2020.12.27
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は青学大が大会3連覇と出雲、全日本に続く学生駅伝3冠を成し遂げた第93回大会(2017年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?
4区と5区がリニューアル
日体大の秋山が2年連続6区区間新でMVPに
青学大が前回大会まで2連覇を達成し、10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝も制覇。久保田和馬、神野大地、小椋裕介ら強力な世代が卒業したが、それでも圧倒的な優勝候補に挙げられていた。
93回大会は4区と5区の区間リニューアルが最大のトピックスだった。それぞれ2005年までの距離に近い20.9km、20.8kmとされ、山上りの5区を担う選手の負担軽減が図られた。10月の予選会では87回連続出場中だった中大がまさかの敗退。城西大も連続出場が13で途切れるなど波乱が巻き起こった。
1区はハイペースだった前回から一転、スローな展開となった。序盤からレースを動かした東洋大の服部弾馬(4年)が区間トップに輝いたものの、その10秒以内に6位までが、1分以内に16位までが続く大混戦。全日本大学駅伝で2位に入って勢いのあった早大が3位、さらに1秒差で4位に優勝候補の青学大が続いた。
各校のエースが集った2区では東洋大、青学大、東海大、早大、神奈川大、駒大による6校が先頭集団を形成。15km付近で東海大、東洋大、早大が集団から脱落すると、18km付近で神奈川大の鈴木健吾(3年)が単独首位に立ち、チーム史上初めて往路戸塚中継所をトップで通過した。鈴木は1時間7分17秒で区間賞も獲得。38秒遅れて青学大が続き、さらに17秒差で駒大が追った。
3区では首位を疾走する神奈川大の越川堅太(1年)を前年この区間で区間賞を獲得している青学大の秋山雄飛(4年)が猛追する。13km過ぎで逆転すると、後続に1分22秒の大差をつけてトップ中継。秋山は2年連続で区間トップに輝いた。2位以下は大きく順位が変動し、早大が6位から2位に浮上。神奈川大が3位に沈み、2区で8位に順位を落とした東洋大が4位まで上げてきた。
3年連続の2区で区間3位と好走した一色恭志(左)から3区の秋山雄飛へのタスキリレー
青学大は全日本6区区間賞でMVPを獲得した森田歩希(2年)を4区に起用し、早大との差をさらに7秒広げる。区間賞は順大の栃木渡(3年)に譲ったものの、初の箱根路で好走を見せた。
青学大は5区の貞永隆佑(3年)が、一時2位の早大に2分近い差をつけていく。しかし、早大の安井雄一(3年)が終盤に驚異の追い上げを披露。その差を33秒まで縮めたが、その背中をとらえることはできず、青学大が3年連続の往路優勝を達成した。
往路3位は4区の栃木、5区の山田攻(2年)で大きく順位を上げた順大。東洋大が4位に入り、5区の大塚祥平(4年)が区間賞を獲得した駒大が5位で往路を終えた。
33秒差を追い上げたい早大だったが、6区では青学大の小野田勇次(2年)が区間2位と好走し、その差を2分08秒まで拡大。7区では青学大の田村和希(3年)が終盤に脱水症状を起こして失速したものの、早大の井戸浩貴(4年)もその差を1分21秒にまでしか縮めることができず、反撃がストップ。
青学大は8区の下田裕太(3年)が区間2位に2分以上の差をつける圧倒的な区間1位の快走で独走態勢を築くと、9区の池田生成(4年)が区間2位、10区の安藤悠哉(4年)が区間4位と安定感のあるタスキリレーで見事大会3連覇を飾った。出雲、全日本と合わせて史上4校目の学生駅伝3冠達成の瞬間でもあった。
後続は9区の野村峻哉(3年)が区間トップの快走を見せた東洋大が2位を死守。中盤で青学大に迫った早大が3位に入り、往路で健闘した順大と神奈川大が4位、5位に入った。神奈川大は12年ぶりのシード権獲得だった。
6区で秋山清仁(4年)が2年連続の区間新記録となる58分01秒をマークした日体大が7位。法大が8位で4年ぶりにシード校へ返り咲いた。また、オープン参加の関東学生連合で10区を務めた照井明人(東京国際大4年)が区間1位だった順大・作田直也(4年)のタイムを2秒上回り、“幻の区間賞”として話題を呼んだ。
大会最優秀選手に贈られる金栗四三杯は日体大の秋山が受賞。優勝校以外の大学から選ばれるのは2011年大会の東海大・村澤明伸以来6年ぶりだった。
<人物Close-up>
秋山清仁(日体大4年)
6区で2年連続区間賞(区間新)と爆走を見せ、「山下りの神」とまで称されたスペシャリスト。東京・順天高では南関東大会どまりの選手だったが、日体大では2013年の箱根優勝メンバーである同部屋の鈴木悠介から山下りの走りを伝授され、2年時に6区で箱根デビュー。この年は59分29秒で区間4位だったが、翌年から58分09秒、58分01秒とタイムを短縮し、3年時と4年時はいずれも13位から6人抜きを達成した。なお、6区で金栗四三杯を受賞した選手は現時点で秋山しかいない。
2017年
<総合成績>
1位 青山学院大学 11.04.10(往路1位、復路1位)
2位 東洋大学 11.11.31(往路4位、復路2位)
3位 早稲田大学 11.12.26(往路2位、復路9位)
4位 順天堂大学 11.12.42(往路3位、復路6位)
5位 神奈川大学 11.14.59(往路6位、復路7位)
6位 中央学院大学 11.15.25(往路7位、復路8位)
7位 日本体育大学 11.15.39(往路13位、復路3位)
8位 法政大学 11.15.56(往路12位、復路5位)
9位 駒澤大学 11.16.13(往路5位、復路11位)
10位 東海大学 11.17.00(往路15位、復路4位)
========シード権ライン=========
11位 帝京大学 11.20.24(往路11位、復路12位)
12位 創価大学 11.20.37(往路9位、復路13位)
13位 大東文化大学 11.23.45(往路18位、復路10位)
14位 拓殖大学 11.24.22(往路14位、復路15位)
15位 上武大学 11.24.45(往路8位、復路17位)
16位 國學院大學 11.28.45(往路19位、復路14位)
17位 山梨学院大学 11.29.17(往路16位、復路18位)
18位 明治大学 11.29.17(往路17位、復路16位)
19位 日本大学 11.30.38(往路10位、復路19位)
20位 国士舘大学 11.49.18(往路20位、復路20位)
OP 関東学生連合 11.31.29
<区間賞>
1区(21.3km)服部弾馬(東洋大4) 1.03.56
2区(23.1km)鈴木健吾(神奈川大3)1.07.17
3区(21.4km)秋山雄飛(青学大4) 1.03.03
4区(20.9km)栃木 渡(順 大3) 1.03.36=新コース
5区(20.8km)大塚祥平(駒 大4) 1.12.46=新コース
6区(20.8km)秋山清仁(日体大4) 58.01=区間新
7区(21.3km)石橋安孝(東海大4) 1.04.42
8区(21.4km)下田裕太(青学大3) 1.04.21
9区(23.1km)野村峻哉(東洋大3) 1.09.47
10区(23.0km)作田直也(順 大4)1.11.00
4区と5区がリニューアル 日体大の秋山が2年連続6区区間新でMVPに
青学大が前回大会まで2連覇を達成し、10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝も制覇。久保田和馬、神野大地、小椋裕介ら強力な世代が卒業したが、それでも圧倒的な優勝候補に挙げられていた。 93回大会は4区と5区の区間リニューアルが最大のトピックスだった。それぞれ2005年までの距離に近い20.9km、20.8kmとされ、山上りの5区を担う選手の負担軽減が図られた。10月の予選会では87回連続出場中だった中大がまさかの敗退。城西大も連続出場が13で途切れるなど波乱が巻き起こった。 1区はハイペースだった前回から一転、スローな展開となった。序盤からレースを動かした東洋大の服部弾馬(4年)が区間トップに輝いたものの、その10秒以内に6位までが、1分以内に16位までが続く大混戦。全日本大学駅伝で2位に入って勢いのあった早大が3位、さらに1秒差で4位に優勝候補の青学大が続いた。 各校のエースが集った2区では東洋大、青学大、東海大、早大、神奈川大、駒大による6校が先頭集団を形成。15km付近で東海大、東洋大、早大が集団から脱落すると、18km付近で神奈川大の鈴木健吾(3年)が単独首位に立ち、チーム史上初めて往路戸塚中継所をトップで通過した。鈴木は1時間7分17秒で区間賞も獲得。38秒遅れて青学大が続き、さらに17秒差で駒大が追った。 3区では首位を疾走する神奈川大の越川堅太(1年)を前年この区間で区間賞を獲得している青学大の秋山雄飛(4年)が猛追する。13km過ぎで逆転すると、後続に1分22秒の大差をつけてトップ中継。秋山は2年連続で区間トップに輝いた。2位以下は大きく順位が変動し、早大が6位から2位に浮上。神奈川大が3位に沈み、2区で8位に順位を落とした東洋大が4位まで上げてきた。 3年連続の2区で区間3位と好走した一色恭志(左)から3区の秋山雄飛へのタスキリレー 青学大は全日本6区区間賞でMVPを獲得した森田歩希(2年)を4区に起用し、早大との差をさらに7秒広げる。区間賞は順大の栃木渡(3年)に譲ったものの、初の箱根路で好走を見せた。 青学大は5区の貞永隆佑(3年)が、一時2位の早大に2分近い差をつけていく。しかし、早大の安井雄一(3年)が終盤に驚異の追い上げを披露。その差を33秒まで縮めたが、その背中をとらえることはできず、青学大が3年連続の往路優勝を達成した。 往路3位は4区の栃木、5区の山田攻(2年)で大きく順位を上げた順大。東洋大が4位に入り、5区の大塚祥平(4年)が区間賞を獲得した駒大が5位で往路を終えた。 33秒差を追い上げたい早大だったが、6区では青学大の小野田勇次(2年)が区間2位と好走し、その差を2分08秒まで拡大。7区では青学大の田村和希(3年)が終盤に脱水症状を起こして失速したものの、早大の井戸浩貴(4年)もその差を1分21秒にまでしか縮めることができず、反撃がストップ。 青学大は8区の下田裕太(3年)が区間2位に2分以上の差をつける圧倒的な区間1位の快走で独走態勢を築くと、9区の池田生成(4年)が区間2位、10区の安藤悠哉(4年)が区間4位と安定感のあるタスキリレーで見事大会3連覇を飾った。出雲、全日本と合わせて史上4校目の学生駅伝3冠達成の瞬間でもあった。 後続は9区の野村峻哉(3年)が区間トップの快走を見せた東洋大が2位を死守。中盤で青学大に迫った早大が3位に入り、往路で健闘した順大と神奈川大が4位、5位に入った。神奈川大は12年ぶりのシード権獲得だった。 6区で秋山清仁(4年)が2年連続の区間新記録となる58分01秒をマークした日体大が7位。法大が8位で4年ぶりにシード校へ返り咲いた。また、オープン参加の関東学生連合で10区を務めた照井明人(東京国際大4年)が区間1位だった順大・作田直也(4年)のタイムを2秒上回り、“幻の区間賞”として話題を呼んだ。 6区で区間新をマークした日体大の秋山清仁 大会最優秀選手に贈られる金栗四三杯は日体大の秋山が受賞。優勝校以外の大学から選ばれるのは2011年大会の東海大・村澤明伸以来6年ぶりだった。 <人物Close-up> 秋山清仁(日体大4年) 6区で2年連続区間賞(区間新)と爆走を見せ、「山下りの神」とまで称されたスペシャリスト。東京・順天高では南関東大会どまりの選手だったが、日体大では2013年の箱根優勝メンバーである同部屋の鈴木悠介から山下りの走りを伝授され、2年時に6区で箱根デビュー。この年は59分29秒で区間4位だったが、翌年から58分09秒、58分01秒とタイムを短縮し、3年時と4年時はいずれも13位から6人抜きを達成した。なお、6区で金栗四三杯を受賞した選手は現時点で秋山しかいない。 2017年 <総合成績> 1位 青山学院大学 11.04.10(往路1位、復路1位) 2位 東洋大学 11.11.31(往路4位、復路2位) 3位 早稲田大学 11.12.26(往路2位、復路9位) 4位 順天堂大学 11.12.42(往路3位、復路6位) 5位 神奈川大学 11.14.59(往路6位、復路7位) 6位 中央学院大学 11.15.25(往路7位、復路8位) 7位 日本体育大学 11.15.39(往路13位、復路3位) 8位 法政大学 11.15.56(往路12位、復路5位) 9位 駒澤大学 11.16.13(往路5位、復路11位) 10位 東海大学 11.17.00(往路15位、復路4位) ========シード権ライン========= 11位 帝京大学 11.20.24(往路11位、復路12位) 12位 創価大学 11.20.37(往路9位、復路13位) 13位 大東文化大学 11.23.45(往路18位、復路10位) 14位 拓殖大学 11.24.22(往路14位、復路15位) 15位 上武大学 11.24.45(往路8位、復路17位) 16位 國學院大學 11.28.45(往路19位、復路14位) 17位 山梨学院大学 11.29.17(往路16位、復路18位) 18位 明治大学 11.29.17(往路17位、復路16位) 19位 日本大学 11.30.38(往路10位、復路19位) 20位 国士舘大学 11.49.18(往路20位、復路20位) OP 関東学生連合 11.31.29 <区間賞> 1区(21.3km)服部弾馬(東洋大4) 1.03.56 2区(23.1km)鈴木健吾(神奈川大3)1.07.17 3区(21.4km)秋山雄飛(青学大4) 1.03.03 4区(20.9km)栃木 渡(順 大3) 1.03.36=新コース 5区(20.8km)大塚祥平(駒 大4) 1.12.46=新コース 6区(20.8km)秋山清仁(日体大4) 58.01=区間新 7区(21.3km)石橋安孝(東海大4) 1.04.42 8区(21.4km)下田裕太(青学大3) 1.04.21 9区(23.1km)野村峻哉(東洋大3) 1.09.47 10区(23.0km)作田直也(順 大4)1.11.00
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