◇ブダペスト世界陸上(8月19日~27日/ハンガリー・ブダペスト)9日目/最終日
ブダペスト世界陸上9日目(最終日)のモーニングセッションが行われ、男子マラソンに出場した山下一貴(三菱重工)が2時間11分19秒の12位でフィニッシュ。だが、入賞はもちろん一時はメダルの背中も見えるほどの熱走を見せた。
「自分のペースを守って走り切る」。それだけに集中して、山下はレースを進めた。序盤は集団後方で様子を見る流れだったが、その間に前方がペースを大きく変化させてもまったく気にしない。
前との差が開いても、自分のペースを刻んでいるうちに追いつく。それを繰り返すうちに、30.4kmでは一時前に出る場面もあった。だが、「集団から離れて、追いついていくペースで走ったら前に出ただけ」で、「頑張って前に出たとかではありません」。
31km過ぎにヴィクター・キプランガット(ウガンダ)が勝負を仕掛け、集団が大き崩れてからも、山下の走りは変わらない。7位集団を引っ張るかたちになったが、まっすぐ前を見据え、走り続ける。
途中からテベロ・ラマコンゴアナ(レソト)とともに熱走。36kmで6位、37.4kmで5位争い。ラマコンゴアナにややリードされたが、39km付近では前回王者のタミラト・トーラ(エチオピア)を抜いて再び5位に浮上する。メダルラインまで20~30秒の差を保ちながら、ひたすら足を前に運び続けた。
だが、終盤にまさかの展開が待っていた。「左脚のふくらはぎがケイレンしてしまって」立ち止まる。その予兆は「まったくなかった」そうだが、脚を伸ばしても治まらなかった。
再び走り始めたものの、左脚が気になって思うようにペースを上げられない。そうこうしているうちに「右脚やいろいろな場所がケイレンしてしまいました」。フィニッシュ地点の英雄広場を前に、またもストップ。なんとか完走したが、順位は12位まで下がっていた。
ケイレンを起こしたことは課題として残ったが、そこまでの自身の走りには充実感を漂わせる。「思ったよりも冷静に走ることができた。すごくいい経験になりました」と笑顔で振り返った。
長崎・瓊浦高から駒大へ。入学時からマラソンへの適性を見出され、チームの主軸として箱根駅伝では3年連続でエース区間2区を務めた。
卒業後は、マラソンを主戦場に定めて故郷の名門に入り、1年目の2021年のびわ湖毎日で挑戦した初マラソンでは18位ながら2時間8分10秒をマーク。2度目のマラソンだった昨年2月の大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会では2時間7分42秒(2位)まで記録を短縮した。
そして、今年3月の東京マラソンでは、それをさらに1分51秒も更新する日本歴代3位の2時間5分51秒。初の世界選手権代表入りと、着実に成長を遂げている。
日本勢として2013年モスクワ大会の中本健太郎(安川電機)以来となる入賞は、ほんのわずかのところで逃した。だが、ブダペストに大きな足跡を刻んだことは間違いない。
「また戻ってきます。次はメダルを目指してがんばります」
山下はそう笑顔で、力強く語った。
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
-
2024.11.23
-
2024.11.23
2024.11.20
【箱根駅伝2025名鑑】早稲田大学
2024.11.17
不破聖衣来が香港で10kmレースに出場 9位でフィニッシュ
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.20
2024.11.01
吉田圭太が住友電工を退部 「充実した陸上人生を歩んでいきたい」競技は継続
2024.11.07
アシックスから軽量で反発性に優れたランニングシューズ「NOVABLAST 5」が登場!
-
2024.10.27
-
2024.11.10
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2024.11.23
パリ五輪マラソン6位の第一生命グループ・鈴木優花 1区登録に「殻を破りたい」/クイーンズ駅伝前日会見
11月24日に開催される第44回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝in宮城2024)を前に、有力チームの選手たちが前日会見に臨んだ。 今夏のパリ五輪マラソンで6位入賞を果たした第一生命グループ・鈴木優花は、「マラソ […]
2024.11.23
約1年ぶり復帰のJP日本郵政グループ・廣中璃梨佳「感謝の気持ちを胸に走りたい」/クイーンズ駅伝前日会見
11月24日に開催される第44回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝in宮城2024)を前に、有力チームの選手たちが前日会見に臨んだ。 前回2位のJP日本郵政グループからは廣中璃梨佳が登壇。廣中は昨年12月の日本選手 […]
2024.11.23
クイーンズ駅伝の区間オーダー発表!5区で積水化学・新谷仁美、日本郵政・鈴木亜由子、資生堂・一山麻緒が対決! 第一生命・鈴木優花は1区に
第44回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝in宮城2024/11月24日)の前日となる11月23日、区間エントリーが行われ、出場する24チームのオーダーが発表された。 前回2年ぶりの優勝を飾った積水化学は、3区(1 […]
2024.11.23
強豪が激突!明日は東海と近畿で開催 年末の都大路出場校がすべて決まる/地区高校駅伝
全国高校駅伝(12月22日/京都)の出場権を懸けた地区高校駅伝は明日11月24日、東海と近畿で行われる。今年の地区高校駅伝はこの2大会をもってすべて終了し、全国大会に出場する男女計116チームがすべて決まることになる。 […]
Latest Issue 最新号
2024年12月号 (11月14日発売)
全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会