HOME 編集部コラム

2024.07.26

編集部コラム「高校生日本記録保持者」
編集部コラム「高校生日本記録保持者」

女子800m日本記録保持者の久保凛

毎週金曜日更新!?

★月陸編集部★

攻め(?)のアンダーハンド
リレーコラム🔥
毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ!
陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。
編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
暇つぶし程度にご覧ください!

第251回「高校生日本記録保持者(大久保雅文)

7月15日に行われた関西学連第1回長距離強化記録会の女子800mで、久保凛選手(東大阪大敬愛高)が、日本女子初の2分切りとなる1分59秒93の日本記録を樹立しました。

この種目での日本記録は19年ぶり。しかも、高校2年生が新たな歴史の扉を開いたということもあり、そのニュースは瞬く間に全国へ衝撃をもって報じられました。

28日からスタートする福岡インターハイでは日本記録保持者として臨む久保選手に大きな注目が集まりそうですが、今回は日本記録保持者となった高校生を紹介したいと思います。

新制高校が発足した1948年以降で、日本記録保持者となった高校生はこれまで男子が6人、女子が25人です。(現行のインターハイ実施種目に限る)

高校生日本記録保持者の第1号は、1957年に男子やり投で69m36を投げた三木孝志選手(那賀高)。同年の日本選手権でも優勝を飾り、後に1964年東京五輪にも出場しています。また、この年の秋には女子砲丸投の小保内聖子選手(福岡高)も日本記録を樹立。両名はいずれも投てき種目での快挙達成でしたが、以降の樹立者は表れていません。

1964年には女子400mの小川清子選手(長良高)、同走幅跳の香丸恵美子選手(三潴高)が東京五輪直前の9月に日本新記録を出し、その活躍も評価されて、高校生オリンピアンとなりました。

その後、1970年代から80年にはスプリント種目での日本記録樹立が相次ぎ、75年には女子400mの難波雅枝選手(鈴峯女高)がインターハイで日本新記録(電動計時)となる56秒77で駆け抜けて優勝しています(ただし、73年に手動計時で河野信子選手が54秒4を日本記録を樹立)。同じ年には男子400mでインターハイを制した長尾隆史選手(岡山工高)が10月に46秒82を出し、日本記録保持者となっています。

75年に女子200mで日本記録を打ち立てた大迫夕起子選手(鹿児島女高)は、翌年100mでも11秒78をマーク。その後、磯崎公美選手(山北高)、柿沼和恵選手(埼玉栄高)も200m、400mの2種目でレコードホルダーとなりました。

男子100mではこれまで3人の高校生日本記録保持者が誕生しており、1984年に不破弘樹選手(東農大二高)が10秒34と、1968年に飯島秀雄さんが樹立した日本記録に並ぶ記録をマーク。1987年にはラグビー部員としても活躍していた中道貴之選手(木本高)が10秒1(手動計時)と日本タイ記録を打ち立てて大きな話題に。今年のインターハイと同じ博多の森競技場で開催された、1990年の福岡国体では宮田英明選手(東農大二高)が10秒27を出しています。

1990年代以降は、日本記録の水準も大きく上がり、新興種目の女子400mハードルや女子棒高跳などでの記録樹立がある程度でしたたが、2006年に小林祐梨子選手(須磨学園高)が1500mで日本記録保持者となりました。久保選手の日本記録更新はこれ以来のことです。

このほか、現在のインターハイで実施されない種目でも男子200mハードル・土江良吉選手(出雲商高)、女子5000m、10000m、マラソンの増田明美選手(成田高)など、陸上界に大きな足跡を残した選手が偉業を成し遂げています。

各種目のレベルが成熟するなかで、15歳から18歳の高校生が日本記録を樹立するのはかなり難しくなっていますが、今後新たな“高校生日本記録保持者”は表れるでしょうか。

高校生日本記録保持者

<男子>
●100m
10.34 不破弘樹(東農大二高) 1984年
10.1  中道貴之(木本高)   1987年
10.27 宮田英明(東農大二高) 1990年
●200m
20.57 高橋和裕(添上高)   1994年
●400m
46.82 長尾隆史(岡山工高)  1975年
●やり投(旧規格)
69.36 三木孝志(那賀高)   1957年
<女子>
●100m
11.78 大迫夕起子(鹿児島女高)1976年
11.73 阿萬亜里沙(宮崎工高) 1978年
11.6  清水美輝(松本県ヶ丘高)1982年
11.73 北田敏恵(浪商高)   1986年
11.6  井口由吏(八女工高)  1990年
11.6  正木典子(城ノ内高)  1991年
11.62 伊藤佳奈恵(恵庭北高) 1993年
●200m
24.4  北林裕子(鹿児島実女高)1972年
24.46 大迫夕起子(鹿児島女高)1975年
24.38 大迫夕起子(鹿児島女高)1976年
24.18 磯崎公美(山北高)   1982年
24.00 磯崎公美(山北高)   1982年
23.85 柿沼和恵(埼玉栄高)  1992年
23.82 柿沼和恵(埼玉栄高)  1992年
●400m
56.8  小川清子(長良高)   1964年
56.77 難波雅枝(鈴峯女高)  1975年
56.29 波多野浩美(気賀高)  1977年
54.59 磯崎公美(山北高)   1981年
53.73 磯崎公美(山北高)   1982年
53.45 柿沼和恵(埼玉栄高)  1992年
●800m
2.04.82 新井文子(群馬女短大附高)1985年
1.59.93 久保凛(東大阪大敬愛高)2024年
●1500m
4.07.87 小林祐梨子(須磨学園高)2006年
4.07.86 小林祐梨子(須磨学園高)2006年
●100mH
14.0  卯野洋子(山形城北女高) 1972年
●400mH
57.88 山形依希子(敦賀高)   1992年
57.65 山形依希子(敦賀高)   1992年
●走高跳
1.85  八木たまみ(太田市商高) 1976年
●棒高跳
3.10  三室聡子(浜松東高)   1993年
3.11  三室聡子(浜松東高)   1994年
3.12  三室聡子(浜松東高)   1994年
3.20  三室聡子(浜松東高)   1994年
3.22  三室聡子(浜松東高)   1994年
3.30  三室聡子(浜松東高)   1994年
3.42  中野真実(観音寺一高)  1996年
3.50  中野真実(観音寺一高)  1996年
3.60  中野真実(観音寺一高)  1996年
3.61  中野真実(観音寺一高)  1996年
3.70  中野真実(観音寺一高)  1996年
●走幅跳
6.17  香丸恵美子(三潴高)   1964年
6.17  山下博子(三潴高)    1968年
6.26  山下博子(三潴高)    1969年
●砲丸投
13.49 小保内聖子(福岡高)   1957年
●七種競技
5447  吉川ゆかり(添上高)   1982年

大久保雅文(おおくぼ・まさふみ)
月刊陸上競技編集部
1984年9月生まれ。175cm、63kg。三重県伊勢市出身。小学1年から競泳、レスリング、野球などをするも、吉田沙保里さんにタックルを受けたこと以外は特にこれといった実績も残せず。中学で「雨が降ったら練習が休みになるはず」という理由から陸上部に入部。長距離を専門とし、5000mと3000m障害で県インターハイ決勝出場(ただし、三重県には支部予選もなく、県大会もタイムレース決勝である)

過去の編集部コラムはこちら

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。 編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。 暇つぶし程度にご覧ください!

第251回「高校生日本記録保持者(大久保雅文)

7月15日に行われた関西学連第1回長距離強化記録会の女子800mで、久保凛選手(東大阪大敬愛高)が、日本女子初の2分切りとなる1分59秒93の日本記録を樹立しました。 この種目での日本記録は19年ぶり。しかも、高校2年生が新たな歴史の扉を開いたということもあり、そのニュースは瞬く間に全国へ衝撃をもって報じられました。 28日からスタートする福岡インターハイでは日本記録保持者として臨む久保選手に大きな注目が集まりそうですが、今回は日本記録保持者となった高校生を紹介したいと思います。 新制高校が発足した1948年以降で、日本記録保持者となった高校生はこれまで男子が6人、女子が25人です。(現行のインターハイ実施種目に限る) 高校生日本記録保持者の第1号は、1957年に男子やり投で69m36を投げた三木孝志選手(那賀高)。同年の日本選手権でも優勝を飾り、後に1964年東京五輪にも出場しています。また、この年の秋には女子砲丸投の小保内聖子選手(福岡高)も日本記録を樹立。両名はいずれも投てき種目での快挙達成でしたが、以降の樹立者は表れていません。 1964年には女子400mの小川清子選手(長良高)、同走幅跳の香丸恵美子選手(三潴高)が東京五輪直前の9月に日本新記録を出し、その活躍も評価されて、高校生オリンピアンとなりました。 その後、1970年代から80年にはスプリント種目での日本記録樹立が相次ぎ、75年には女子400mの難波雅枝選手(鈴峯女高)がインターハイで日本新記録(電動計時)となる56秒77で駆け抜けて優勝しています(ただし、73年に手動計時で河野信子選手が54秒4を日本記録を樹立)。同じ年には男子400mでインターハイを制した長尾隆史選手(岡山工高)が10月に46秒82を出し、日本記録保持者となっています。 75年に女子200mで日本記録を打ち立てた大迫夕起子選手(鹿児島女高)は、翌年100mでも11秒78をマーク。その後、磯崎公美選手(山北高)、柿沼和恵選手(埼玉栄高)も200m、400mの2種目でレコードホルダーとなりました。 男子100mではこれまで3人の高校生日本記録保持者が誕生しており、1984年に不破弘樹選手(東農大二高)が10秒34と、1968年に飯島秀雄さんが樹立した日本記録に並ぶ記録をマーク。1987年にはラグビー部員としても活躍していた中道貴之選手(木本高)が10秒1(手動計時)と日本タイ記録を打ち立てて大きな話題に。今年のインターハイと同じ博多の森競技場で開催された、1990年の福岡国体では宮田英明選手(東農大二高)が10秒27を出しています。 1990年代以降は、日本記録の水準も大きく上がり、新興種目の女子400mハードルや女子棒高跳などでの記録樹立がある程度でしたたが、2006年に小林祐梨子選手(須磨学園高)が1500mで日本記録保持者となりました。久保選手の日本記録更新はこれ以来のことです。 このほか、現在のインターハイで実施されない種目でも男子200mハードル・土江良吉選手(出雲商高)、女子5000m、10000m、マラソンの増田明美選手(成田高)など、陸上界に大きな足跡を残した選手が偉業を成し遂げています。 各種目のレベルが成熟するなかで、15歳から18歳の高校生が日本記録を樹立するのはかなり難しくなっていますが、今後新たな“高校生日本記録保持者”は表れるでしょうか。

高校生日本記録保持者

<男子> ●100m 10.34 不破弘樹(東農大二高) 1984年 10.1  中道貴之(木本高)   1987年 10.27 宮田英明(東農大二高) 1990年 ●200m 20.57 高橋和裕(添上高)   1994年 ●400m 46.82 長尾隆史(岡山工高)  1975年 ●やり投(旧規格) 69.36 三木孝志(那賀高)   1957年 <女子> ●100m 11.78 大迫夕起子(鹿児島女高)1976年 11.73 阿萬亜里沙(宮崎工高) 1978年 11.6  清水美輝(松本県ヶ丘高)1982年 11.73 北田敏恵(浪商高)   1986年 11.6  井口由吏(八女工高)  1990年 11.6  正木典子(城ノ内高)  1991年 11.62 伊藤佳奈恵(恵庭北高) 1993年 ●200m 24.4  北林裕子(鹿児島実女高)1972年 24.46 大迫夕起子(鹿児島女高)1975年 24.38 大迫夕起子(鹿児島女高)1976年 24.18 磯崎公美(山北高)   1982年 24.00 磯崎公美(山北高)   1982年 23.85 柿沼和恵(埼玉栄高)  1992年 23.82 柿沼和恵(埼玉栄高)  1992年 ●400m 56.8  小川清子(長良高)   1964年 56.77 難波雅枝(鈴峯女高)  1975年 56.29 波多野浩美(気賀高)  1977年 54.59 磯崎公美(山北高)   1981年 53.73 磯崎公美(山北高)   1982年 53.45 柿沼和恵(埼玉栄高)  1992年 ●800m 2.04.82 新井文子(群馬女短大附高)1985年 1.59.93 久保凛(東大阪大敬愛高)2024年 ●1500m 4.07.87 小林祐梨子(須磨学園高)2006年 4.07.86 小林祐梨子(須磨学園高)2006年 ●100mH 14.0  卯野洋子(山形城北女高) 1972年 ●400mH 57.88 山形依希子(敦賀高)   1992年 57.65 山形依希子(敦賀高)   1992年 ●走高跳 1.85  八木たまみ(太田市商高) 1976年 ●棒高跳 3.10  三室聡子(浜松東高)   1993年 3.11  三室聡子(浜松東高)   1994年 3.12  三室聡子(浜松東高)   1994年 3.20  三室聡子(浜松東高)   1994年 3.22  三室聡子(浜松東高)   1994年 3.30  三室聡子(浜松東高)   1994年 3.42  中野真実(観音寺一高)  1996年 3.50  中野真実(観音寺一高)  1996年 3.60  中野真実(観音寺一高)  1996年 3.61  中野真実(観音寺一高)  1996年 3.70  中野真実(観音寺一高)  1996年 ●走幅跳 6.17  香丸恵美子(三潴高)   1964年 6.17  山下博子(三潴高)    1968年 6.26  山下博子(三潴高)    1969年 ●砲丸投 13.49 小保内聖子(福岡高)   1957年 ●七種競技 5447  吉川ゆかり(添上高)   1982年
大久保雅文(おおくぼ・まさふみ) 月刊陸上競技編集部 1984年9月生まれ。175cm、63kg。三重県伊勢市出身。小学1年から競泳、レスリング、野球などをするも、吉田沙保里さんにタックルを受けたこと以外は特にこれといった実績も残せず。中学で「雨が降ったら練習が休みになるはず」という理由から陸上部に入部。長距離を専門とし、5000mと3000m障害で県インターハイ決勝出場(ただし、三重県には支部予選もなく、県大会もタイムレース決勝である)
過去の編集部コラムはこちら

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.09.16

世界女王・北口榛花に特製『やり投ハイチュウ』贈呈!「やりより重たい」

女子やり投でパリ五輪金メダルに輝いた北口榛花(JAL)が9月16日に帰国し、都内で会見を開いた。その席でサプライズが待っていた。 7月16日にサポート契約を結んだ森永製菓から、やり投を模したケースにハイチュウなど、お菓子 […]

NEWS やり投世界一・北口榛花「悩み、もがき続けた1年」五輪金メダルとDLトロフィーとともに凱旋帰国

2024.09.16

やり投世界一・北口榛花「悩み、もがき続けた1年」五輪金メダルとDLトロフィーとともに凱旋帰国

女子やり投の北口榛花(JAL)が9月16日に帰国し、都内で会見を開いた。 光り輝くパリ五輪金メダルとダイヤモンドリーグ(DL)ファイナルを手に帰国した北口。冒頭で「オリンピックとダイヤモンドリーグ・ファイナルと重要な試合 […]

NEWS 女子やり投アジア選手権入賞の久世生宝が今季限りで引退 「感謝の気持ちでいっぱい」

2024.09.16

女子やり投アジア選手権入賞の久世生宝が今季限りで引退 「感謝の気持ちでいっぱい」

女子やり投の久世生宝(コンドーテック)が9月15日、10月の佐賀国民スポーツ大会を最後に現役引退することを明らかにした。 久世は岡山県出身の29歳。幼少期から陸上に親しみ、中学では短距離が専門。倉敷中央高校進学後、体力強 […]

NEWS 女子やり投・右代織江が引退 08年インターハイ、19年茨城国体優勝

2024.09.16

女子やり投・右代織江が引退 08年インターハイ、19年茨城国体優勝

9月15日、女子やり投の右代織江(アースコンシャス)が自身のSNSを更新。今季限りで現役を引退すことを発表した。 右代は北海道出身の34歳。十種競技日本記録保持者の右代啓祐(国士舘クラブ)を兄に持ち、中学から陸上を始めた […]

NEWS 11年世界選手権男子400m銅メダルのケヴィン・ボルレーが引退 “ボルレー兄弟”で4×400mRでも活躍

2024.09.16

11年世界選手権男子400m銅メダルのケヴィン・ボルレーが引退 “ボルレー兄弟”で4×400mRでも活躍

男子400mのケヴィン・ボルレー(ベルギー)が、9月14日のDLファイナルとなったメモリアルヴァンダムで引退レースを行った。 1988年に双子としてジョナサンとともに生まれたケヴィン。ジュニア期から400mを中心に活躍し […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年10月号 (9月13日発売)

2024年10月号 (9月13日発売)

●Paris 2024 Review
●別冊付録/学生駅伝ガイド 2024 秋
●福井全中Review
●東京世界選手権まであと1年
●落合晃の挑戦

page top