HOME バックナンバー
Rising Star Athlete 福田翔大 輝き始めたハンマー投期待の大器
Rising Star Athlete 福田翔大 輝き始めたハンマー投期待の大器

「あの選手はすごいですよ」――。何度、こんな噂を聞いただろうか。高校時代から福田翔大(日大)の潜在能力は高い評価を得ていた。高校時代はタイトルこそなかなかつかめなかったが、それも将来を見越して土台を作っていたからこそ。日大に進学して2年目。〝アジアの鉄人〟室伏重信氏の下で研鑽を積み、その才能は少しずつ花開こうとしている。究極の〝DNA〟を吸収している日本男子ハンマー投の未来を担う若者。その成長曲線はとどまるところを知らない。

●文/向永拓史 撮影/船越陽一郎

今季2度の69m超えで存在感

あの室伏広治の記録を超えた――。日本ハンマー投において、あらゆるカテゴリーで〝室伏超え〟は一つのトピックになる。189㎝、まだまだ細身な身体。日本インカレ男子ハンマー投で優勝した日大2年の福田翔大が放った69m61は、室伏が中京大2年時のベスト69m54を上回った。続く日本選手権ではまたも69mを超えて3位(69m30)。そのポテンシャルの一端が輝き始めた。

「室伏広治」の名を一つ塗り替えたのは「試合が終わってから知りました」。学生記録(73m82)は頭に入れていたが、さすがに大学2年時の記録までは意識していなかったという。

「日本インカレの69mは行けると思っていませんでした。日本選手権も良くない投げだったので……。でも、69mを2回投げられたことはうれしかったです」

広告の下にコンテンツが続きます

秋シーズンになってからは調子もそれほど上がらず、投げが崩れていたという。それでも投げられたのは土台が少しずつ作り上げられている証だろう。

「まず身体が大きい。リーチの長さはハンマー投にとって非常に重要です」

福田の第一印象についてこう語るのは、室伏広治氏の父である室伏重信コーチ。大学に入学してから福田を指導しているのが重信氏であるのも因果なのだろうか。

今年は自粛期間に入る直前の4月の記録会で64m95を投げていた福田。その頃の評価としては「今年は65mくらい行けるだろう」というもの。だが、自粛期間が明けて練習が再開し、6月頃になると練習で67mを投げるようになった。コロナ禍によってしばらくは地元の大阪に戻っていた福田。その間は「基礎体力の向上を目指した」。タンクに水を入れてウエイトトレーニングしたり、倒立やダッシュなどを繰り返したり。時折、空き地でハンマーを投げることはあったが、身体作りに精を出した。大学に戻ると、「投げがすごく良くなって、ターンのスピードが上がった感じがしました」と成長を実感。コントロールテストとして行っている砲丸(4㎏)のバック投も昨年から2m伸びて26mに届いた。

好調だった6月に比べると、日本インカレと日本選手権は「調子が良くなかった」。それでも、日本インカレでは一時トップに立ち、その後、古旗崇裕(中京大院)に逆転されてから「集中して投げられた」。特に室伏コーチが評価したのがその修正力の高さ。「1回目に両脚の接地の瞬間に加速できていなかった。それを伝えると、空ターンで2回目以降しっかり修正できたのです」。好調ではない中で勝ち切ったことに「少しは力がついてきたのかな」と照れた。

“アジアの鉄人”室伏重信氏(左)が週2回ほどグラウンドで指導に当たる

〝最強世代〟に揉まれた高校時代

その潜在能力は大阪桐蔭高時代から高く評価されていた。長身で細身だが運動能力が高く、走れる投てき選手。「小学校のとき、好きだった先生が陸上を教えていて、週1回のクラブ活動で陸上を選びました」。箕面六中(大阪)で本格的に陸上を始めた時は、ハードルや走幅跳に出場していた。

学年が上がるにつれて身長が一気に10㎝伸び、中3時には184㎝に。その反動もあってか、「全然走れなくなった」という。200mのタイムでは3秒も悪くなったうえ、左脚を痛めて走ることもできなくなった。元々投てきを勧めていたという顧問の先生は「走れないから砲丸投をしておこう」と声をかけた。すると、なんと右脚だけで8mを投げてしまう。これが投てき人生のスタートだった。

この続きは2020年11月13日発売の『月刊陸上競技12月号』をご覧ください。

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

「あの選手はすごいですよ」――。何度、こんな噂を聞いただろうか。高校時代から福田翔大(日大)の潜在能力は高い評価を得ていた。高校時代はタイトルこそなかなかつかめなかったが、それも将来を見越して土台を作っていたからこそ。日大に進学して2年目。〝アジアの鉄人〟室伏重信氏の下で研鑽を積み、その才能は少しずつ花開こうとしている。究極の〝DNA〟を吸収している日本男子ハンマー投の未来を担う若者。その成長曲線はとどまるところを知らない。 ●文/向永拓史 撮影/船越陽一郎

今季2度の69m超えで存在感

あの室伏広治の記録を超えた――。日本ハンマー投において、あらゆるカテゴリーで〝室伏超え〟は一つのトピックになる。189㎝、まだまだ細身な身体。日本インカレ男子ハンマー投で優勝した日大2年の福田翔大が放った69m61は、室伏が中京大2年時のベスト69m54を上回った。続く日本選手権ではまたも69mを超えて3位(69m30)。そのポテンシャルの一端が輝き始めた。 「室伏広治」の名を一つ塗り替えたのは「試合が終わってから知りました」。学生記録(73m82)は頭に入れていたが、さすがに大学2年時の記録までは意識していなかったという。 「日本インカレの69mは行けると思っていませんでした。日本選手権も良くない投げだったので……。でも、69mを2回投げられたことはうれしかったです」 秋シーズンになってからは調子もそれほど上がらず、投げが崩れていたという。それでも投げられたのは土台が少しずつ作り上げられている証だろう。 「まず身体が大きい。リーチの長さはハンマー投にとって非常に重要です」 福田の第一印象についてこう語るのは、室伏広治氏の父である室伏重信コーチ。大学に入学してから福田を指導しているのが重信氏であるのも因果なのだろうか。 今年は自粛期間に入る直前の4月の記録会で64m95を投げていた福田。その頃の評価としては「今年は65mくらい行けるだろう」というもの。だが、自粛期間が明けて練習が再開し、6月頃になると練習で67mを投げるようになった。コロナ禍によってしばらくは地元の大阪に戻っていた福田。その間は「基礎体力の向上を目指した」。タンクに水を入れてウエイトトレーニングしたり、倒立やダッシュなどを繰り返したり。時折、空き地でハンマーを投げることはあったが、身体作りに精を出した。大学に戻ると、「投げがすごく良くなって、ターンのスピードが上がった感じがしました」と成長を実感。コントロールテストとして行っている砲丸(4㎏)のバック投も昨年から2m伸びて26mに届いた。 好調だった6月に比べると、日本インカレと日本選手権は「調子が良くなかった」。それでも、日本インカレでは一時トップに立ち、その後、古旗崇裕(中京大院)に逆転されてから「集中して投げられた」。特に室伏コーチが評価したのがその修正力の高さ。「1回目に両脚の接地の瞬間に加速できていなかった。それを伝えると、空ターンで2回目以降しっかり修正できたのです」。好調ではない中で勝ち切ったことに「少しは力がついてきたのかな」と照れた。 “アジアの鉄人”室伏重信氏(左)が週2回ほどグラウンドで指導に当たる

〝最強世代〟に揉まれた高校時代

その潜在能力は大阪桐蔭高時代から高く評価されていた。長身で細身だが運動能力が高く、走れる投てき選手。「小学校のとき、好きだった先生が陸上を教えていて、週1回のクラブ活動で陸上を選びました」。箕面六中(大阪)で本格的に陸上を始めた時は、ハードルや走幅跳に出場していた。 学年が上がるにつれて身長が一気に10㎝伸び、中3時には184㎝に。その反動もあってか、「全然走れなくなった」という。200mのタイムでは3秒も悪くなったうえ、左脚を痛めて走ることもできなくなった。元々投てきを勧めていたという顧問の先生は「走れないから砲丸投をしておこう」と声をかけた。すると、なんと右脚だけで8mを投げてしまう。これが投てき人生のスタートだった。 この続きは2020年11月13日発売の『月刊陸上競技12月号』をご覧ください。
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから
       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.03.30

順大1年の池間凛斗が13分36秒26!駒大・伊藤も自己新/日体大長距離競技会

第319回日体大長距離競技会が3月30日に行われ、男子5000m8組で1年生の池間凛斗(順大)が13分36秒26の好記録をマークして組トップだった。 池間は沖縄出身で、宮崎・小林高卒。高校時代は全国高校駅伝1区で力走し、 […]

NEWS 【世界陸上プレイバック】―87年ローマ―走高跳頂上決戦はコスタディノワが制す!やり投・溝口が日本初入賞

2025.03.30

【世界陸上プレイバック】―87年ローマ―走高跳頂上決戦はコスタディノワが制す!やり投・溝口が日本初入賞

今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。 これ […]

NEWS 関口絢太が10000m28分07秒46の自己新 石原とともに米国遠征The TEN出場

2025.03.30

関口絢太が10000m28分07秒46の自己新 石原とともに米国遠征The TEN出場

The TENが3月29日に米国・カリフォルニア州で行われ、男子10000mに出場した関口絢太(SGホールディングス)が28分07秒46の組5着だった。 関口は立教大出身で、昨年の箱根駅伝は10区区間3位。卒業後にSGホ […]

NEWS 優勝は自己新の小林航央 青学大・田中悠登はラストラン5位/ふくい桜マラソン

2025.03.30

優勝は自己新の小林航央 青学大・田中悠登はラストラン5位/ふくい桜マラソン

ふくい桜マラソン2025が3月30日に福井駅前発着のコースで行われ、小林航央(新電元工業)が2時間16分37秒で優勝した。小林は中学時代に800mに優勝し、筑波大では中距離から長距離までこなしている。これまでのベストは2 […]

NEWS 丸山竜也が銅メダル 女子は川村楓の5位が最上位/アジアマラソン選手権

2025.03.30

丸山竜也が銅メダル 女子は川村楓の5位が最上位/アジアマラソン選手権

アジアマラソン選手権が3月30日、中国・浙江省嘉興で行われ、男子は丸山竜也(トヨタ自動車)が2時間11分51秒の3位に入った。 丸山は10km付近でやや先頭集団から離されそうになるものの、すぐに追いつき、横田俊吾(JR東 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報