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2023.12.09

元スター選手が集結!注目集める「TeamNitro」とは!?ドリームチームが駅伝界の起爆剤になる
元スター選手が集結!注目集める「TeamNitro」とは!?ドリームチームが駅伝界の起爆剤になる

大きな注目を集める「TeamNitro」のメンバーたち

長距離界を彩ってきた男たちが帰ってきた――。2023年6月、陸上界に舞い込んできたビッグニュース。早大OBの新迫志希や山本修平、福岡国際マラソン優勝経験のある藤本拓といった、そうそうたる顔ぶれがクラブチーム『TeamNitro』を立ち上げた。

一度はシューズを脱いだ選手たちが「走る楽しさ、魅力をたくさんの人に伝えること」を目的に集結。『史上最強の市民ランナー集団』を目指している。早速、11月3日に行われた東日本実業団駅伝にも出場し、大きな注目を集めた。

かつて多くの功績を残したランナーたちがなぜチームを発足したのか。『TeamNitro』結成のいきさつや、それぞれのランナーたちが秘める思い、今後の展望を聞いた。

「ランニングのイメージを変えていきたい」

どんなに偉大な選手でも現役を退くときがやってくる。その中で一度は「引退」したランナーたちが集結。藤本拓、山本修平、新迫志希、藤井翼、上村純也、ルカ・ムセンビら人気駅伝で華やかな活躍を見せてきた“元選手”が所属しているのが「TeamNitro」だ。

チーム結成の草案があったのは2022年。「一度リタイアした選手たちによる新しい挑戦として発足しよう」という思いから、SNSなどを通じて互いに声を掛け合ってスタートした。

2019年の福岡国際マラソンで優勝、ハーフマラソンで日本歴代2位のタイムを持つ藤本拓は2022年3月末に陸上部を退部。その後は社業に従事しながら「たまに」走る程度だったが、今年1月から「TeamNitro」の活動に参加している。

「最初は年下ばかりでなじめるかな? と思っていましたが、集まって仲間と一緒に走るようになって、楽しくやれるんだなと肌で感じています」と藤本。「みんなと一緒にもっと頑張りたい」と、チームとしては11月3日の東日本実業団駅伝を目指した。

世羅高時代に全国高校駅伝の連覇に貢献して、早大でも活躍した新迫志希は昨年10月に中国電力の陸上競技部を退部。仕事の疲れもあり飲酒量が増えて体重は12㎏もアップし、「太る才能がありましたね。走ったら全然、身体が動かないんです」と笑う。それでも、「藤本さんや山下友陽君を見て、走れるのはカッコイイと思ったんです」。

中国電力を退社し、4月から地元の大学院に通いながら、再び走り始めた。当初は、「本当に長距離選手?」と藤本も疑うほどだったが、短期間で10㎏の減量に成功。ランナーとして輝いていた頃の身体を取り戻しつつある。

そしてチームのキャプテンを務めるのが、長野の名門・佐久長聖高時代に全国高校駅伝の優勝を経験している藤井翼だ。山梨学院大を卒業後は陸上自衛隊に入隊。4年で退職すると、地元・福岡でランニングクラブを立ち上げて、中高生や市民ランナーの指導に当たっている。

「故障が多くて競技は大学で見切りをつけたんです。TeamNitroから声をかけてもらった時は、志半ばでやめた分、うれしい気持ちがありました。引退して10年以上経っているんですけど、まだまだやれるところを見せたいなと思いましたね」

監督は不在。「チームとしてやる以上は誰かがまとめないといけない」と立候補する形でキャプテンになった。

「TeamNitro」がランニングのイメージを覆すべく走り続けていく

離れた場所でも一つになれる

1月に何人かで立ち上げの話をし、現在のメンバー全員が初めて集まったのは6月だった。2ヵ月に1度くらいの頻度で、YouTubeの企画を兼ねて合同練習をするが、普段は個々でトレーニングしている。グループLINEを作って、各自の練習状況、レース結果を毎日報告。「ハードな練習をやっているときは、他のメンバーもきつい練習しているんだと思えると頑張れるんです」と藤井が話すように、仲間の“走り”がモチベーションになっている。

新迫は「正直、最初は駅伝を目指すというのも全然イメージできなかった」と本音を明かすが、「藤井さんがキャプテンになってくれて、うまく引き出してくれました」と話す。

そして11月3日に行われた東日本実業団駅伝に初参戦。1区・山下友陽、2区・山本修平、3区・藤本拓、4区・阿部飛雄馬、5区・森拳真、6区・新迫志希、7区・藤井翼というオーダー。目標は「クラブチームナンバー1」だった。36チーム中24位で、目標とするクラブチーム相手にも敗れてのフィニッシュとなった。

「目標に到達しなかったのは悔しいですけど、中学時代のような楽しい駅伝ができました」と藤本の表情が和らぐ。「沿道からも『ニトロ頑張れ!』という声もいただきました。YouTubeなどのSNSでも活動してきた成果があったと思うとうれしいです」と力になっている。

新迫で繰り上げスタートとなってしまい、「僕のところでタスキが途切れてしまった。忙しい中でも実業団選手と戦えているメンバーもいるので、申し訳ない気持ちと悔しさがありました」と悔しそうな表情は、高校・大学とトップ選手として活躍してきたプライドを覗かせる。その中でも、「駅伝の楽しかった記憶がよみがえりました」と笑顔を見せた。

東日本実業団駅伝に出場したTEAM NITRO。写真はアンカーの藤井

「自分のなかで最大限の走りはできたと思うんですけど、チームとしては勝負できなかった。でも、日に日にチームの雰囲気が良くなっていたので、今回は大きな一歩が踏み出せたかなと感じています」。アンカーを務めた藤井は胸を張る。メンバーたちは悔しさを噛みしめながらも、駅伝の「楽しさ」を久しぶりに味わい、充実の表情を見せていた。

チームについて語り合う(右から)藤本拓、藤井翼、新迫志希

こうしたの活動や思いに共感するプーマのサポートも受けている。チーム名の「Nitro」は“窒素”を意味し、プーマのテクノロジーから由来している。『爆発力を生み出す』イメージだ。

藤本は日々のトレーニングに同社のシューズを愛用。メンバーは12月8日に一般発売された「EKIDEN RUSH PACK」のモデルをひとあし早く着用している。「DEVIATE NITRO ELITE2」を履いた新迫は「ポイント練習はもちろん、ロードでも履きやすい。濡れた路面も滑らないので、どこでも走れるシューズです」。藤井はレーシングシューズとなる新作「FAST-R NITRO ELITE 2」を履き、「内側に沈み込む感じもなくすごく履きやすい。クセがなくてとにかく前に進みますね」と好感触を得ている。

思いに賛同したプーマからサポートを受けている

東日本実業団駅伝の参戦はゲームの始まりに過ぎない。キャプテンの藤井は、「一線を引いた後でも、まだまだやれるところを見せていきたいですし、『ランニング=苦しい』というイメージを変えたいと思っています。陸上を本気でやってきたからこそ、走る楽しさ、ランニングの魅力を伝えていきたい」と、“起爆剤”となるべく今後も挑戦を続けていく。

文/酒井政人

長距離界を彩ってきた男たちが帰ってきた――。2023年6月、陸上界に舞い込んできたビッグニュース。早大OBの新迫志希や山本修平、福岡国際マラソン優勝経験のある藤本拓といった、そうそうたる顔ぶれがクラブチーム『TeamNitro』を立ち上げた。 一度はシューズを脱いだ選手たちが「走る楽しさ、魅力をたくさんの人に伝えること」を目的に集結。『史上最強の市民ランナー集団』を目指している。早速、11月3日に行われた東日本実業団駅伝にも出場し、大きな注目を集めた。 かつて多くの功績を残したランナーたちがなぜチームを発足したのか。『TeamNitro』結成のいきさつや、それぞれのランナーたちが秘める思い、今後の展望を聞いた。

「ランニングのイメージを変えていきたい」

どんなに偉大な選手でも現役を退くときがやってくる。その中で一度は「引退」したランナーたちが集結。藤本拓、山本修平、新迫志希、藤井翼、上村純也、ルカ・ムセンビら人気駅伝で華やかな活躍を見せてきた“元選手”が所属しているのが「TeamNitro」だ。 チーム結成の草案があったのは2022年。「一度リタイアした選手たちによる新しい挑戦として発足しよう」という思いから、SNSなどを通じて互いに声を掛け合ってスタートした。 2019年の福岡国際マラソンで優勝、ハーフマラソンで日本歴代2位のタイムを持つ藤本拓は2022年3月末に陸上部を退部。その後は社業に従事しながら「たまに」走る程度だったが、今年1月から「TeamNitro」の活動に参加している。 「最初は年下ばかりでなじめるかな? と思っていましたが、集まって仲間と一緒に走るようになって、楽しくやれるんだなと肌で感じています」と藤本。「みんなと一緒にもっと頑張りたい」と、チームとしては11月3日の東日本実業団駅伝を目指した。 世羅高時代に全国高校駅伝の連覇に貢献して、早大でも活躍した新迫志希は昨年10月に中国電力の陸上競技部を退部。仕事の疲れもあり飲酒量が増えて体重は12㎏もアップし、「太る才能がありましたね。走ったら全然、身体が動かないんです」と笑う。それでも、「藤本さんや山下友陽君を見て、走れるのはカッコイイと思ったんです」。 中国電力を退社し、4月から地元の大学院に通いながら、再び走り始めた。当初は、「本当に長距離選手?」と藤本も疑うほどだったが、短期間で10㎏の減量に成功。ランナーとして輝いていた頃の身体を取り戻しつつある。 そしてチームのキャプテンを務めるのが、長野の名門・佐久長聖高時代に全国高校駅伝の優勝を経験している藤井翼だ。山梨学院大を卒業後は陸上自衛隊に入隊。4年で退職すると、地元・福岡でランニングクラブを立ち上げて、中高生や市民ランナーの指導に当たっている。 「故障が多くて競技は大学で見切りをつけたんです。TeamNitroから声をかけてもらった時は、志半ばでやめた分、うれしい気持ちがありました。引退して10年以上経っているんですけど、まだまだやれるところを見せたいなと思いましたね」 監督は不在。「チームとしてやる以上は誰かがまとめないといけない」と立候補する形でキャプテンになった。 [caption id="attachment_121430" align="alignnone" width="800"] 「TeamNitro」がランニングのイメージを覆すべく走り続けていく[/caption]

離れた場所でも一つになれる

1月に何人かで立ち上げの話をし、現在のメンバー全員が初めて集まったのは6月だった。2ヵ月に1度くらいの頻度で、YouTubeの企画を兼ねて合同練習をするが、普段は個々でトレーニングしている。グループLINEを作って、各自の練習状況、レース結果を毎日報告。「ハードな練習をやっているときは、他のメンバーもきつい練習しているんだと思えると頑張れるんです」と藤井が話すように、仲間の“走り”がモチベーションになっている。 新迫は「正直、最初は駅伝を目指すというのも全然イメージできなかった」と本音を明かすが、「藤井さんがキャプテンになってくれて、うまく引き出してくれました」と話す。 そして11月3日に行われた東日本実業団駅伝に初参戦。1区・山下友陽、2区・山本修平、3区・藤本拓、4区・阿部飛雄馬、5区・森拳真、6区・新迫志希、7区・藤井翼というオーダー。目標は「クラブチームナンバー1」だった。36チーム中24位で、目標とするクラブチーム相手にも敗れてのフィニッシュとなった。 「目標に到達しなかったのは悔しいですけど、中学時代のような楽しい駅伝ができました」と藤本の表情が和らぐ。「沿道からも『ニトロ頑張れ!』という声もいただきました。YouTubeなどのSNSでも活動してきた成果があったと思うとうれしいです」と力になっている。 新迫で繰り上げスタートとなってしまい、「僕のところでタスキが途切れてしまった。忙しい中でも実業団選手と戦えているメンバーもいるので、申し訳ない気持ちと悔しさがありました」と悔しそうな表情は、高校・大学とトップ選手として活躍してきたプライドを覗かせる。その中でも、「駅伝の楽しかった記憶がよみがえりました」と笑顔を見せた。 [caption id="attachment_121429" align="alignnone" width="800"] 東日本実業団駅伝に出場したTEAM NITRO。写真はアンカーの藤井[/caption] 「自分のなかで最大限の走りはできたと思うんですけど、チームとしては勝負できなかった。でも、日に日にチームの雰囲気が良くなっていたので、今回は大きな一歩が踏み出せたかなと感じています」。アンカーを務めた藤井は胸を張る。メンバーたちは悔しさを噛みしめながらも、駅伝の「楽しさ」を久しぶりに味わい、充実の表情を見せていた。 [caption id="attachment_121428" align="alignnone" width="800"] チームについて語り合う(右から)藤本拓、藤井翼、新迫志希[/caption] こうしたの活動や思いに共感するプーマのサポートも受けている。チーム名の「Nitro」は“窒素”を意味し、プーマのテクノロジーから由来している。『爆発力を生み出す』イメージだ。 藤本は日々のトレーニングに同社のシューズを愛用。メンバーは12月8日に一般発売された「EKIDEN RUSH PACK」のモデルをひとあし早く着用している。「DEVIATE NITRO ELITE2」を履いた新迫は「ポイント練習はもちろん、ロードでも履きやすい。濡れた路面も滑らないので、どこでも走れるシューズです」。藤井はレーシングシューズとなる新作「FAST-R NITRO ELITE 2」を履き、「内側に沈み込む感じもなくすごく履きやすい。クセがなくてとにかく前に進みますね」と好感触を得ている。 [caption id="attachment_122095" align="alignnone" width="800"] 思いに賛同したプーマからサポートを受けている[/caption] 東日本実業団駅伝の参戦はゲームの始まりに過ぎない。キャプテンの藤井は、「一線を引いた後でも、まだまだやれるところを見せていきたいですし、『ランニング=苦しい』というイメージを変えたいと思っています。陸上を本気でやってきたからこそ、走る楽しさ、ランニングの魅力を伝えていきたい」と、“起爆剤”となるべく今後も挑戦を続けていく。 文/酒井政人

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