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Close-up Team/國學院大學 主力選手の「離脱ゼロ」で大躍進
Close-up Team/國學院大學 主力選手の「離脱ゼロ」で大躍進

【Close-up Team】國學院大學

主力選手の「離脱ゼロ」で大躍進
コンディショニング改善の効果

2019年の箱根駅伝で7年ぶりにシード権を獲得して以来、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けている國學院大學。昨年は10月の出雲駅伝で初優勝し、学生三大駅伝初タイトルを獲得。3ヵ月後の箱根駅伝では往路2位、総合3位にまで上り詰めた。2020年に入っても快進撃は止まらず、新チームのエースとして頭角を現し始めた藤木宏太(3年)が10000mで、中西大翔(2年)が5000mでチーム記録を更新。昨年度に匹敵する戦力を整えつつある。充実し続けるチームの根幹には、前田康弘監督のコンディショニングに対する強い信念があった。

今季の國學院大學を牽引する主力選手たち。左から7月に5000m(13分42秒24)と10000m(28分24秒79)でチーム新記録を樹立した2年生の中西大翔と3年生エースの藤木宏太、3年生ながら主将を務める木付琳、躍進著しい4年生の臼井健太

課題だったコンディショニング
力を出し切れない要因を分析

「はっきり言ってしまえば、狙った大会、狙ったレースに対して、自分たちの最高のコンディションを合わせることができた。それが私たちが一気に飛躍した要因です」(前田康弘監督)

昨年度は、令和最初の学生三大駅伝となった出雲駅伝を初制覇。全日本大学駅伝は7位だったものの、箱根駅伝では総合3位と過去最高成績を残し、トラックレースでも活躍。國學院大が学生長距離界に旋風を巻き起こした。2009年からチームを率いる前田監督は、躍進の要因をこう総括した。

國學院大が箱根駅伝に初出場したのは2001年。前田監督就任後の2011年は10位に入って初のシード権を獲得したが、以降はその『10位』が壁になって越えることができない。とうとう2015年には予選会敗退という憂き目にあった。

この時、前田監督は「ここぞという時に全員がコンディションを合わせられない」という悩みを抱えていた。トレーニングは順調に積めているはずなのに、なぜかレースではチームとしての結果が残せない。実力からすればこんな成績で終わるはずがないのに、選手たちが力を出し切れない。その原因を突き詰めていくと、大会に向けて身体の調子を整えていくピーキングに問題があった。

大学駅伝の本格的なシーズンは秋冬。季節柄、どうしても体調を崩しやすい時期に当たる。どれだけ良い練習ができていたとしても、体調を崩してしまえばその成果は水泡に帰してしまう。そこで、前田監督は2018年からコンディショニングの改善に着手。同時に栄養学も選手たちに学ばせることで、コンディションを整えるためには何が必要なのか、理解を深めさせた。

「なぜそれが必要なのかがわかれば、選手たちは栄養素を自主的に補給するようになってくれます。チームを牽引する選手たちがう
まくコンディションを整えて結果を残すと、コンディショニングの大切さがチーム全体に浸透するのも早いですよね。その結果、2年前からは、チームの主力に関しては狙った大会でコンディションを外したことはありません」

さらに、集団で寮生活をしていれば、1人や2人の体調不良者はどうしても出てきてしまうもの。ところが、近年は体調不良者が少なくなっていき、今では試合前などに体調を崩す選手はほぼいなくなったという。

「2年間、駅伝の時に体調不良者がいなかったのは事実」と前田監督。その結果が昨シーズンの大躍進につながったのである。

疲労回復のサイクルを早めてトレーニングを継続する

1年時から箱根駅伝のメンバーの座を勝ち取り、前回は1区2位の力走。今季は3年生の藤木宏太がチームをエースとして引っ張る。

北海道栄高時代は食生活の乱れもあり、貧血やケガで満足に走れない時期が長かったという。國學院大に進学してからは食事は改善されたものの、もともと体重が減りやすい体質ということもあり、常に自身にとって最適なコンディションを意識している。

「調子が良い時は体重がだいたい52㎏前後なんですけど、30㎞走などの後は49㎏まで落ちてしまう時もあるんです」(藤木)

体重が落ちるとトレーニングの疲労が抜けにくく、身体の回復が遅くなるのを感じるという。このため、食事の量を増やしつつ、栄養面にも気を使うようにした。すると、すぐに違いを体感できたと藤木は話す。

「疲労の回復が早くなったと感じています。距離走の後は内臓疲労もあって、食が進まない時もあります。でも、そういう身体の状態でもタンパク質などを入れておくことで疲労回復につながっていると感じています」

着実にトレーニングを消化して力をつけた藤木は、7月8日のホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会10000mで、尊敬する先輩である浦野雄平(現・富士通)が持っていたチーム記録を0秒66短縮する28分24秒79を叩き出した。
「トレーニングはできていましたから、記録は『出さなければいけない』と思って臨みましたし、自信もあったので、記録は出せて当然かなと。次につながるレースができたと思います」と藤木は力強く話した。

ここ2年でコンディショニングへの意識が高まって戦力が充実。藤木(先頭)を軸にチーム内競争も激しさを増している

格段に上がった練習量にも耐えられる身体を作れた

國學院大の選手の中でも、昨年度から急激に成長を続けているのが中西大翔(2年)だ。今年の箱根駅伝では1年生ながら主要区間である4区を任され、区間3位と好走。初優勝した昨年の出雲駅伝でも学生駅伝デビュー戦ながら2区を区間3位でまとめ、大器の片鱗を見せつけている。

7月8日のホクレン深川大会では10000mで28分58秒39の自己新。しかし、別の組で先輩の藤木が國學院新記録を樹立した姿を見た時は複雑だった。

「調子は良かったですし、僕も結果を残したいと思っていたので、藤木さんの記録を見て悔しい気持ちが湧いてきました」(中西)

その1週間後、ホクレン網走大会で今度は中西が魅せる。5000mで浦野が持っていたチーム記録を3秒以上更新する13分42秒24で、B組のトップを駆け抜けた。「今年に入ってからずっとコンディションが良い状態にあることは感じていました。それでも、10000mの疲労は少しあって13分50秒切りが目標だったので、この記録は自分でもびっくりしました」と中西。

入学後から一気に増えた練習量に必死に食らいついてきた。石川・金沢龍谷高時代は体調を崩すことが多かったが、栄養面を意識するようになって改善されたという。

「練習量や質が格段に上がっても、これまで一度も離脱することなく走り込めている。今のやり方がすごく自分に合っているな、と感じています」

体調を崩すことなく、良いコンディションを維持できていることが自身の成長につながっていると分析する中西は、「8月は月間1000㎞を目標に走り込みたい」と意気込む。

乳酸菌B240含有高タンパク食品で競争意識もアップ

國學院大は2018年からコンディショニングの一環として乳酸菌B240含有高タンパク食品を導入。それとともに結果がついてくるようになった。コンディションを良い状態で維持できると、さらに高強度のトレーニングが継続できるようになる。そのことは決して当たり前ではなく、選手個々の自覚と努力が欠かせないと前田監督は言う。

「昨年までチームを牽引してくれた浦野や土方(英和/現・Honda)は誰よりも走っていましたし、コンディショニングにも気をつけていました。その姿を見ていた今の選手たちが栄養面にも気を使い、コンディショニングに細心の注意を払ってトレーニングをしているのです」(前田監督)

今季は藤木と中西のほかにも、7月5日の青森県春季ディスタンス記録会5000mで自己新が続出。4年生の臼井健太は自己記録を30秒以上も縮める13分49秒24をマークした。その他に前回の箱根駅伝メンバーは6人が残っており、木付琳が3年生主将としてチームをまとめている。

そんな選手個々の成長に目を細める前田監督。実は、そこにも指揮官の巧妙な戦略があった。

「チーム内で認められた存在になったら乳酸菌B240含有高タンパク食品を部の予算で支給しています。今は箱根駅伝メンバー6人を中心とした8人だけ。夏合宿からは人数を増やして、箱根の前には登録メンバー16人に渡すようにしています」

栄養補助食品を支給することによって、「自分がチームの主力なんだ」という自覚が生まれる。その他の選手たちは「自分もそのレベルに上がりたい」と自主的に努力する。國學院大はそうやって競争意識をあおりながらも、自己管理能力を高める仕組みを作り上げてきたのだ。

個々が強くなるには何をしなければならないのかを考え、行動できるチームが強くなる。これが脈々と受け継がれていけば、それが伝統になる。

國學院大は今、新たな歴史を作るべくチーム一丸となってまい進している。

文/田坂友暁

<関連リンク>
月刊陸上競技2020年9月号

【Close-up Team】國學院大學

主力選手の「離脱ゼロ」で大躍進 コンディショニング改善の効果

2019年の箱根駅伝で7年ぶりにシード権を獲得して以来、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けている國學院大學。昨年は10月の出雲駅伝で初優勝し、学生三大駅伝初タイトルを獲得。3ヵ月後の箱根駅伝では往路2位、総合3位にまで上り詰めた。2020年に入っても快進撃は止まらず、新チームのエースとして頭角を現し始めた藤木宏太(3年)が10000mで、中西大翔(2年)が5000mでチーム記録を更新。昨年度に匹敵する戦力を整えつつある。充実し続けるチームの根幹には、前田康弘監督のコンディショニングに対する強い信念があった。 今季の國學院大學を牽引する主力選手たち。左から7月に5000m(13分42秒24)と10000m(28分24秒79)でチーム新記録を樹立した2年生の中西大翔と3年生エースの藤木宏太、3年生ながら主将を務める木付琳、躍進著しい4年生の臼井健太

課題だったコンディショニング 力を出し切れない要因を分析

「はっきり言ってしまえば、狙った大会、狙ったレースに対して、自分たちの最高のコンディションを合わせることができた。それが私たちが一気に飛躍した要因です」(前田康弘監督) 昨年度は、令和最初の学生三大駅伝となった出雲駅伝を初制覇。全日本大学駅伝は7位だったものの、箱根駅伝では総合3位と過去最高成績を残し、トラックレースでも活躍。國學院大が学生長距離界に旋風を巻き起こした。2009年からチームを率いる前田監督は、躍進の要因をこう総括した。 國學院大が箱根駅伝に初出場したのは2001年。前田監督就任後の2011年は10位に入って初のシード権を獲得したが、以降はその『10位』が壁になって越えることができない。とうとう2015年には予選会敗退という憂き目にあった。 この時、前田監督は「ここぞという時に全員がコンディションを合わせられない」という悩みを抱えていた。トレーニングは順調に積めているはずなのに、なぜかレースではチームとしての結果が残せない。実力からすればこんな成績で終わるはずがないのに、選手たちが力を出し切れない。その原因を突き詰めていくと、大会に向けて身体の調子を整えていくピーキングに問題があった。 大学駅伝の本格的なシーズンは秋冬。季節柄、どうしても体調を崩しやすい時期に当たる。どれだけ良い練習ができていたとしても、体調を崩してしまえばその成果は水泡に帰してしまう。そこで、前田監督は2018年からコンディショニングの改善に着手。同時に栄養学も選手たちに学ばせることで、コンディションを整えるためには何が必要なのか、理解を深めさせた。 「なぜそれが必要なのかがわかれば、選手たちは栄養素を自主的に補給するようになってくれます。チームを牽引する選手たちがう まくコンディションを整えて結果を残すと、コンディショニングの大切さがチーム全体に浸透するのも早いですよね。その結果、2年前からは、チームの主力に関しては狙った大会でコンディションを外したことはありません」 さらに、集団で寮生活をしていれば、1人や2人の体調不良者はどうしても出てきてしまうもの。ところが、近年は体調不良者が少なくなっていき、今では試合前などに体調を崩す選手はほぼいなくなったという。 「2年間、駅伝の時に体調不良者がいなかったのは事実」と前田監督。その結果が昨シーズンの大躍進につながったのである。

疲労回復のサイクルを早めてトレーニングを継続する

1年時から箱根駅伝のメンバーの座を勝ち取り、前回は1区2位の力走。今季は3年生の藤木宏太がチームをエースとして引っ張る。 北海道栄高時代は食生活の乱れもあり、貧血やケガで満足に走れない時期が長かったという。國學院大に進学してからは食事は改善されたものの、もともと体重が減りやすい体質ということもあり、常に自身にとって最適なコンディションを意識している。 「調子が良い時は体重がだいたい52㎏前後なんですけど、30㎞走などの後は49㎏まで落ちてしまう時もあるんです」(藤木) 体重が落ちるとトレーニングの疲労が抜けにくく、身体の回復が遅くなるのを感じるという。このため、食事の量を増やしつつ、栄養面にも気を使うようにした。すると、すぐに違いを体感できたと藤木は話す。 「疲労の回復が早くなったと感じています。距離走の後は内臓疲労もあって、食が進まない時もあります。でも、そういう身体の状態でもタンパク質などを入れておくことで疲労回復につながっていると感じています」 着実にトレーニングを消化して力をつけた藤木は、7月8日のホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会10000mで、尊敬する先輩である浦野雄平(現・富士通)が持っていたチーム記録を0秒66短縮する28分24秒79を叩き出した。 「トレーニングはできていましたから、記録は『出さなければいけない』と思って臨みましたし、自信もあったので、記録は出せて当然かなと。次につながるレースができたと思います」と藤木は力強く話した。 ここ2年でコンディショニングへの意識が高まって戦力が充実。藤木(先頭)を軸にチーム内競争も激しさを増している

格段に上がった練習量にも耐えられる身体を作れた

國學院大の選手の中でも、昨年度から急激に成長を続けているのが中西大翔(2年)だ。今年の箱根駅伝では1年生ながら主要区間である4区を任され、区間3位と好走。初優勝した昨年の出雲駅伝でも学生駅伝デビュー戦ながら2区を区間3位でまとめ、大器の片鱗を見せつけている。 7月8日のホクレン深川大会では10000mで28分58秒39の自己新。しかし、別の組で先輩の藤木が國學院新記録を樹立した姿を見た時は複雑だった。 「調子は良かったですし、僕も結果を残したいと思っていたので、藤木さんの記録を見て悔しい気持ちが湧いてきました」(中西) その1週間後、ホクレン網走大会で今度は中西が魅せる。5000mで浦野が持っていたチーム記録を3秒以上更新する13分42秒24で、B組のトップを駆け抜けた。「今年に入ってからずっとコンディションが良い状態にあることは感じていました。それでも、10000mの疲労は少しあって13分50秒切りが目標だったので、この記録は自分でもびっくりしました」と中西。 入学後から一気に増えた練習量に必死に食らいついてきた。石川・金沢龍谷高時代は体調を崩すことが多かったが、栄養面を意識するようになって改善されたという。 「練習量や質が格段に上がっても、これまで一度も離脱することなく走り込めている。今のやり方がすごく自分に合っているな、と感じています」 体調を崩すことなく、良いコンディションを維持できていることが自身の成長につながっていると分析する中西は、「8月は月間1000㎞を目標に走り込みたい」と意気込む。

乳酸菌B240含有高タンパク食品で競争意識もアップ

國學院大は2018年からコンディショニングの一環として乳酸菌B240含有高タンパク食品を導入。それとともに結果がついてくるようになった。コンディションを良い状態で維持できると、さらに高強度のトレーニングが継続できるようになる。そのことは決して当たり前ではなく、選手個々の自覚と努力が欠かせないと前田監督は言う。 「昨年までチームを牽引してくれた浦野や土方(英和/現・Honda)は誰よりも走っていましたし、コンディショニングにも気をつけていました。その姿を見ていた今の選手たちが栄養面にも気を使い、コンディショニングに細心の注意を払ってトレーニングをしているのです」(前田監督) 今季は藤木と中西のほかにも、7月5日の青森県春季ディスタンス記録会5000mで自己新が続出。4年生の臼井健太は自己記録を30秒以上も縮める13分49秒24をマークした。その他に前回の箱根駅伝メンバーは6人が残っており、木付琳が3年生主将としてチームをまとめている。 そんな選手個々の成長に目を細める前田監督。実は、そこにも指揮官の巧妙な戦略があった。 「チーム内で認められた存在になったら乳酸菌B240含有高タンパク食品を部の予算で支給しています。今は箱根駅伝メンバー6人を中心とした8人だけ。夏合宿からは人数を増やして、箱根の前には登録メンバー16人に渡すようにしています」 栄養補助食品を支給することによって、「自分がチームの主力なんだ」という自覚が生まれる。その他の選手たちは「自分もそのレベルに上がりたい」と自主的に努力する。國學院大はそうやって競争意識をあおりながらも、自己管理能力を高める仕組みを作り上げてきたのだ。 個々が強くなるには何をしなければならないのかを考え、行動できるチームが強くなる。これが脈々と受け継がれていけば、それが伝統になる。 國學院大は今、新たな歴史を作るべくチーム一丸となってまい進している。 文/田坂友暁 <関連リンク> 月刊陸上競技2020年9月号

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