HOME 国内、特集、五輪

2024.08.10

【高平慎士の視点】今できることをやり尽くした日本男子4継の5位入賞「目標は金メダル」と言い続けられるチームを/パリ五輪
【高平慎士の視点】今できることをやり尽くした日本男子4継の5位入賞「目標は金メダル」と言い続けられるチームを/パリ五輪

パリ五輪男子4×100mR決勝の様子

8月1日~11日の日程で開催されているパリ五輪の陸上競技。その男子4×100mリレー決勝が日本時間8月10日午前2時47分に行われ、日本は日本歴代4位タイの37秒78で5位に入り、2大会ぶりの入賞を果たした。2008年北京五輪男子4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、レースを振り返ったもらった。

◇ ◇ ◇

広告の下にコンテンツが続きます

今、できることをやり尽くした。日本の男子4×100mリレーにとって、そんなパリ五輪だったと思います。

予選は1走からサニブラウン・アブデル・ハキーム選手(東レ)、栁田大輝選手(東洋大)、桐生祥秀選手(日本生命)、上山紘輝選手(住友電工)のオーダーで、38秒06で4着。全体4位のタイムで決勝進出を決めました。ただ、プラス通過だったことでインレーンに割り当てられたことで、メダルを狙うには苦しい状況になったと思います。

決勝は1走に坂井隆一郎選手(大阪ガス)を起用し、サニブラウン選手を2走にコンバートしました。アンカーの上山選手にトップでバトンを渡し、37秒78で5位。シーズンベストだったことが、今できることをやれた証拠です。タイム的にはメダルを取ってもおかしくない水準まで引き上げられました。日本の伝統をしっかりと示したレースと言えるでしょう。

個々の走りを見ると、やはりサニブラウン選手の強さが際立ちます。世界陸連発表の記録には区間タイムが「8秒88」と出ていますが、米国にバトンパス失敗があったとはいえ全体のトップ。各国のエースを相手に、2走がストロングポイントになれたことは、今後の日本の強みとなるでしょう。

坂井選手の走りも悪くなかったですし、桐生選手も予選(9秒25)から9秒18へと短縮。上山選手は予選(9秒18)から決勝(9秒33)でタイムを落としていますが、厳しい流れの中では粘りを見せてくれました。

ただ、日本の男子4継が求めるところが「それでいいのか」というのは、選手たちが一番よくわかっていると思います。ですから、「及第点」という言葉は、選手たちに失礼かもしれないですね。補欠メンバーも含めて「金メダル」を目指す彼らは、その責任と覚悟を持って臨んでいます。

だからこそ、来年の東京世界選手権、4年後のロサンゼルス五輪を考えると、課題は山積していると思います。

選手層は確かに厚くなっていますが、「走る場所」の層をもっと厚くする必要があるでしょう。日本選手権100mで2連覇を誇る坂井選手は、1走しか選択肢がないのか。桐生選手の3走を脅かす選手が、上山選手以外にいなかったのか。

適材適所も確かに必要ですが、「ここじゃないとダメ」ではなく、選択肢の幅をもっと広げていくことはとても重要だと感じます。どこでも走れる選手が、どこでもいけるという状況を作る。そうった流れが生まれてほしいと思います。

加えて走力面では、サニブラウン選手以外の成長がカギを握るでしょう。サニブラウン選手が決勝の2走で出した区間タイムは、整合性が取れているかは別として、ある程度限界値に近いものです。もちろん、選手自身はこれを上回ることを目指していきますが、それができれば“ウサイン・ボルト級”です。

そうであるならば、やはり他の3人のレベルを上げる必要があります。ただ、それは補欠としてサポートした栁田選手、東田旺洋選手(関彰商事)、飯塚翔太選手(ミズノ)も含め、選手それぞれが感じていること。そして、その思いを持っている限りは、日本の4継は大丈夫です。

カナダの優勝タイムが37秒50。リレーに関しては、そこまでレベルが上がっているわけではありません。だからこそ、余計に悔しいのですが、カナダのような勝負強さを求めていってもらいたいです

東京世界選手権も、ロサンゼルス五輪も、目標は変わりません。誰に何と言われようと「金メダル」を目指して、「目標は金メダル」と言い続けられるチームになっていってほしいと思います。

◎高平慎士(たかひら・しんじ)
富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)

8月1日~11日の日程で開催されているパリ五輪の陸上競技。その男子4×100mリレー決勝が日本時間8月10日午前2時47分に行われ、日本は日本歴代4位タイの37秒78で5位に入り、2大会ぶりの入賞を果たした。2008年北京五輪男子4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、レースを振り返ったもらった。 ◇ ◇ ◇ 今、できることをやり尽くした。日本の男子4×100mリレーにとって、そんなパリ五輪だったと思います。 予選は1走からサニブラウン・アブデル・ハキーム選手(東レ)、栁田大輝選手(東洋大)、桐生祥秀選手(日本生命)、上山紘輝選手(住友電工)のオーダーで、38秒06で4着。全体4位のタイムで決勝進出を決めました。ただ、プラス通過だったことでインレーンに割り当てられたことで、メダルを狙うには苦しい状況になったと思います。 決勝は1走に坂井隆一郎選手(大阪ガス)を起用し、サニブラウン選手を2走にコンバートしました。アンカーの上山選手にトップでバトンを渡し、37秒78で5位。シーズンベストだったことが、今できることをやれた証拠です。タイム的にはメダルを取ってもおかしくない水準まで引き上げられました。日本の伝統をしっかりと示したレースと言えるでしょう。 個々の走りを見ると、やはりサニブラウン選手の強さが際立ちます。世界陸連発表の記録には区間タイムが「8秒88」と出ていますが、米国にバトンパス失敗があったとはいえ全体のトップ。各国のエースを相手に、2走がストロングポイントになれたことは、今後の日本の強みとなるでしょう。 坂井選手の走りも悪くなかったですし、桐生選手も予選(9秒25)から9秒18へと短縮。上山選手は予選(9秒18)から決勝(9秒33)でタイムを落としていますが、厳しい流れの中では粘りを見せてくれました。 ただ、日本の男子4継が求めるところが「それでいいのか」というのは、選手たちが一番よくわかっていると思います。ですから、「及第点」という言葉は、選手たちに失礼かもしれないですね。補欠メンバーも含めて「金メダル」を目指す彼らは、その責任と覚悟を持って臨んでいます。 だからこそ、来年の東京世界選手権、4年後のロサンゼルス五輪を考えると、課題は山積していると思います。 選手層は確かに厚くなっていますが、「走る場所」の層をもっと厚くする必要があるでしょう。日本選手権100mで2連覇を誇る坂井選手は、1走しか選択肢がないのか。桐生選手の3走を脅かす選手が、上山選手以外にいなかったのか。 適材適所も確かに必要ですが、「ここじゃないとダメ」ではなく、選択肢の幅をもっと広げていくことはとても重要だと感じます。どこでも走れる選手が、どこでもいけるという状況を作る。そうった流れが生まれてほしいと思います。 加えて走力面では、サニブラウン選手以外の成長がカギを握るでしょう。サニブラウン選手が決勝の2走で出した区間タイムは、整合性が取れているかは別として、ある程度限界値に近いものです。もちろん、選手自身はこれを上回ることを目指していきますが、それができれば“ウサイン・ボルト級”です。 そうであるならば、やはり他の3人のレベルを上げる必要があります。ただ、それは補欠としてサポートした栁田選手、東田旺洋選手(関彰商事)、飯塚翔太選手(ミズノ)も含め、選手それぞれが感じていること。そして、その思いを持っている限りは、日本の4継は大丈夫です。 カナダの優勝タイムが37秒50。リレーに関しては、そこまでレベルが上がっているわけではありません。だからこそ、余計に悔しいのですが、カナダのような勝負強さを求めていってもらいたいです 東京世界選手権も、ロサンゼルス五輪も、目標は変わりません。誰に何と言われようと「金メダル」を目指して、「目標は金メダル」と言い続けられるチームになっていってほしいと思います。 ◎高平慎士(たかひら・しんじ) 富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

         

Latest articles 最新の記事

2026.03.20

男子200m・永丘琉人が中2歴代6位の22秒10 栃木と山梨で中学生アスリートが始動

第3回南関東中学生陸上競技大会が3月20日、山梨県甲府市のJITリサイクルインクスタジアム(小瀬スポーツ公園)で開催された。 同大会は、4月からの本格的なトラック&フィールドシーズン開幕を前に、千葉、東京、神奈川、山梨の […]

NEWS コモディイイダ・柴田龍一が陸上競技部退部 今後は社業に専念しつつも競技は続行

2026.03.20

コモディイイダ・柴田龍一が陸上競技部退部 今後は社業に専念しつつも競技は続行

コモディイイダは3月20日にSNSを更新し、柴田龍一が3月29日のふくい桜マラソン(福井)のペースメーカーを最後に陸上競技部の活動を締めくくり、退部すると発表した。 柴田は皇學館大学出身。学生時代は21年東海インカレ10 […]

NEWS 黒田朝日が第50回記念特別ゲストとして参加 5月の“さがえ”さくらんぼマラソン

2026.03.20

黒田朝日が第50回記念特別ゲストとして参加 5月の“さがえ”さくらんぼマラソン

山形県寒河江市で行われる“さがえ”さくらんぼマラソン(5月31日開催)について、市などでつくる実行委員会は3月19日、今回で第50回を迎えるのを記念して箱根駅伝やマラソンなどで活躍している黒田朝日(青学大/4月からGMO […]

NEWS 井戸アビゲイル風果が300m36秒83の日本新!昨年の世界選手権代表が個人2種目めの日本記録保持者

2026.03.20

井戸アビゲイル風果が300m36秒83の日本新!昨年の世界選手権代表が個人2種目めの日本記録保持者

2025年度第3回宮崎県記録会(霧島酒造スポーツランド都城 KUROKIRI STADIUM)女子300mで、井戸アビゲイル風果(東邦銀行)が36秒83を日本新記録を打ち立てた。 これまでの日本記録は、松本奈菜子(東邦銀 […]

NEWS 国士大長距離に都大路出場の八戸学院光星・兼平涼太郎や埼玉栄・藤澤春希、留学生エヴァンスら19人入部

2026.03.20

国士大長距離に都大路出場の八戸学院光星・兼平涼太郎や埼玉栄・藤澤春希、留学生エヴァンスら19人入部

国士大陸上競技部長距離ブロックは3月20日、SNSを更新し、2026年度の新入生19名を発表した。 昨年の全国高校駅伝で、1区を務めた兼平涼太郎(八戸学院光星・青森)や、5区区間9位の藤澤春希(埼玉栄)、7区を走った大堀 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年4月号 (3月13日発売)

2026年4月号 (3月13日発売)

別冊付録 記録年鑑 2025

東京マラソン、大阪マラソン、名古屋ウィメンズマラソン

page top