◇全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会(6月17日/神奈川・相模原ギオンスタジアム)
第55回全日本大学駅伝の関東学連推薦校選考会が行われ、東農大のルーキー・前田和摩が衝撃のレースを披露した。
エースたちによる伊勢路をめぐる戦いは熾烈を極めていた。3組終了時で5位中央学大と12位東農大は1分06秒差。8校がボーダー付近でひしめきあっていたが、前田は“大逆転”を信じていた。
9人のケニア人留学生が出場した最終組は5000mを14分07秒で通過。中間点を過ぎてペースアップするが、前田に迷いはなかった。4人の留学生の背後にピタリとついて離れない。6000mまでの1000mは2分44秒まで引きあがり、中央学大・吉田礼志(3年)、城西大・山本唯翔(4年)、東農大・並木寧音(4年)といった各校のエースがトップ集団から脱落した。
前田の快進撃は止まらない。残り1周を前にトップを奪って、スパートを放つ。スタジアムに大歓声が沸き起こった。東京国際大のアモス・ベット(1年)、山梨学大のジェームス・ムトゥク(2年)に逆転を許したとはいえ、日本人トップの3位でゴールに飛び込んだ。
「日本人1位の選手を見ながら走って、チャンスがあればどんどん前に行くレースをしました。集団が分かれたときに、思い切って前の留学生の集団についた判断が今日の結果を生んだのかなと思います」と前田は充実した表情で汗を拭った。
昨年のインターハイ5000mで日本人トップに輝いたスーパールーキーは関東インカレの2部5000mで大学デビュー。13分57秒25で4位(日本人2位)に食い込んだが、「一度も前に出ず、ラストスパートで負けて終わってしまった」と後悔が残った。大学2戦目の今回は、「潰れてもいいから前に行って勝負しようと思っていた」とラスト1周ではトップをひた走った。
7人のケニア人留学生を抑える衝撃の快走を見せた前田。関東学連の選考会が現在の形式となった1998年以降、1年生が日本人トップタイムを出したのは報徳学園高の先輩・竹澤健介(早大/05年)以来2人目だった。
暑さが残るなか、初めての10000mで刻んだタイムも衝撃的だった。28分03秒51はU20日本歴代2位。潰滝大記(中央学大)が2015年にマークした全日本選考会の日本人最高タイム(28分31秒84)を大幅に塗り替えた。
「どれくらいで走れるか分からなかったんですけど、28分40秒切りをひとつの目標にしていました。まさかここまで出てるとは思っていなかった。今までやってきたことがちゃんと100%出せたので、自分のなかで100点満点です」
スーパールーキーの快走で東農大は5位まで浮上。14年ぶりとなる全日本大学駅伝の出場を決めた。
「夏合宿でまたレベルを一段上げられると思うので、とにかく今はケガなく練習を継続していきたいなと思っています」と前田。次は〝10月決戦〟でチームを10年ぶり70回目の箱根路に導くつもりだ。その先には〝世界〟が待っている。
文/酒井政人
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