2024.06.25
パリ五輪代表選考会を兼ねた第108回日本選手権が6月27日から30日まで、新潟・デンカビッグスワンスタジアムで行われる。日本一の座、そしてパリ行きの切符を懸けた激闘のみどころ【男子トラック編】をチェックしていく。
【日本選手権みどころ】
男子フィールド編/走幅跳・橋岡優輝が2大会連続五輪へ!混戦の走高跳は激しい代表争い、投てきは好記録の予感
女子トラック編/パリ五輪内定の田中希実が3種目挑戦 100mHは田中、福部が五輪出場に向けて熱戦
女子フィールド編/世界女王・北口榛花が五輪へ弾みつけるか 走幅跳・秦澄美鈴はVで五輪内定、森本、諸田、髙橋の跳躍に注目
男子100mは栁田に初Vの予感
注目の100mは3日目に予選と準決勝、決勝は4日の最終種目として大会のフィナーレを飾る。
パリ五輪代表に早期内定したサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)は出場を見送った。残す代表枠は2つ。大会前時点で参加標準記録(10秒00)を突破している選手はサニブラウンのみで、即内定を得るためには今大会で10秒00を切って優勝することが条件だ。また、参加標準記録に届かなくとも、ワールドランキング(Road to Paris)でターゲットナンバー(出場枠)に入れば出場資格を得られる。選考要項に沿えば、出場資格を得て日本選手権3位以内に入ることが求められる。
優勝候補筆頭は二十歳の栁田大輝(東洋大)。昨年は7月のアジア選手権で10秒02をマークして優勝し、ブダペスト世界選手権では準決勝に進んだ。今年は5月に10秒02の自己タイでシーズンインし、続くセイコーゴールデングランプリも優勝。2週間前の日本学生個人選手権では追い風参考ながら9秒台(9秒97/+3.5)をマークしている。日本選手権では高2から出場し、昨年まですべてファイナルに進出。昨年は2位で涙を流したが、初優勝へ舞台は整ったか。ワールドランキングで出場資格を得られるのは間違いなく、優勝すれば初五輪をつかむだろう。
昨年Vの坂井隆一郎(大阪ガス)は連覇を狙う。春先に腸腰筋を痛めた影響で調整が遅れた。今季は木南記念を10秒20で制すと、セイコーゴールデングランプリの予選で10秒10をマーク。ただ、その決勝は脚をケイレンして失速した。布勢スプリントは10秒22で3位。そこからどこまで状態を上げているか。坂井はターゲットナンバーからも外れているため、初五輪のためには標準記録に近い好記録で上位に入ることが必須だ。
ワールドランキングでターゲットナンバーに入っている桐生祥秀(日本生命)は3大会連続五輪が懸かる。今年は室内60mで6秒53の室内日本新(当時)を出すなど順調だったが、体調不良で練習が継続できない苦しみもあった。布勢スプリントでは10秒19(+2.8)まで戻しており、そこから3週間で合わせてくればもちろん完全復活での4年ぶり優勝もあり得る。
東京五輪代表の小池祐貴(住友電工)も調子を上げてきた。拠点とする米国でレースを重ね、4月のマウントサック・リレーで出した10秒11(+1.3)がシーズンベスト。ただ、2大会連続代表には参加標準記録突破が必要となる。
室内転戦でポイントを稼いだ東田旺洋(関彰商事)もターゲットナンバー内につける。他では布勢スプリントでワン・ツーした鈴木涼太(スズキ)と山本匠真(広島大)。好調の守祐陽(大東大)、ダイヤモンドリーグにも出場した和田遼(ミキハウス)らが有力だ。
200mは前回初Vの鵜澤飛羽(筑波大)、飯塚翔太(ミズノ)、上山紘輝(住友電工)のブダペスト世界選手権代表3人が中心。飯塚は4大会連続五輪を狙う。
鵜澤が頭一つ抜け出している。今季は静岡国際でセカンドベストの20秒26、セイコーゴールデングランプリを20秒40でいずれも優勝。飯塚も好調を維持し、今季は20秒4台を3本そろえている。上山はまだ本調子とはいかないが、22年オレゴン世界選手権で見せた20秒26の感覚が戻れば一気に浮上するだろう。
ワールドランキングで出場権を得られそうなのこの3人。日本選手権の結果次第では西裕大(MINT TOKYO)にもチャンスがある。アジア大会代表の宇野勝翔(オリコ)も好調だ。
スプリントでもう一つ、大会のハイライトになるのが400m。昨年のブダペスト世界選手権で44秒77の日本記録を樹立した佐藤拳太郎(富士通)、44秒88を出した佐藤風雅(ミズノ)、セミファイナルに進み45秒04がベストの前回覇者・中島佑季ジョセフ(富士通)が、今季初めて相まみえる。
セイコーゴールデングランプリは佐藤拳が45秒21でV。佐藤風は体調不良でゴールデングランプリを欠場したが、調子は上向いている。米国拠点の中島は6月に入って45秒49のシーズンベストで走っている。日本人初の44秒台決着の可能性が高い。参加標準記録は45秒00で、“ダブル佐藤”は優勝でパリ内定だ。
男子100mは栁田に初Vの予感
注目の100mは3日目に予選と準決勝、決勝は4日の最終種目として大会のフィナーレを飾る。 パリ五輪代表に早期内定したサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)は出場を見送った。残す代表枠は2つ。大会前時点で参加標準記録(10秒00)を突破している選手はサニブラウンのみで、即内定を得るためには今大会で10秒00を切って優勝することが条件だ。また、参加標準記録に届かなくとも、ワールドランキング(Road to Paris)でターゲットナンバー(出場枠)に入れば出場資格を得られる。選考要項に沿えば、出場資格を得て日本選手権3位以内に入ることが求められる。 優勝候補筆頭は二十歳の栁田大輝(東洋大)。昨年は7月のアジア選手権で10秒02をマークして優勝し、ブダペスト世界選手権では準決勝に進んだ。今年は5月に10秒02の自己タイでシーズンインし、続くセイコーゴールデングランプリも優勝。2週間前の日本学生個人選手権では追い風参考ながら9秒台(9秒97/+3.5)をマークしている。日本選手権では高2から出場し、昨年まですべてファイナルに進出。昨年は2位で涙を流したが、初優勝へ舞台は整ったか。ワールドランキングで出場資格を得られるのは間違いなく、優勝すれば初五輪をつかむだろう。 昨年Vの坂井隆一郎(大阪ガス)は連覇を狙う。春先に腸腰筋を痛めた影響で調整が遅れた。今季は木南記念を10秒20で制すと、セイコーゴールデングランプリの予選で10秒10をマーク。ただ、その決勝は脚をケイレンして失速した。布勢スプリントは10秒22で3位。そこからどこまで状態を上げているか。坂井はターゲットナンバーからも外れているため、初五輪のためには標準記録に近い好記録で上位に入ることが必須だ。 ワールドランキングでターゲットナンバーに入っている桐生祥秀(日本生命)は3大会連続五輪が懸かる。今年は室内60mで6秒53の室内日本新(当時)を出すなど順調だったが、体調不良で練習が継続できない苦しみもあった。布勢スプリントでは10秒19(+2.8)まで戻しており、そこから3週間で合わせてくればもちろん完全復活での4年ぶり優勝もあり得る。 東京五輪代表の小池祐貴(住友電工)も調子を上げてきた。拠点とする米国でレースを重ね、4月のマウントサック・リレーで出した10秒11(+1.3)がシーズンベスト。ただ、2大会連続代表には参加標準記録突破が必要となる。 室内転戦でポイントを稼いだ東田旺洋(関彰商事)もターゲットナンバー内につける。他では布勢スプリントでワン・ツーした鈴木涼太(スズキ)と山本匠真(広島大)。好調の守祐陽(大東大)、ダイヤモンドリーグにも出場した和田遼(ミキハウス)らが有力だ。 200mは前回初Vの鵜澤飛羽(筑波大)、飯塚翔太(ミズノ)、上山紘輝(住友電工)のブダペスト世界選手権代表3人が中心。飯塚は4大会連続五輪を狙う。 鵜澤が頭一つ抜け出している。今季は静岡国際でセカンドベストの20秒26、セイコーゴールデングランプリを20秒40でいずれも優勝。飯塚も好調を維持し、今季は20秒4台を3本そろえている。上山はまだ本調子とはいかないが、22年オレゴン世界選手権で見せた20秒26の感覚が戻れば一気に浮上するだろう。 ワールドランキングで出場権を得られそうなのこの3人。日本選手権の結果次第では西裕大(MINT TOKYO)にもチャンスがある。アジア大会代表の宇野勝翔(オリコ)も好調だ。 スプリントでもう一つ、大会のハイライトになるのが400m。昨年のブダペスト世界選手権で44秒77の日本記録を樹立した佐藤拳太郎(富士通)、44秒88を出した佐藤風雅(ミズノ)、セミファイナルに進み45秒04がベストの前回覇者・中島佑季ジョセフ(富士通)が、今季初めて相まみえる。 セイコーゴールデングランプリは佐藤拳が45秒21でV。佐藤風は体調不良でゴールデングランプリを欠場したが、調子は上向いている。米国拠点の中島は6月に入って45秒49のシーズンベストで走っている。日本人初の44秒台決着の可能性が高い。参加標準記録は45秒00で、“ダブル佐藤”は優勝でパリ内定だ。超ハイレベルなハードル2種目
熾烈なパリ五輪代表争いになるのがハードル2種目だ。 110mハードルは13秒04の日本記録保持者・泉谷駿介(住友電工)がパリ五輪代表に内定して出場を見送った。同じく日本記録を持つ村竹ラシッド(JAL)が優勝候補筆頭。今季は織田記念を13秒29で優勝すると、セイコーゴールデングランプリも13秒22の完勝だった。すでに参加標準記録(13秒27)を突破しており、初制覇を果たせば、初五輪代表が決まる。 こちらも参加標準記録を切っている野本周成(愛媛競技力本部)だが、冬の故障から回復途上。どこまで状態を上げられるか。 東京五輪代表の高山峻野(ゼンリン)はターゲットナンバーに入っており、布勢スプリント(B決勝)では13秒49まで上げてきた。2大会連続五輪なるか。注目は順大の阿部竜希。布勢スプリントでは参加標準に0.08秒と迫る13秒35をマークしている。ワールドランキングは厳しいが、参加標準記の“一発回答”はあり得る。町亮汰(佐藤食品新潟アルビレックスRC)、日本代表経験者の石川周平(富士通)と横地大雅(Team SSP)らも上位候補だ。 110mハードルでも13秒29のベストを持つ豊田兼(慶大)は、今大会の“目玉”の一人。400mハードルでパリ五輪参加標準記録(48秒70)を突破している。日本初、近年では世界でも類を見ないハードル2種目で五輪を狙う。 先に行われる400mハードルは優勝すれば父の祖国で行われる五輪の代表に内定。セイコーゴールデングランプリで日本歴代5位の48秒36をマークして優勝した。昨年は同じ舞台の新潟で当時の自己新を出しており相性も良い。日本3人目の47秒台も視野に入ってきた。後半2日間にある110mハードルは参加標準記録突破が必須。勝負をかけにいく。 400mハードルは黒川和樹(住友電工)と筒江海斗(スポーツテクノ和広)も参加標準記録を突破済み。黒川は2大会連続、筒江は初の五輪を狙う。ブダペスト世界選手権代表の児玉悠作(ノジマ)と出口晴翔(ゼンリン)もターゲットナンバー内を狙える位置にランクイン。前回優勝の小川大輝(東洋大)も参加標準記録を視界に捉えている。上記の選手により、パリ五輪代表枠3つの激しい争いが繰り広げられるだろう。 800mは若き力が躍動しそう。米国のペンシルベニア州立大に進学した石井優吉は、全米学生選手権・東部地区予選で日本歴代7位の1分46秒22をマークして“凱旋”。さらに、静岡国際でU20日本記録&高校記録となる1分46秒54を出して優勝した落合晃(滋賀学園高3)が初優勝を狙う。前回Vの第一人者・川元奨(スズキ)、同じく日本記録を持つ源裕貴(NTN)らがどんな走りをするか。 飯澤千翔(住友電工)の復活で盛り上がるのが1500m。ケガで戦線離脱していた飯澤が5月の木南記念で3分35秒77の日本歴代2位を叩き出した。館澤亨次(DeNA)や才記壮人(富士山の銘水)も絶好調だ。 5000mは遠藤日向(住友電工)が2年ぶりVと五輪代表を狙う。昨年10月に左中足骨を手術したが、セイコーゴールデングランプリでは13分20秒28で日本人トップ。日本選手権の結果次第で、ワールドランキングの順位を大きく上げてきそうだ。日本記録を持つ10000mで代表を逃した塩尻和也(富士通)との一騎打ちか。伊藤達彦(Honda)や森凪也(同)も有力だ。室内で13分09秒45を出していた佐藤圭汰(駒大)は故障のためエントリーしなかった。 3000m障害は日本記録保持者・三浦龍司(SUBARU)がパリ五輪代表に内定したため回避。青木涼真(Honda)が万全であれば初優勝は固い。ワールドランキングでも出場圏内につけており、2位以内に入れば五輪が近づく。自己ベスト連発の小原響(GMOインターネットグループ)ブダペスト世界選手権代表の砂田晟弥(プレス工業)もパリ五輪目指して記録と順位を求めるレースになりそう。 パリ行き、さらには来年の東京世界選手権を占う上でも重要な一戦。4日間、新潟での熱戦の模様はライブ配信されるほか、NHKでも放送される。 ◇パリ五輪代表内定条件 ・参加標準記録+優勝 ・各種目最大3人 ※後日選考の優先順位=ワールドランキングで出場権獲得+3位以内(※早期内定者のいる種目は上位2位) ◇テレビ中継 1日目/6月27日(木) NHK BS18:00~20:00 2日目:6月28日(金) NHK BS 18:30~19:30/NHK総合 19:30~20:42 3日目:6月29日(土) NHK総合16:30~18:43 ※17:59~18:05はサブチャンネル 4日目:6月30日(日) NHK総合16:30~18:43 ※17:59~18:05はサブチャンネル
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
2024.11.22
田中希実が来季『グランドスラム・トラック』参戦決定!マイケル・ジョンソン氏が新設
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.01
吉田圭太が住友電工を退部 「充実した陸上人生を歩んでいきたい」競技は継続
2024.11.07
アシックスから軽量で反発性に優れたランニングシューズ「NOVABLAST 5」が登場!
-
2024.10.27
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2024.11.22
田中希実が来季『グランドスラム・トラック』参戦決定!マイケル・ジョンソン氏が新設
来春、開幕する陸上リーグ「グランドスラム・トラック」の“レーサー”として、女子中長距離の田中希実(New Balance)が契約したと発表された。 同大会は1990年代から2000年代に男子短距離で活躍したマイケル・ジョ […]
2024.11.21
早大競走部駅伝部門が麹を活用した食品・飲料を手がける「MURO」とスポンサー契約締結
11月21日、株式会社コラゾンは同社が展開する麹専門ブランド「MURO」を通じて、早大競走部駅伝部とスポンサー契約を結んだことを発表した。 コラゾン社は「MURO」の商品である「KOJI DRINK A」および「KOJI […]
2024.11.21
立迫志穂が調整不良のため欠場/防府読売マラソン
第55回防府読売マラソン大会事務局は、女子招待選手の立迫志穂(天満屋)が欠場すると発表した。調整不良のためとしている。 立迫は今年2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間11分16秒の11位。7月には5000m(15分3 […]
2024.11.20
M&Aベストパートナーズに中大・山平怜生、城西大・栗原直央、國學院大・板垣俊佑が内定!神野「チーム一丸」
神野大地が選手兼監督を務めるM&Aベストパートナーズが来春入社選手として、中大・山平怜生、國學院大・板垣俊佑、城西大・栗原直央の3人が内定した。神野が自身のSNSで内定式の様子を伝えている。 山平は宮城・仙台育英 […]
2024.11.20
第101回(2025年)箱根駅伝 出場チーム選手名鑑
・候補選手は各チームが選出 ・情報は11月20日時点、チーム提供および編集部把握の公認記録を掲載 ・選手名の一部漢字で対応外のものは新字で掲載しています ・過去箱根駅伝成績で関東学生連合での出場選手は相当順位を掲載 ・一 […]
Latest Issue 最新号
2024年12月号 (11月14日発売)
全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会