HOME 箱根駅伝

2024.01.03

5区で2年連続区間新!城西大・山本唯翔が刻んだ“山の神”への挑戦「自分の仕事ができた」/箱根駅伝
5区で2年連続区間新!城西大・山本唯翔が刻んだ“山の神”への挑戦「自分の仕事ができた」/箱根駅伝

2024年箱根駅2年連続2年連続区間新の快走を見せた城西大の山本唯翔

◇第100回箱根駅伝・往路(東京・大手町~神奈川・箱根町/5区間107.5km)

城西大の5区・山本唯翔(4年)が自身の持つ区間記録を50秒上回る1時間9分14秒で2年連続の区間賞を手にした。

「上りに入ったら負けない」。青学大の若林宏樹(3年)や創価大の吉田響(3年)といった“スペシャリスト”がそろうなか、山本は絶対の自信を持って天下の剣を駆け上がった。

「この1年間、区間賞は絶対取りたいという気持ちでやってきました」。最終学年は2区への意欲も見せていたが、チームのために山を担った。

周りは気にせず自分との勝負だと思って走り抜いた。前回は中盤でケイレンを起こし、小涌園の辺りからペースを抑え「30秒ほどのロスがあった」(櫛部静二監督)が、脚力強化など日ごろのトレーニングの成果で軽々と上っていった。

冷たい雨が降りしきる厳しい天候の中でのレース。山本は「雨予報は事前に把握していました。小田原中継所をスタートしてすぐは結構寒さを感じましたが、上っていくと前回より温度差がありませんでした。上のほうまで来ても『とても寒い』とは感じませんでした」という。

広告の下にコンテンツが続きます

レース後半には雨も止み、若林を抑えて区間賞ペース。残るは“山の神”と呼ばれた今井正人(順大)が2005年に旧コース(函嶺洞門を通るため現コースより20m短い)でマークした1時間9分12秒への挑戦だった。

トラックシーズンにスピードを磨いた。「スパートを最後しっかりかけられるよう意識して、ジョグ後の流しや低酸素トレーニングでしっかり追い込んできました」。

残り1kmでは今井の記録しか見ていなかった。「そこには届きませんでしたが、あと2秒まで近づけたのは今季スパート力を磨いてきた結果だと思います」。中盤押していく力と合わせ、今季の取り組みがすべて報われた結果の区間新だった。

副主将としての立場もあった。チームのエースとして練習から背中を見せ、引っ張った。「自分自身も成長できたし、チームにも良い影響を与えられたのかなと思います」。

出雲3位、全日本5位、そして箱根往路も3位となり過去最高記録を残し続けてきた。「復路のメンバーも強いですが、往路の野村(颯斗)、(斎藤)将也、ヴィクター(・キムタイ)、(山中)秀真のみんなで稼がないといけないという思いもあったので、そこは自分の仕事ができた」。往路最高成績に決して満足せず、目標の総合3位に向けチームの意識は定まっている。

今井の記録にはあと一歩届かなかった。しかし、山本は何か吹っ切れたような笑顔で話した。

「どう呼ばれようと、みんなの記憶に残る走りができました。箱根駅伝の5区を小さい頃から見ていたので、大学生活ラストはいい走りができたのは良かった。特に“山の神”にこだわらなくてもいいかなと今は思います」

卒業後はSUBARUに進み、マラソンで五輪を狙う。箱根5区で輝いた山本は、いずれ日本のマラソン界を背負って立つランナーを目指す。

文/荒井寛太

◇第100回箱根駅伝・往路(東京・大手町~神奈川・箱根町/5区間107.5km) 城西大の5区・山本唯翔(4年)が自身の持つ区間記録を50秒上回る1時間9分14秒で2年連続の区間賞を手にした。 「上りに入ったら負けない」。青学大の若林宏樹(3年)や創価大の吉田響(3年)といった“スペシャリスト”がそろうなか、山本は絶対の自信を持って天下の剣を駆け上がった。 「この1年間、区間賞は絶対取りたいという気持ちでやってきました」。最終学年は2区への意欲も見せていたが、チームのために山を担った。 周りは気にせず自分との勝負だと思って走り抜いた。前回は中盤でケイレンを起こし、小涌園の辺りからペースを抑え「30秒ほどのロスがあった」(櫛部静二監督)が、脚力強化など日ごろのトレーニングの成果で軽々と上っていった。 冷たい雨が降りしきる厳しい天候の中でのレース。山本は「雨予報は事前に把握していました。小田原中継所をスタートしてすぐは結構寒さを感じましたが、上っていくと前回より温度差がありませんでした。上のほうまで来ても『とても寒い』とは感じませんでした」という。 レース後半には雨も止み、若林を抑えて区間賞ペース。残るは“山の神”と呼ばれた今井正人(順大)が2005年に旧コース(函嶺洞門を通るため現コースより20m短い)でマークした1時間9分12秒への挑戦だった。 トラックシーズンにスピードを磨いた。「スパートを最後しっかりかけられるよう意識して、ジョグ後の流しや低酸素トレーニングでしっかり追い込んできました」。 残り1kmでは今井の記録しか見ていなかった。「そこには届きませんでしたが、あと2秒まで近づけたのは今季スパート力を磨いてきた結果だと思います」。中盤押していく力と合わせ、今季の取り組みがすべて報われた結果の区間新だった。 副主将としての立場もあった。チームのエースとして練習から背中を見せ、引っ張った。「自分自身も成長できたし、チームにも良い影響を与えられたのかなと思います」。 出雲3位、全日本5位、そして箱根往路も3位となり過去最高記録を残し続けてきた。「復路のメンバーも強いですが、往路の野村(颯斗)、(斎藤)将也、ヴィクター(・キムタイ)、(山中)秀真のみんなで稼がないといけないという思いもあったので、そこは自分の仕事ができた」。往路最高成績に決して満足せず、目標の総合3位に向けチームの意識は定まっている。 今井の記録にはあと一歩届かなかった。しかし、山本は何か吹っ切れたような笑顔で話した。 「どう呼ばれようと、みんなの記憶に残る走りができました。箱根駅伝の5区を小さい頃から見ていたので、大学生活ラストはいい走りができたのは良かった。特に“山の神”にこだわらなくてもいいかなと今は思います」 卒業後はSUBARUに進み、マラソンで五輪を狙う。箱根5区で輝いた山本は、いずれ日本のマラソン界を背負って立つランナーを目指す。 文/荒井寛太

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.03.29

久保凛1000mで2分40秒23 U20&U18日本新記録!高校最高記録も更新、日本歴代でも4位

奈良市サーキットが3月29日、奈良市の鴻ノ池陸上競技場で行われ、女子1000mで800m日本記録(1分59秒93)保持者の久保凛(東大阪大敬愛高2)が2分40秒23をマークした。 この記録は日本歴代4位で、U20とU18 […]

NEWS 【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ

2025.03.28

【世界陸上プレイバック】五輪ボイコットきっかけに創設!クラトフヴィロヴァが女子400mと800mで今も大会記録に残る2冠 日本は室伏重信ら出場も入賞ゼロ

今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これま […]

NEWS 【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦

2025.03.28

【高校生FOCUS】女子三段跳・山﨑りりや(鳴門渦潮高)日本高校女子初の13m到達、大学で学生記録挑戦

FOCUS! 高校生INTERVIEW 山﨑りりや Yamasaki Ririya 鳴門渦潮高3徳島 高校アスリートをフォーカスするコーナー。年度末を迎えますが、振り返ってみれば、2024年度は高校生による日本記録樹立を […]

NEWS 3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定

2025.03.28

3泊4日の全国高体連合宿終了! 「高め合える仲間がいっぱいできた」 来年度は宮崎で開催予定

大阪・ヤンマースタジアム長居を主会場に行われた2024年度の日本陸連U-19強化研修合宿・全国高体連陸上競技専門部強化合宿が3月28日、3泊4日の全日程を終えた。全国から集まった選手たちは交流を深め、試合での再会を誓った […]

NEWS 資格停止中の競歩・池田向希がCASに不服申し立て「一日も早く競技 を再開」

2025.03.28

資格停止中の競歩・池田向希がCASに不服申し立て「一日も早く競技 を再開」

旭化成は3月28日、所属選手である競歩の池田向希が受けたアンチ・ドーピング規則違反による4年間の資格停止処分について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服申し立てを行ったと発表した。 男子20km競歩で東京五輪銀メダリスト […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

別冊付録 2024記録年鑑
山西 世界新!
大阪、東京、名古屋ウィメンズマラソン詳報

page top