阪支店もできる予定。「今日より明日をワクワク生きる」を企業理念としており、陸上競技部についても基本方針は変わらない。仲村周作社長は各世代で活躍した三田裕介氏に監督を依頼。2人は「マラソンで世界一になる」という夢を掲げている。 42歳の若き経営者は多忙を極める中で、4年前からトライアスロンに挑戦している。平日は朝5時半からトレーニングを行い、1週間でアイアンマンの距離(スイム3.8㎞、バイク180㎞、ラン42.195㎞)をこなしているという。そのラニングコーチを務めていたのが現在31歳の三田監督だ。 「三田さんが実業団チームの監督になったらどんなことができるのか、興味が湧いたのです。実業団は大手企業が多いのですが、ベンチャー企業だからこそできることもある。陸上競技部が強くなることで会社としての信頼感も増しますし、世界一を本気で目指すからこそ、実現できる可能性があると思っています」(仲村社長) 若さとバイタリティーでメイクスを率いる仲村社長。企業として日本陸上界にどんな新風を吹き込むか指導者として夢を実現させる
三田監督は中学時代、野球部に所属しながら陸上競技の大会にも出場。「今までにいない選手になりたい」という熱い想いで愛知・豊川工業高校から本格的に陸上を開始した。1年時には3000mで8分13秒94の高1歴代最高記録を樹立。全国高校駅伝では3区で区間賞を獲得している。3年時にはインターハイ5000mで4位(日本人2位)、全国高校駅伝1区では日本人トップ(区間3位)という結果を残した。 早大では1年時からチームの主力として活躍。3年時には正月の学生駅伝の優勝メンバーにもなっている。大学卒業後は実業団チーム(JR東日本、NTN)に4年間在籍。その後は低酸素トレーニングを中心にスポーツ科学に基づくメニューを提案するランニングサイエンスラボの代表として、約4年間さまざまなレベルのアスリートを指導した。 「選手として本当に良かったのは高校1年生の時くらいで、自分が思い描いていた競技人生ではありませんでした。実業団1年目に10000mを28分15秒02で走り、ようやく(競技人生の)スタートラインに立てた気持ちになったのですが、その後は故障もありましたし、競技者として未熟だったなと思います」 三田監督は現役時代に叶えられなかった〝夢〟を、今度は指導者として目指すことになった。 愛知・豊川工業高校、早稲田大学時代に駅伝で大活躍した三田氏ケニア・イテンにも拠点を設置
メイクスは「能力の最大化」をテーマに社員育成をしているが、それは陸上競技部も同じ。選手が持つポテンシャルを最大限に引き出すために3つの方針を掲げている。 1つ目は、「適正なトレーニングメニュー」を重要視。個々にスポーツ科学を応用したオーダー型のメニューを提案する。2つ目は、週に一度の「ワン・オン・ワン・ミーティング」だ。選手と監督が密にコミュニケーションを取り、選手の状態と方向性を確認していく。3つ目は、「練習拠点を世田谷区の用賀とケニアのイテンに置く」ということ。 本社は渋谷にあるため、国内の拠点は会社へのアクセスとトレーニング環境を考慮。近くにはクロスカントリー走ができる砧公園があり、トラックは世田谷区総合運動場陸上競技場や近隣の大学を使用する予定だ。そして〝マラソンの聖地〟と呼ばれるケニアのイテンにも選手寮を構え、数ヵ月単位でトレーニングに打ち込める環境を作る計画を立てている。 三田監督は指導に当たり、「選手のデータを取得し、ランニングフォームの改善、個々に合わせたトレーニングメニューを組むことが重要です。マネジメントする側として、選手がどんな状況であるのか。コミュニケーションも大切になってきます。そして世界のトップクラスが集まる環境でトレーニングする。世界一を目指すにはすべてが必要なこと。長期計画で選手を育成していきたいです」と熱く語った。目指すは世界大会の金メダル
メイクスはマラソンで「世界一」を目指すだけでなく、実業団駅伝にも参戦する予定。コミュニケーションを大切にしていることもあり、最終的にはケニア人ランナー1~2人を含めて、選手9~ 10人の少数精鋭のチームにしていく方針だ。初年度は環境作りと選手・コーチのリクルート活動が中心になるという。 「走ることが速いのに越したことはないですが、重要視するのは、高い志を持ちチームの理念に共感できることで、そのような選手とやっていきたいですね。どんな状況でもあきらめない人間しか目標は達成できないと思っています。いかに覚悟を持って取り組むことができるのか。かつて日本は世界のトップを走っていました。その状況にもう一度したいと思っています。目指すは世界大会の金メダルです。4年ごとのビッグゲーム、2年ごとの世界陸上、どこで狙うのかプランニングして、小中学生が描くような大きな夢を本気になって実現します」(三田監督) メイクスという社名には顧客に喜ばれる未来を「つくりだす」、顧客に信頼される人財を「つくりだす」、顧客の記憶に残るマンションを「つくりだす」ことへの意思と情熱が込められているという。ベンチャー企業が立ち上げた新チームが日本陸上界に〝新たな価値〟を創造する。 新たな挑戦に気を引き締めている三田監督 文/酒井政人 撮影/樋口俊秀 ※この記事は『月刊陸上競技』2021年5月号に掲載しています <関連リンク> makes陸上競技部 創設のお知らせRECOMMENDED おすすめの記事
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