2024.07.30
近年、活況に沸く男子110mハードルは今大会も3人フルエントリーした。『世界から最も遠い短距離種目』とも言われたのも今は昔。決勝進出、しかも複数、さらにはメダルの可能性も秘めている。
13秒04の日本記録の欄には2人の名が並ぶ。泉谷駿介(住友電工)と村竹ラシッド(JAL)。ともに順大出身ハードラーで、2学年違い。山崎一彦コーチの指導を仰ぐ。
実績は泉谷が抜けており、すでに世界トップ選手の仲間入りを果たしている。昨年のブダペスト世界選手権では5位入賞の快挙。今季はダイヤモンドリーグ(DL)を主戦場とし、、初戦となった4月のDL厦門大会で13秒17(-0.3)の3位となり、2大会連続の五輪代表に決まった。
「出力、スピードが上がっていて刻むのが難しくなっている」と泉谷。7月のDLパリ大会では決勝で2度も大きくバランスを崩しながら13秒16(-0.6)の3位に入ったが、やはり刻みきれなかった部分を悔やむ。
DLばかりで「レースの難易度が高かった」ことから、自分の走りに集中したレースを1本入れる目的で21日のトワイライトゲームスに急きょ参戦。13秒10(+1.6)のシーズンベストで「欲を言えば13秒0台がほしかったですが、自分らしいレースができた」とhっと胸をなで下ろしていた。
ブダペスト同様、「普通」にやれば決勝には届くだろう。あとはスピードをコントロールでき、刻み切れれば、いよいよ「メダルライン」に手がかかる。
昨年秋の日本インカレで先輩の日本記録に並んだ村竹が勢いを増している。日本選手権は雨の降るなか、決勝を13秒07(+0.2)のセカンドベストで初優勝。DLパリ大会は決勝こそふくらはぎのケイレンで棄権したが、予選を13秒15(+0.1)で1着となるなど、海外レースでも力を出せるようになった。
3年前の東京五輪。日本選手権の予選で参加標準記録を突破しながら決勝で不正スタートにより失格となった。あの日から「この時のために3年間やってきた」と胸を張った。パリ五輪では「準決勝の壁を越えてメダルに挑戦したい」。12秒台も完全に捉えている。
もちろん、円熟期に入った高山峻野(ゼンリン)も実力はあり、準決勝で目標とする自己記録(13秒10)をクリアできれば十分に決勝もあり得る。
2016年に矢澤航がリオ五輪の舞台に立ち、谷川聡の日本記録を2018年に金井大旺が破ってから、一気に時代が進み出した。10年前、「入賞候補」「メダルもあり得る」「12秒台に入るかも」となることなど、どれだけの人が信じただろうか。
パリ五輪の陸上競技は8月1日から11日まで行われる。男子110mハードルは日本時間8月4日18時50分から予選、6日17時50分に準決勝、8日深夜4時45分に決勝が行われる。
文/向永拓史
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