◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)9日目
パリ五輪・陸上競技の9日目モーニングセッションに女子100mハードル準決勝が行われ、福部真子(日本建設工業)は12秒89(-0.7)の組5着だった。自己記録(12秒69)には届かなかったが、五輪日本人最高記録を更新。決勝進出はならなかったが、確かな足跡をパリに刻んだ。
「ファイナルに残りたいと言い続けてきて意地がありました」
前日に尾﨑雄祐コーチと「勝負できるのは3台目まで。そこは自分の中で達成しようと思って」スタートした。事実、1台目はトップで通過。だが、「並ばれて、前に行かれてからはまったく自分と違うリズムだった」。良さは出せたという実感ととも、世界との差を改めて突きつけられた。
走りだけではい。「準決勝になると、あのカマチョクイン選手でもまったく笑っていなかった。そのレベルの選手でも至難の業なのが準決勝で、確実に通れるわけではない。決勝に行きたいと行っていた自分が恥ずかしくなるくらい」。22年のオレゴン世界選手権でも準決勝を経験したが、今回は勝負に来たからこそ感じた大きなショック。環境の変化もあり、なかなか寝つけなかった。そういったところ含めて力を発揮できなかったところに悔しさがにじむ。
前日には男子110mハードルで村竹ラシッド(JAL)が5位入賞。今回は準決勝で敗れた泉谷駿介(住友電工)も世界トップで活躍する。「私がベストを出しても世界トップでも決勝ラインでもない。それが現実。男子のレベルまで引き上げられるか考えなければいけないのに……」と現実を突きつけられて涙が浮かぶ。
ただ、日本新を出して喜んでいた2年前のオレゴンから、同じように12秒8台をそろえて悔し涙を見せられたのは、福部真子、そして日本女子スプリントハードルの大きな成長の証だ。
小学生から陸上を始め、天才少女として期待を集めてきた。中学で四種競技日本一、高校では100mハードルでインターハイ3連覇。どんな競技のアスリートと同様に「オリンピックに出たい」と言わされてきた。そうあるのが普通だった。
そこから苦悩の連続を乗り越え、一時は引退も考えながら、地元・広島に戻って競技を続けることを決めた。その時に誓いを立てたのが「パリ五輪のファイナル」。当時は12秒台にすら入っていなかった。天性のハードリング技術だけではなく、その意思の強さ、そこに向かって努力し続けられる『天才』である。
来年の東京世界選手権に向け「まずは12秒7を安定させたい」。そうすればさらなる記録向上は必ず見えてくる。
「全競技者が目指すべき場所。やっぱりみんな4年間、人生をかけてやるからこそ、そこでしか感じられないものを私も感じられました。人生にとって大きな価値があると思います。それを今後、次世代に伝えていくのも役割。今まで出会ってきた人、誰1人欠けても出られなかった。ハードル人生で最高の12秒間でした」
15歳でハードルと付き合ってから14年目。フィニッシュ後、これまで長く付き合ってきたハードルに感謝するように、駆け抜けたトラックに向かって深く一礼をして花の都に別れを告げた。
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Revenge
泉谷駿介(住友電工)