2020.12.10
連載31区
「日本選手権・長距離で活躍した選手たち!」
新潟での日本選手権観戦がはるか昔のよう……
みなさん、こんばんは!
第104回日本選手権・長距離種目が、12月4日に大阪府・ヤンマースタジアム長居にて開催されました。東京五輪代表選考会を兼ねた本大会には、日本を代表するランナーがこぞって集結。10月に新潟県・デンカビッグスワンスタジアムで行われた日本選手権を見に行ったことがはるか昔のことのように感じます…。
相澤選手と伊藤選手のランニングデート再び!
今大会では、女子5000mの田中希実選手(豊田自動織機TC)、女子10000mの新谷仁美選手(積水化学)、男子10000mの相澤晃選手(旭化成)が優勝を果たし、条件をクリアして五輪代表の座をつかみ取りました。
新谷選手といえば、今年10月に開催された全日本実業団対抗女子駅伝予選会(プリンセス駅伝)ではエース区間3区を走り、区間記録を1分15秒上回る区間新記録を更新。また11月の全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)でも3区に出走し、区間記録を1分10秒も上回る区間新記録を樹立するなど、日本最強のランナーと言っても過言ではないと思います。
レースでの強さとは対照的に、大会前には少し不安げに言葉を発するとなど緊張している姿が取り上げられています。強さだけでなく弱さの部分も素直に表に出すその人間らしさが、新谷選手の魅力に感じられて私は惹きつけられます。2度目のオリンピックに挑む新谷選手が東京五輪でどんな走りを披露するのか。日本中の注目が集まります。
そして駅伝好きの私としては、大学駅伝で活躍していたランナーたちの激突に心が躍りました。特に、男子10000m。先に行われたB組では市田孝選手(旭化成)がトップでフィニッシュすると、続く2着には中谷雄飛選手、3着に太田直希選手と、早稲田大学3年生の2人が27分台の自己ベストを更新しました。同一チーム(4学年)で2人の27分台が在籍するのは設楽啓太・悠太両選手がいた東洋大以来、2度目だそうです! 箱根駅伝を控える彼らの好走に、来年正月への期待と存在感は高まる一方です。
持ちタイム上位がそろったA組では、相澤選手が優勝。大迫傑選手(Nike)や鎧坂哲哉選手(旭化成)といった日本を代表するランナーが形成していた先頭チームに食らいつきながら、冷静に対応し、残り2000m付近でトップに立ち、そのまま見事に初優勝を飾りました。さらに日本記録を5年ぶりに更新し、自身初の五輪代表内定。陸上界が歓喜に包まれた瞬間でした。
実は、日本記録を更新したのは相澤選手だけではありません。2位の伊藤達彦選手(Honda)、3位の田村和希選手(住友電工)も日本新記録の快走でした。レース後、五輪参加標準記録を突破した相澤選手と伊藤選手が健闘を称え合う微笑ましい光景が見られました。
この両選手といえば……今年の箱根駅伝の2区が思い出されますね! エースが集う花の2区で、約15kmものあいだ並走をしていた2人です。2人の並走は、バチバチに火花を散らし合いながら……という表現より、お互いを高め合いつつ2人で箱根路を乗り越えていった、という表現のほうがしっくりくるような気がします。
伊藤選手は苦しくなりつつも笑顔で走る様子に「ランデブー」「ランニングデート」なんて声も多く上がっているほどでした。2人の穏やかな人柄故でしょうか。ライバルでありながらも、互いを認め合う温かい関係で箱根を沸かせた選手が大学卒業後、日本を代表するランナーとして君臨していることがうれしく思います。
田村選手はこれからも注目!
対照的に3位の田村選手は、レース後に悔しい表情を浮かべて涙を流している姿が見られました。田村選手は前回大会のこの種目の覇者。青山学院大学時代では、駅伝で幾度も区間賞を獲得。チームメイトからの信頼も厚く、原晋監督からは「駅伝男」と呼ばれるなど頼もしい選手です。今回は3位となり、また惜しくも五輪参加標準記録に届かず、表彰式でもその悔しさが滲み出ていました。
一度だけ田村選手とお会いしたことがあります。2016年に日刊スポーツさんの取材で青山学院大学の寮へ訪問し、原監督と対談をするお仕事をさせていただいた時でした。取材が終わり帰ろうとした際に寮の玄関先で練習へ向かう当時3年生の田村選手と遭遇したのです。軽くご挨拶をすることしかできなかったのですが、「優しい人オーラ」というのでしょうか……とても物腰柔らかく、温厚な人であったことを覚えています。
2019年日本陸上選手権クロスカントリーでは弟の田村友佑選手(黒崎播磨)とのレースで、友佑選手が先頭集団から離れてしまいそうになると、何度も後ろを振り返り、弟がついてきているか確認しているお兄さんらしい優しい一面が見られました。他にもさまざまな大会において、失速してしまった後輩を励ましている姿や、笑顔で寄り添っている姿がたくさんあります。そんな田村選手が悔しい表情を剥き出しにしている姿を見たとき、こちらの心にもグッと刺さるものがありました。田村選手のことをこれからも注目していきます。
来年の日本選手権は5月に10000m、その他種目が6月に開催されます。オリンピックの選考会はまだ残っているので、これから1人でも多くの選手が五輪出場の切符をつかみ取れることを信じて、選手のみなさんを応援していきたいと思います。
実は今週のコラムでは箱根駅伝について書こうと思っていたのですが……日本選手権を見て「これは書かずにいられない!」と思い、内容を変更してみました(笑)。早いもので次のコラムが年内ラスト。次回は箱根駅伝の予想や注目選手などについてお話しします!
最後に告知です!Mildomさんで「NGT48ゲーム部」の一員としてゲームに挑戦しています!こちらもぜひチェックしてください。また、先日取材した横浜DeNAの館澤亨次選手(東海大OB)との対談は来週公開予定です! 学生ランナーたちの過ごし方や大学での思い出などうかがいました。お楽しみに!
今週も読んでくださりありがとうございました。
日本選手権を観戦したファンの方が撮られた写真です!
※Twitterのハッシュタグ「♯西村菜那子の陸上日記」で感想や質問、コラムの内容など随時募集中!
前回の記事はこちら
![]() NGT48 西村菜那子(にしむら・ななこ) 1997年8月11日生/O型/長野県出身 特技:クラシックバレエ、歴代の箱根駅伝の優勝校を暗記 趣味:陸上観戦、サッカー観戦 2015年にNGT48第1期生オーディションに合格。両親の影響で幼い頃から駅伝を好きになる。アイドルとしての活動を続ける中で、自身のSNSを通して陸上競技に関する情報を発信。駅伝関連のメディア出演も多数。 西村菜那子モバイルサイト ●Information NGT48 5thシングル『シャーベットピンク』発売中!©︎Flora ![]() 最新情報はNGT48公式HPまで 『NGT48ゲーム部』(Mildom)レギュラー出演中!詳細はHPまで/舞台『風が強く吹いている』6月10日~17日公演予定※新型コロナウイルスの影響で延期となりました。詳細は公式HPまで |

連載31区 「日本選手権・長距離で活躍した選手たち!」

相澤選手と伊藤選手のランニングデート再び!
今大会では、女子5000mの田中希実選手(豊田自動織機TC)、女子10000mの新谷仁美選手(積水化学)、男子10000mの相澤晃選手(旭化成)が優勝を果たし、条件をクリアして五輪代表の座をつかみ取りました。 新谷選手といえば、今年10月に開催された全日本実業団対抗女子駅伝予選会(プリンセス駅伝)ではエース区間3区を走り、区間記録を1分15秒上回る区間新記録を更新。また11月の全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)でも3区に出走し、区間記録を1分10秒も上回る区間新記録を樹立するなど、日本最強のランナーと言っても過言ではないと思います。 レースでの強さとは対照的に、大会前には少し不安げに言葉を発するとなど緊張している姿が取り上げられています。強さだけでなく弱さの部分も素直に表に出すその人間らしさが、新谷選手の魅力に感じられて私は惹きつけられます。2度目のオリンピックに挑む新谷選手が東京五輪でどんな走りを披露するのか。日本中の注目が集まります。 そして駅伝好きの私としては、大学駅伝で活躍していたランナーたちの激突に心が躍りました。特に、男子10000m。先に行われたB組では市田孝選手(旭化成)がトップでフィニッシュすると、続く2着には中谷雄飛選手、3着に太田直希選手と、早稲田大学3年生の2人が27分台の自己ベストを更新しました。同一チーム(4学年)で2人の27分台が在籍するのは設楽啓太・悠太両選手がいた東洋大以来、2度目だそうです! 箱根駅伝を控える彼らの好走に、来年正月への期待と存在感は高まる一方です。 持ちタイム上位がそろったA組では、相澤選手が優勝。大迫傑選手(Nike)や鎧坂哲哉選手(旭化成)といった日本を代表するランナーが形成していた先頭チームに食らいつきながら、冷静に対応し、残り2000m付近でトップに立ち、そのまま見事に初優勝を飾りました。さらに日本記録を5年ぶりに更新し、自身初の五輪代表内定。陸上界が歓喜に包まれた瞬間でした。 実は、日本記録を更新したのは相澤選手だけではありません。2位の伊藤達彦選手(Honda)、3位の田村和希選手(住友電工)も日本新記録の快走でした。レース後、五輪参加標準記録を突破した相澤選手と伊藤選手が健闘を称え合う微笑ましい光景が見られました。 この両選手といえば……今年の箱根駅伝の2区が思い出されますね! エースが集う花の2区で、約15kmものあいだ並走をしていた2人です。2人の並走は、バチバチに火花を散らし合いながら……という表現より、お互いを高め合いつつ2人で箱根路を乗り越えていった、という表現のほうがしっくりくるような気がします。 伊藤選手は苦しくなりつつも笑顔で走る様子に「ランデブー」「ランニングデート」なんて声も多く上がっているほどでした。2人の穏やかな人柄故でしょうか。ライバルでありながらも、互いを認め合う温かい関係で箱根を沸かせた選手が大学卒業後、日本を代表するランナーとして君臨していることがうれしく思います。
田村選手はこれからも注目!
対照的に3位の田村選手は、レース後に悔しい表情を浮かべて涙を流している姿が見られました。田村選手は前回大会のこの種目の覇者。青山学院大学時代では、駅伝で幾度も区間賞を獲得。チームメイトからの信頼も厚く、原晋監督からは「駅伝男」と呼ばれるなど頼もしい選手です。今回は3位となり、また惜しくも五輪参加標準記録に届かず、表彰式でもその悔しさが滲み出ていました。

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