2023.07.31
学生長距離Close-upインタビュー
平林 清澄 Hirabayashi Kiyoto 國學院大學3年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。31回目は、國學院大の平林清澄(3年)をピックアップする。
7月8日のホクレン・ディスタンスチャレンジ(以下、ホクレンDC)網走大会10000mで27分55秒15をマーク。1年時から主力の1人として活躍してきた3年生が、國學院大史上初の27分台ランナーとなった。
トラック、ロードともに高いレベルでの活躍を続ける平林に、現在の心境や今後の意気込みを聞いた。
苦手のラストスパートを克服して10000m27分台へ
7月8日のホクレンDC網走大会の男子10000mA組に出場した國學院大の平林清澄(3年)は、目標タイム27分55秒00の赤いペーシングライトに合わせたペースメーカーの背後にぴったりとついてレースを進めていた。
「流れが良かったんですよ。1500mの景仁さん(鈴木、4年)と、5000mの歩夢(山本、3年)が國學院記録。網走大会の締めとして、自分もちゃんと結果を出したいなと思っていました」
この日、先輩の鈴木が1500mで3分43秒10、同期の山本が5000mで13分34秒85と、それぞれ國學院大學記録をマーク。平林のモチベーションも高まっていた。
「レース展開、運次第かなと思っていましたが、正直、直前の練習の時点で『出るな』と思っていました」と、平林は27分台への手応えを持って臨み、快調にペースを刻んだ。
後半に入って、ペースメーカーが設定ペースから遅れ始めると、ラスト5周半で吉田祐也(GMOインターネットグループ)とともに集団を抜け出す。
「ペースメーカーのペースが上がらなかったので、僕が前に出ようとしたら、吉田祐也さんが『僕が行くよ』みたいな感じで引っ張ってくれました。お陰で良いレースができたと思います」
そして、見事に國學院大の選手として初の27分台となる27分55秒15の好記録をマークした。
平林が27分台よりも大きな収穫として挙げたのが、ラストスパートだった。これまで課題としていた部分だったが、ラスト1周を62秒でカバーした。
「68秒かかっていたら27分台は出ていなかったんですよね」
苦手を克服して27分台をマークし、この日のチームの“大トリ”として最高のかたちで大会を締めくくった。
「他大学にも『ちゃんと走っているぞ』というところを見せたかった」と平林は言うが、前半の不調からの復活をアピールするには、十分なパフォーマンスだっただろう。
苦手のラストスパートを克服して10000m27分台へ
7月8日のホクレンDC網走大会の男子10000mA組に出場した國學院大の平林清澄(3年)は、目標タイム27分55秒00の赤いペーシングライトに合わせたペースメーカーの背後にぴったりとついてレースを進めていた。 「流れが良かったんですよ。1500mの景仁さん(鈴木、4年)と、5000mの歩夢(山本、3年)が國學院記録。網走大会の締めとして、自分もちゃんと結果を出したいなと思っていました」 この日、先輩の鈴木が1500mで3分43秒10、同期の山本が5000mで13分34秒85と、それぞれ國學院大學記録をマーク。平林のモチベーションも高まっていた。 「レース展開、運次第かなと思っていましたが、正直、直前の練習の時点で『出るな』と思っていました」と、平林は27分台への手応えを持って臨み、快調にペースを刻んだ。 後半に入って、ペースメーカーが設定ペースから遅れ始めると、ラスト5周半で吉田祐也(GMOインターネットグループ)とともに集団を抜け出す。 「ペースメーカーのペースが上がらなかったので、僕が前に出ようとしたら、吉田祐也さんが『僕が行くよ』みたいな感じで引っ張ってくれました。お陰で良いレースができたと思います」 そして、見事に國學院大の選手として初の27分台となる27分55秒15の好記録をマークした。 平林が27分台よりも大きな収穫として挙げたのが、ラストスパートだった。これまで課題としていた部分だったが、ラスト1周を62秒でカバーした。 「68秒かかっていたら27分台は出ていなかったんですよね」 苦手を克服して27分台をマークし、この日のチームの“大トリ”として最高のかたちで大会を締めくくった。 「他大学にも『ちゃんと走っているぞ』というところを見せたかった」と平林は言うが、前半の不調からの復活をアピールするには、十分なパフォーマンスだっただろう。躍進の1年目、充実の2年目、苦戦の3年目
平林が本格的に陸上を始めたのは美方高(福井)に入学してから。父・清一さんも美方高OBで、高校時代は福井県内で名の知られたランナーだった。 平林は高校入学時は学年で下から2番目だったものの、秋には県高校駅伝の1区を任されるまでに成長を見せた。 それでも、県内には田中悠登(敦賀気比高/現・青学大)がおり、「高校3年間は悔しさを味わうことのほうが圧倒的に多かったです」と当時を振り返る。 そして、國學院大に進学し、一気に頭角を現していく。 入学して早々に10000mで28分台をマークすると、1年目から出雲、全日本、箱根と三大駅伝すべてに出場。重要な局面を任され、安定した活躍を見せてきた。 昨年の3月には1年生にして日本学生ハーフマラソン選手権の頂点にも立ち、昨年度はチームのエース格の1人として箱根駅伝では花の2区を担った(区間7位)。 [caption id="attachment_109680" align="alignnone" width="800"] 23年箱根駅伝で花の2区を疾走する平林清澄[/caption] しかし、3年目のシーズンに向けてさらなる飛躍を果たすはずだったが、今年の箱根駅伝の後に仙骨の疲労骨折をしてしまう。 「初めての疲労骨折で、一瞬、放心しました」 予定していたマラソン挑戦を見送ることになり、ディフェンディングチャンピオンとして迎えた日本学生ハーフマラソン選手権では万全な状態ではなく、9位に終わった。 連覇を果たせなかっただけでなく、目標としていたワールドユニバーシティゲームズの代表をも逃した。 新チームでは山本とともに副将の役職に就いたが、関東インカレにも出場できず、苦しい前半戦を過ごした。「故障も続いていたので、気合を入れようと思って」と、頭を丸めたこともあった。「やっぱり勝ちたい」
前半戦は、平林のみならず、山本と主将の伊地知賢造も故障で戦列を離れていた。その間、青木瑠郁、上原琉翔といった2年生が奮闘を見せた。 「関東インカレは僕たちが出ないといけないのに、下級生が相当頑張ってくれた。刺激になりましたが、ちょっとうらやましいというか、悔しくもありました。2年生はバランス良く、本当に強いんですけど、若い世代にだけ頼っていてはダメ。僕たちがホクレンで戻ってきて、決めてやろうと思っていました」 下級生の活躍は平林にとって発奮材料になった。 本格復帰の前に、5月20日の早大競技会ではチームメイトの引っ張り役を務め、田中登馬(2年)の13分台をはじめ、チームメイトの快走をサポートした。 「練習の一環として引っ張ったんですけど、(田中の)13分台をはじめ、自己ベストが何人も出た。選手たちには自信になったと思うし、僕も不安だったんですけど、役に立てて良かったです」 平林は副将を務めることに「プレッシャーを感じる」と話すが、仲間をサポートし、チームを盛り立てる姿は、チームの牽引役としての使命感の現れでもあるだろう。 そして、自身も復帰戦に向けて調子を上げていった。 ホクレンDCではまず深川大会(7月5日)で、伊地知が復帰戦で28分37秒39と好走した。そして、網走大会で山本とともに平林が快走。前半戦に故障があった主力の3人がようやく足並みをそろえた。 ホクレンDC、関東学生網走夏季記録挑戦競技会2023を通して、チームメイトにも好記録が続出。國學院大には確実に良い流れが来ている。 昨年度は三大学生駅伝全てで表彰台を目標に掲げながらも、箱根駅伝は4位に終わった。特に箱根の時はフィニッシュの真裏でアンカーの佐藤快成(3年)を待っていたが、「本当に悔しかったです。あの時の心情は味わいたくないし、忘れたくない」と当時を振り返る。 今年度も昨年度と同じ目標に挑むが、平林の心のうちにある本音は……。 「表彰台と言いつつも、そこには優勝も含まれる。やっぱり3位を狙っておもしろいことはないじゃないですか。やっぱり勝ちたい」 頂点に立つことが簡単でないことは重々承知の上。それでも、虎視眈眈と頂を見据えている。 「早く駅伝シーズン来ないかなと、ワクワクしています。その前に夏合宿か……。夏合宿でもう一段強くなりたいですね。っていうか、強くなると思います!」 そう話す平林の表情には自信が満ち溢れていた。 [caption id="attachment_109681" align="alignnone" width="800"] 2023年度の國學院大の主力選手たち。前列左から平林清澄、伊地知賢造、山本歩夢、後列左から上原琉翔、青木瑠郁、鶴元太、佐藤快成、高山豪起、嘉数純平[/caption] ◎ひらばやし・きよと/福井県越前市出身。武生五中→美方高→國學院大。自己記録5000m13分55秒30、10000m27分55秒15、高校2年時にインターハイ5000m出場(予選落ち)、全国高校駅伝1区区間22位という成績を収めた。國學院大では学生駅伝フル出場を継続し、主にエース区間を任される。1年時には日本学生ハーフ優勝。今年はケガの影響で出遅れたものの、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ網走大会で10000m27分55秒15とエースの走りを見せた。 文/和田悟志
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