2018.10.13
山縣 秋も圧巻のスプリント サードベスト10秒01で3連覇!!
100mのレースプランに自信
一昨年は10秒03、昨年は10秒00と2年続けてこの大会で自己ベストをマークし、男子100mで優勝を飾っている山縣亮太(セイコー)。大阪・長居の競技場と相性がいいのか、あるいは大会の雰囲気や時期がマッチするのか。今年もヒーロー役を大物新人の桐生祥秀(日本生命)に譲らず、自己3番目の10秒01(±0)で3連覇のフィニッシュに飛び込んだ。
「また10秒00じゃ悔しいので……」と、ゴールで気持ちだけ身体を前傾させた。8月末のジャカルタ・アジア大会が、自己タイの10秒00(+0.8)。2位と同タイムの3位だった。慶大の後輩に当たる小池祐貴(ANA)は、男子200mで2位と同タイムながら金メダルをもぎとった。倒れ込みながらフィニッシュする小池を見て、「あ、俺はこの差で負けたんだな」と思った。だから今回は「ちょっとだけやってみたんです」と、山縣にしては珍しく前傾した場面を笑顔で説明した。「100mのフィニッシュは難しいんですけどね」と言いながら……。
アジア大会は日本選手団全体の主将を務めたこともあり、帰国後は「任を解かれた安堵」からか心身共に疲労感が濃かった。大会後の完全休養は「いつも2日なんですけど、今回は3日入れました」と山縣。その後、今大会に向けては「負荷の高い練習を入れておこう」と、Maxに近いタイム設定で何回か。「1週間前の感覚はアジア大会前よりずっと良かった」と話し、ライバル不在だった昨年と違って今年は桐生がいたが、「100mのレースプランに対しては自信を持っていた」と明かす。
1日のうちに予選、準決勝、決勝と3本のレースで、「チャンスは2本」と思っていた。昨年の秋、桐生が9秒98を出して先んじた記録を狙うのに、朝一番に行われる予選は「記録を出すモチベーションではない」。最終8組だった山縣は、前の組でフライングによる失格者が出て進行に手間取り、数十分待たされる不運もあって10秒34(-0.4)だった。
予選を2組で走った桐生より準決勝までの時間がだいぶ短くなったが、今季の山縣はラウンドの進め方が実にうまい。1本ごとに修正を重ね、準決勝では10秒14(-0.4)と記録を上げてきた。「スタートでもたついた感じ」はあったものの、終盤はスーッと流した。「これならチャンスがないわけじゃない」。山縣は2時間20分後の決勝に向け、対桐生というより記録へのイメージをふくらませた。「桐生君を意識し過ぎない」という山縣の心の持ちようが反映されたのかもしれない。
今季は日本人ランナーに負けなし
メインスタンドがほぼ埋まり、今大会一番の盛り上がりを見せた男子100m決勝。風はほとんどない。5レーンに準決勝が10秒21(+1.1)の桐生、7レーンに山縣。今大会、直線で行われる種目はスタートのやり直しが何度も見られ、この時も1度。「よくあること」と山縣はやり過ごしたが、いったん集中力が途切れるのは確かだ。
2度目の号砲で、2人の間のレーンに入った中大卒のルーキー・川上拓也(大阪ガス)が、山縣に引けをとらないような良いスタートを切った。桐生は、1度目より遅れる。
早くも先頭に立った山縣は「出し切る」ことをイメージして、「最初からスピードを出す」ようにしっかり地面を捕らえていった。今は「中盤から抜け出すところに地力を感じる」と自分で話すように、トップスピードに入ると他をまったく寄せ付けずに圧勝。無風の中での10秒01は「地力が一番わかる風ではないでしょうか」と、力がついたことを実感できる結果となった。桐生は持ち前の中盤から伸びず、川上をかわして2位に上がるのがやっとだった。
山縣のレース内容の自己採点は「80~90点」。「スタートでちょっと浮いた」のが、減点ポイントだという。それでも抜群の安定感を示し、今季は日本人選手に負けていない。山縣はその安定感について、「どの試合も全力を尽くし、目の前の試合にきちんと向き合うこと」と話した。
ここまで来たら、いつ9秒台が出てもおかしくない状況。「記録は、神様が〝いいよ〟と言うまで待ちます」と山縣は笑うが、もはや9秒台というより、本人の意思は「9秒98を超えたい」という域に達している。
今季最終戦となる福井国体の成年100mが、10月6日。ここ2年はこの大会で素晴らしいレースをしながら、国体で結果を残せていない。昨年は直前に故障して、欠場している。秋冷の季節でケガには細心の注意を払うとして、インタビューの最後に「次戦は9.98スタジアム(福井陸上競技場の愛称)ですが?」と問われた山縣は、照れながら「桐生君が記録を出したスタジアムで9秒97を目指します」と記者が一番欲しい言葉を残した。
※2018年10月12日発売の『月刊陸上競技』11月号には山縣選手の今季最終戦となった福井国体の記事も掲載しています
山縣 秋も圧巻のスプリント サードベスト10秒01で3連覇!!
100mのレースプランに自信
一昨年は10秒03、昨年は10秒00と2年続けてこの大会で自己ベストをマークし、男子100mで優勝を飾っている山縣亮太(セイコー)。大阪・長居の競技場と相性がいいのか、あるいは大会の雰囲気や時期がマッチするのか。今年もヒーロー役を大物新人の桐生祥秀(日本生命)に譲らず、自己3番目の10秒01(±0)で3連覇のフィニッシュに飛び込んだ。 「また10秒00じゃ悔しいので……」と、ゴールで気持ちだけ身体を前傾させた。8月末のジャカルタ・アジア大会が、自己タイの10秒00(+0.8)。2位と同タイムの3位だった。慶大の後輩に当たる小池祐貴(ANA)は、男子200mで2位と同タイムながら金メダルをもぎとった。倒れ込みながらフィニッシュする小池を見て、「あ、俺はこの差で負けたんだな」と思った。だから今回は「ちょっとだけやってみたんです」と、山縣にしては珍しく前傾した場面を笑顔で説明した。「100mのフィニッシュは難しいんですけどね」と言いながら……。 アジア大会は日本選手団全体の主将を務めたこともあり、帰国後は「任を解かれた安堵」からか心身共に疲労感が濃かった。大会後の完全休養は「いつも2日なんですけど、今回は3日入れました」と山縣。その後、今大会に向けては「負荷の高い練習を入れておこう」と、Maxに近いタイム設定で何回か。「1週間前の感覚はアジア大会前よりずっと良かった」と話し、ライバル不在だった昨年と違って今年は桐生がいたが、「100mのレースプランに対しては自信を持っていた」と明かす。 1日のうちに予選、準決勝、決勝と3本のレースで、「チャンスは2本」と思っていた。昨年の秋、桐生が9秒98を出して先んじた記録を狙うのに、朝一番に行われる予選は「記録を出すモチベーションではない」。最終8組だった山縣は、前の組でフライングによる失格者が出て進行に手間取り、数十分待たされる不運もあって10秒34(-0.4)だった。 予選を2組で走った桐生より準決勝までの時間がだいぶ短くなったが、今季の山縣はラウンドの進め方が実にうまい。1本ごとに修正を重ね、準決勝では10秒14(-0.4)と記録を上げてきた。「スタートでもたついた感じ」はあったものの、終盤はスーッと流した。「これならチャンスがないわけじゃない」。山縣は2時間20分後の決勝に向け、対桐生というより記録へのイメージをふくらませた。「桐生君を意識し過ぎない」という山縣の心の持ちようが反映されたのかもしれない。今季は日本人ランナーに負けなし
メインスタンドがほぼ埋まり、今大会一番の盛り上がりを見せた男子100m決勝。風はほとんどない。5レーンに準決勝が10秒21(+1.1)の桐生、7レーンに山縣。今大会、直線で行われる種目はスタートのやり直しが何度も見られ、この時も1度。「よくあること」と山縣はやり過ごしたが、いったん集中力が途切れるのは確かだ。 2度目の号砲で、2人の間のレーンに入った中大卒のルーキー・川上拓也(大阪ガス)が、山縣に引けをとらないような良いスタートを切った。桐生は、1度目より遅れる。 早くも先頭に立った山縣は「出し切る」ことをイメージして、「最初からスピードを出す」ようにしっかり地面を捕らえていった。今は「中盤から抜け出すところに地力を感じる」と自分で話すように、トップスピードに入ると他をまったく寄せ付けずに圧勝。無風の中での10秒01は「地力が一番わかる風ではないでしょうか」と、力がついたことを実感できる結果となった。桐生は持ち前の中盤から伸びず、川上をかわして2位に上がるのがやっとだった。 山縣のレース内容の自己採点は「80~90点」。「スタートでちょっと浮いた」のが、減点ポイントだという。それでも抜群の安定感を示し、今季は日本人選手に負けていない。山縣はその安定感について、「どの試合も全力を尽くし、目の前の試合にきちんと向き合うこと」と話した。 ここまで来たら、いつ9秒台が出てもおかしくない状況。「記録は、神様が〝いいよ〟と言うまで待ちます」と山縣は笑うが、もはや9秒台というより、本人の意思は「9秒98を超えたい」という域に達している。 今季最終戦となる福井国体の成年100mが、10月6日。ここ2年はこの大会で素晴らしいレースをしながら、国体で結果を残せていない。昨年は直前に故障して、欠場している。秋冷の季節でケガには細心の注意を払うとして、インタビューの最後に「次戦は9.98スタジアム(福井陸上競技場の愛称)ですが?」と問われた山縣は、照れながら「桐生君が記録を出したスタジアムで9秒97を目指します」と記者が一番欲しい言葉を残した。 ※2018年10月12日発売の『月刊陸上競技』11月号には山縣選手の今季最終戦となった福井国体の記事も掲載しています
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