2020.11.28
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は東洋大が往路・復路・総合とすべての大会記録を塗り替え、2年ぶり3回目の総合優勝を果たした第88回大会(2012年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?
東洋大は大会記録を8分以上も更新
5区・柏原は3度目の区間新
前回王者の早大、出雲駅伝を制した東洋大、全日本大学駅伝優勝の駒大による「3強」の争いが予想された第88回大会。10月の予選会では順大と国士大が3年ぶりに本戦へと駒を進めた一方で、日大が15年ぶりに、専大が8年ぶりに予選会敗退を喫した。
1区では早大・大迫傑(2年)が5km過ぎに集団から抜け出し、ただ1人付いていった日体大の服部翔大(2年)を11km過ぎに振り切って2年連続の区間賞を獲得。服部が23秒差の2位、3位集団から抜け出した駒大の撹上宏光(3年)が1秒差の3位と続いた。東洋大も駒大から7秒差の4位と、優勝候補はそれぞれ好スタートを切った。
2区では早大の平賀翔太(3年)が独走状態を築き、日体大、駒大、東洋大、城西大が2位集団を形成する展開へ。終盤では青学大の出岐雄大(3年)、明大の菊地賢人(3年)も2位集団に加わり、最後は集団から抜け出した東洋大の設楽啓太(2年)が平賀を抜き去り、トップ中継。早大が2位で続き、9位から3位まで押し上げた出岐が区間賞を獲得した。
3区では前回激しいバトルを繰り広げた東洋大と早大が先頭を争うも、東洋大の山本憲二(4年)が早大の矢澤曜(4年)を突き放し、1分03秒差をつけて4区へタスキリレー。区間トップは山梨学大のオンディバ・コスマス(4年)で、竹澤健介(早大)の持つ区間記録を2秒更新する区間新で16位から7人を抜いた。
東洋大は4区の田口雅也(1年)も区間1位の走りで独走態勢を築き、前回まで3年連続区間賞の走りを見せていた5区の柏原竜二(4年)にタスキが渡った。初めて先頭で中継所をスタートした柏原は、2年前に自身がマークした区間記録を上回るペースで疾走。4年連続となる往路優勝のフィニッシュテープを切り、区間2位に約3分差をつける圧倒的な区間新記録を樹立した。
往路2位は早大で、この時点で東洋大との差は5分07秒。3位に明大、4位に駒大と続き、城西大が往路最高順位となる5位で折り返した。
2位以下のチームは逆転Vへわずかな望みにかけて復路をスタートしたが、2日目も東洋大が強かった。6区の市川孝徳(3年)、7区の設楽悠太(2年)、8区の大津顕杜(2年)、10区の齋藤貴志(3年)が区間賞。9区の田中貴章(4年)も区間6位と好走し、終わってみれば後続に9分02秒差をつける圧勝で2年ぶり3回目の総合優勝をつかんだ。総合タイム10時間51分36秒は、それまでの最高記録(前年に早大がマークした10時間59分51秒)を一気に8分以上も更新する驚異的な大会新だった。
東洋大は区間賞を6つも獲得。7区の設楽悠太(左)は区間新記録を打ち立てた
2位は9区の窪田忍(2年)が区間トップの走りで順位を上げた駒大。3位に明大が入り、前回覇者の早大は4位に終わった。青学大が過去最高の5位、城西大も過去最高タイの6位と健闘し、順大も予選会から這い上がって5年ぶりのシードとなる7位に食い込んだ。
大会MVPの金栗四三杯は5区で4年連続の区間賞を区間新で飾った東洋大の柏原が受賞。東洋大は全10区間のうち6区間で区間賞を奪うなど、大会史に残る圧勝劇だった。
<人物Close-up>
柏原竜二(東洋大4年)
2005年から3年連続で5区区間新の偉業を成し遂げた今井正人(順大)に次ぐ「2代目・山の神」と称されたレジェンド。箱根駅伝では1年時から5区を担い、いきなり今井の区間記録を54秒も更新して話題に。3年時を除く3度の区間新、東洋大を3度の総合優勝に貢献するなど、大会史に残る活躍を見せた。箱根駅伝の快走に注目が集まりがちだが、10000mでも1年時に世界ジュニア選手権7位、2年時にユニバーシアード8位と国際舞台でも活躍。全日本大学駅伝でも2度区間賞を獲得している。大学卒業後は富士通に入社し、マラソンに挑戦。相次ぐケガの影響で思うような結果を残せなかったが、実業団駅伝では随所で力強さを見せた。17年4月に現役を引退した後は会社に残りながらスポーツの普及などに携わっている。
<総合成績>
1位 東洋大学 10.51.36(往路1位、復路1位)
2位 駒澤大学 11.00.38(往路4位、復路2位)
3位 明治大学 11.02.50(往路3位、復路3位)
4位 早稲田大学 11.03.10(往路2位、復路4位)
5位 青山学院大学 11.08.46(往路7位、復路7位)
6位 城西大学 11.10.17(往路5位、復路10位)
7位 順天堂大学 11.11.15(往路13位、復路5位)
8位 中央大学 11.11.17(往路12位、復路6位)
9位 山梨学院大学 11.12.38(往路6位、復路14位)
10位 國學院大學 11.13.42(往路9位、復路12位)
========シード権ライン=========
11位 国士舘大学 11.16.47(往路14位、復路13位)
12位 東海大学 11.17.14(往路8位、復路18位)
13位 帝京大学 11.18.58(往路17位、復路8位)
14位 拓殖大学 11.20.21(往路19位、復路9位)
15位 神奈川大学 11.20.22(往路15位、復路17位)
16位 上武大学 11.20.43(往路16位、復路16位)
17位 関東学連選抜 11.21.36(往路10位、復路20位)
18位 中央学院大学 11.21.41(往路18位、復路15位)
19位 日本体育大学 11.22.26(往路11位、復路19位)
20位 東京農業大学 11.44.16(往路20位、復路11位)
<区間賞>
1区(21.4km)大迫 傑(早 大2) 1.02.03
2区(23.2km)出岐雄大(青学大3) 1.07.26
3区(21.5km)O.コスマス(山梨学大4)1.01.38=区間新
4区(18.5km)田口雅也(東洋大1) 54.45
5区(23.4km)柏原竜二(東洋大4) 1.16.39=区間新
6区(20.8km)市川孝徳(東洋大3) 59.16
7区(21.3km)設楽悠太(東洋大2) 1.02.32=区間新
8区(21.5km)大津顕杜(東洋大2) 1.04.12
9区(23.2km)窪田 忍(駒 大2) 1.09.06
10区(23.1km)齋藤貴志(東洋大3)1.09.45

東洋大は大会記録を8分以上も更新 5区・柏原は3度目の区間新
前回王者の早大、出雲駅伝を制した東洋大、全日本大学駅伝優勝の駒大による「3強」の争いが予想された第88回大会。10月の予選会では順大と国士大が3年ぶりに本戦へと駒を進めた一方で、日大が15年ぶりに、専大が8年ぶりに予選会敗退を喫した。 1区では早大・大迫傑(2年)が5km過ぎに集団から抜け出し、ただ1人付いていった日体大の服部翔大(2年)を11km過ぎに振り切って2年連続の区間賞を獲得。服部が23秒差の2位、3位集団から抜け出した駒大の撹上宏光(3年)が1秒差の3位と続いた。東洋大も駒大から7秒差の4位と、優勝候補はそれぞれ好スタートを切った。 2区では早大の平賀翔太(3年)が独走状態を築き、日体大、駒大、東洋大、城西大が2位集団を形成する展開へ。終盤では青学大の出岐雄大(3年)、明大の菊地賢人(3年)も2位集団に加わり、最後は集団から抜け出した東洋大の設楽啓太(2年)が平賀を抜き去り、トップ中継。早大が2位で続き、9位から3位まで押し上げた出岐が区間賞を獲得した。 3区では前回激しいバトルを繰り広げた東洋大と早大が先頭を争うも、東洋大の山本憲二(4年)が早大の矢澤曜(4年)を突き放し、1分03秒差をつけて4区へタスキリレー。区間トップは山梨学大のオンディバ・コスマス(4年)で、竹澤健介(早大)の持つ区間記録を2秒更新する区間新で16位から7人を抜いた。 東洋大は4区の田口雅也(1年)も区間1位の走りで独走態勢を築き、前回まで3年連続区間賞の走りを見せていた5区の柏原竜二(4年)にタスキが渡った。初めて先頭で中継所をスタートした柏原は、2年前に自身がマークした区間記録を上回るペースで疾走。4年連続となる往路優勝のフィニッシュテープを切り、区間2位に約3分差をつける圧倒的な区間新記録を樹立した。 往路2位は早大で、この時点で東洋大との差は5分07秒。3位に明大、4位に駒大と続き、城西大が往路最高順位となる5位で折り返した。 2位以下のチームは逆転Vへわずかな望みにかけて復路をスタートしたが、2日目も東洋大が強かった。6区の市川孝徳(3年)、7区の設楽悠太(2年)、8区の大津顕杜(2年)、10区の齋藤貴志(3年)が区間賞。9区の田中貴章(4年)も区間6位と好走し、終わってみれば後続に9分02秒差をつける圧勝で2年ぶり3回目の総合優勝をつかんだ。総合タイム10時間51分36秒は、それまでの最高記録(前年に早大がマークした10時間59分51秒)を一気に8分以上も更新する驚異的な大会新だった。
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