2023.09.27
第19回アジア大会杭州2022の陸上競技が9月29日から10月5日まで行われる。4年に一度の「アジア版オリンピック」は、本来2022年に開催が予定されていたがコロナ禍の名残で1年延期。そのため、大会名に「2022」が残されている。舞台は中国・杭州。長い歴史を誇る中国の中でも景勝地として名高い地で、日本代表がアジア・ナンバーワンを懸けて戦う。注目選手をピックアップしていく。
日本選手団は9月27日時点で男子34人、女子21人が出場する。
注目の男子100mは桐生祥秀(日本生命)と小池祐貴(住友電工)の同学年9秒台コンビが出場。桐生は2019年ドーハ大会以来の個人代表となる。昨年の休養を経て今季復帰した桐生。5月には10秒03をマークして復活を印象づけた。その後は肉離れで再び戦列を離れたものの復帰。先週の全日本実業団対抗100mで予選のみ出場し10秒20。「ここから出力は上がる。自信を持って臨みたい」と語った。
小池は今年のブダペスト世界選手権は4×100mリレーで出場。3走を務めて5位入賞に貢献した。近年は米国を拠点にトレーニング。前回のジャカルタ大会では200mで金メダルを獲得している。“アジア連覇”なるか。
100mを制すれば、1998年バンコク大会の伊東浩司以来の金メダルとなる。
男子400mも見逃せない。ブダペスト世界選手権で44秒77と髙野進の日本記録を32年ぶりに0.01秒塗り替えた佐藤拳太郎(富士通)と、同じくブダペストの予選・準決勝で44秒台を連発した佐藤風雅(ミズノ)の2人が出場。佐藤拳は男子主将を務める。
佐藤拳は全日本実業団の200mを自己新(20秒70)で優勝。佐藤風も200mの予選でシーズンベストの20秒83をマークするなど、ともにスピードを確認して杭州へ向かった。さらなる日本記録更新なるか。
『大八木門下生』2人が初めてそろって日本代表となったのが男子5000mと10000m。10000mにはオレゴン・ブダペストと2大会連続で世界選手権に出場した田澤廉(トヨタ自動車)が代表入り。5000mでは駒大2年生の佐藤圭汰がシニア初の代表となった。田澤は今年7月のアジア選手権(バンコク)10000mで優勝。『アジア王者』としてアジア大会制覇を狙う。
活況の110mハードルは13秒10のベストを持つ高山峻野(ゼンリン)とオレゴン世界選手権代表の石川周平(富士通)が出場。前回銅メダルを手にしている高山は、ブダペスト世界選手権で準決勝に進出。やや脚に不安を抱えているが、今年のアジア選手権王者としてどんな走りを見せるか。同じハードル種目では400mハードルの黒川和樹(法大)も注目。ブダペストでは48秒58をマークしてパリ五輪参加標準記録を突破した。
男子走高跳はブダペスト世界選手権で8位入賞の赤松諒一(アワーズ)、そして昨年のオレゴン世界選手権8位の真野友博(九電工)のツートップが出場。アジア記録を持つM.E.バルシム(カタール)、ダイヤモンドリーグ・ファイナル優勝のウ・サンヒョク(韓国)も参戦予定で世界最高峰の争いとなりそうだ。男子棒高跳の山本聖途(トヨタ自動車)は前回5m70の大会新記録で優勝。今季は調子を上げられていないが連覇を目指していく。
男子マラソンは池田耀平(Kao)と定方俊樹(三菱重工)が代表入り。前回は井上大仁(三菱重工)が金メダルを獲得している。続くことができるか。
女子の最注目は主将を務める廣中璃梨佳(日本郵政グループ)。5000mと10000mの2種目にエントリーした。ブダペスト世界選手権では10000mで7位入賞を果たしている。その後、9月に2週間ほど米国で高地トレーニング。出国会見では「世界選手権が終わってから励みにしてきた大会。自信をつけていきたい」と語っている。10000mでの金メダルは06年ドーハの福士加代子以来、5000mでは日本勢初優勝を狙う。
男子とともに活況続くスプリントハードル。青木益未(七十七銀行)と田中佑美(富士通)のブダペスト世界選手権代表コンビが100mハードルに出場する。青木は前回5位入賞。足をやや痛めているものの「やるしかない」と力強い。全日本実業団では100mで11秒73の3位とスピードはさすが。田中は全日本実業団決勝で13秒10の4位だった。1982年ニューデリー大会の秋元恵美以来の金メダルなるか。400mハードルには山本亜美(立命大)が出場。今年はアジア選手権、ワールドユニバーシティゲームズ、ブダペスト世界選手権、そしてアジア大会と“皆勤賞”だ。
女子走幅跳の秦澄美鈴(シバタ工業)と三段跳の森本麻里子(内田建設AC)の日本記録保持者コンビがそろって代表入り。前回は出場者ナシだっただけに、世界選手権に出場するまでレベルを引き上げた2人の功績は大きい。秦は7月のアジア選手権で6m97の日本新で金メダル。やや調子を落としているが、06年ドーハ大会の池田久美子以来の優勝を目指す。森本はアジア大会に日本勢初出場となる。こちらもアジア選手権金メダルだけに、日本勢初優勝の可能性もある。
投てきも注目。ハンマー投には日本記録保持者(69m89)のマッカーサー・ジョイ(NMFA)が出場。来年のパリ五輪を目指すマッカーサーは日本人初の70m超えもあり得る。やり投にはブダペスト世界選手権代表の斉藤真理菜(スズキ)とオレゴン世界選手権ファイナリストの武本紗栄(Team SPP)が出場。2010年広州大会の海老原有希以来となる金メダルに期待が懸かる。
女子20km競歩の藤井菜々子(エディオン)はブダペスト世界選手権で連続入賞がストップした悔しさを晴らすリスタート。七種競技の山﨑有紀(スズキ)は前回(銅)に続き2大会連続メダルを狙う。実現すれば日本初となる。
アジア大会は9月29日、朝8時(※以下、日本時間)の男子20km競歩で幕を開け、10月5日の男女マラソン(男子8時、女子8時10分スタート)が最終種目。すでにスタートしている来年のパリ五輪への道。来季を占う上でも重要な一戦となりそうだ。
アジア大会代表一覧
●男子 100m 小池祐貴(住友電工)9秒98 桐生祥秀(日本生命)9秒98 200m 上山紘輝(住友電工)20秒26 宇野勝翔(順大) 400m 佐藤風雅(ミズノ) 44秒88 佐藤拳太郎(富士通)44秒77 800m 川元奨(スズキ)1分45秒75 1500m 河村一輝(トーエネック) 3分35秒42 5000m、10000m 塩尻和也(富士通)13分16秒53(5000m) 5000m 佐藤圭汰(駒大) 13分22秒91 10000m 田澤廉(トヨタ自動車) 27分23秒44 110mH 高山峻野(ゼンリン) 13秒10 石川周平(富士通) 13秒36 400mH 児玉悠作(ノジマ)48秒77 黒川和樹(法大) 48秒58 3000m障害 砂田晟弥(プレス工業)8分26秒36 青木涼真(Honda) 8分20秒09 走高跳 赤松諒一(アワーズ) 2m30 真野友博(九電工) 2m31 棒高跳 山本聖途(トヨタ自動車)5m77i 走幅跳 城山正太郎(ゼンリン) 8m40 山川夏輝(Team SSP) 8m17 ハンマー投 福田翔大(日大院)72m01 柏村亮太(ヤマダホールディングス)72m92 やり投 ディーン元気(ミズノ)84m28 小椋健司(エイジェック)81m63 20km競歩 野田明宏(自衛隊体育学校)1時間19分00秒 村山裕太郎(富士通)1時間19分25秒 35km競歩 石田昴(自衛隊体育学校)2時間30分37秒 勝木隼人(自衛隊体育学校)2時間28分53秒 マラソン 池田耀平(Kao) 2時間06分53秒 定方俊樹(三菱重工)2時間07分05秒 十種競技 丸山優真(住友電工) 7844点 田上駿(陸上物語) 7764点 4×100mR 宇野勝翔(順大)20秒49(200m) ●女子 800m 塩見綾乃(岩谷産業)2分02秒57 1500m 後藤夢(ユニクロ)4分09秒41 5000m 山本有真(積水化学)15分16秒71 5000m、10000m 廣中璃梨佳(日本郵政グループ)14分52秒84(5000m) 100mH 青木益未(七十七銀行) 12秒86 田中佑美(富士通) 12秒89 400mH 山本亜美(立命大)56秒06 棒高跳 諸田実咲(アットホーム) 4m41 走幅跳 秦澄美鈴(シバタ工業) 6m97 三段跳 森本麻里子(内田建設AC) 14m16 ハンマー投 マッカーサー・ジョイ(NMFA) 69m89 やり投 斉藤真理菜(スズキ)62m37 武本紗栄(Team SSP)62m39 20km競歩 藤井菜々子(エディオン)1時間28分58秒 梅野倖子(順大)1時間33分38秒 35km競歩 矢来舞香(千葉興銀)2時間55分55秒 渕瀬真寿美(建装工業)2時間52分57秒 マラソン 大西ひかり(日本郵政グループ)2時間25分54秒 和久夢来(ユニバーサルエンターテインメント)2時間25分58秒 七種競技 山﨑有紀(スズキ) 5975点 大玉華鈴(日体大SMG横浜)5720点
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