2020.08.20
9区で区間新記録を樹立し、逆転優勝の立役者となった順大の髙橋謙介(左)。右は駒大の北田初男
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は順大が10年ぶりの総合優勝を果たした第75回大会(1999年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?
順大が駒大の3冠を阻止。4区間で新記録が誕生
2区で驚異的な区間新記録を打ち立てた順大の三代直樹
優勝争いは前回大会に続き、3連覇を狙う神奈川大、出雲・全日本を制していた駒大、その両大会で準優勝だった山梨学大による「YKK対決」と見られた第75回大会。
前回出場校の専大、関東学院大が予選会敗退を喫した一方で、法大が2年ぶり、中央学大が4年ぶりに本戦出場を果たした。
1区はスローペースな出だしから17km過ぎにペースアップ。スパート合戦を制した拓大の東勝博(4年)が区間賞を手にした。優勝候補の神奈川大(小松直人)と駒大(西田隆維)が3秒差の同タイムで2位、3位となり、山梨学大は先頭から33秒差の9位スタートとなった。
各校のエース級が集う2区では、順大の三代直樹(4年)が圧巻の走りを見せた。8位でタスキを受け取ると、その1つ前を走っていた日大の山本佑樹(3年)とともに先頭に追いつき、終盤は独走。最大の難所である残り3kmの上り坂を驚異的なペースで駆け抜け、渡辺康幸が1995年に作った区間記録を2秒更新する1時間6分46秒のスーパー区間新記録を樹立した。1分24秒差で2位は駒大、さらに1分04秒差で東海大が3位で続いた。
3区でも順大は1年生の入船満が区間3位の好走で2位・駒大との差を2分20秒まで広げたが、4区では駒大が反撃に出た。藤田敦史(4年)が区間2位に2分34秒差をつける区間新記録の快走で逆転。5区でも首位を守り切り、初の往路優勝を果たした。1分50秒差で順大が往路2位。2区以降、順位を落とさなかった往路3位の東海大は5区に起用された1年生・柴田真一の区間賞が光った。
復路では8区まで駒大が首位の座を死守したものの、9区では順大の高橋謙介(2年)が区間記録を13秒を更新する区間トップの走りで58秒差を再逆転。逆に1分33秒差をつけた。順大は10区の宮崎展仁(2年)も区間賞とダメ押しし、10年ぶりの総合優勝と復路優勝を手にした。大会前は出雲5位、全日本8位と優勝候補に挙がっていなかったが、箱根路で番狂わせを起こした。
駒大は4分46秒差で2位。初優勝と史上2校目となる学生駅伝3冠を逃した。神奈川大は復路2位の追い上げで総合3位は死守。中大は3年連続の4位、優勝候補に挙げられた山梨学大は往路の出遅れが響いて総合6位に上げるのが精一杯だった。
シード権争いは、9区終了時で12位だった東洋大が最終10区の柏原誠司(3年)の3人抜きで制す。10位の早大は40秒差で8年ぶりにシード権を落とした。また、全日本で3位に食い込み、この大会でも1区と7区で区間賞を獲得した拓大はその他の区間が伸び悩んで11位にとどまった。
<人物Close-up>
三代直樹(順大4年)
順大ではトラックでも活躍し、10000mでは2年時の世界ジュニア選手権、3年時のユニバーシアードで7位入賞したほか、日本インカレでは4年時に5000mと10000mの2冠に輝いている。箱根駅伝では2年目から花の2区を担い、4年生で1時間6分46秒の区間新記録を樹立。この記録は2008年に山梨学大のメグボ・ジョブ・モグスが塗り替えるまで9年間破られず、日本人最高記録としても19年に塩尻和也(順大、現・富士通)が更新するまで20年間残った。富士通に入社後は01年のエドモントン世界選手権10000mに出場(22位)。08年に現役を引退し、現在は富士通の長距離コーチを務めている。
<総合成績>
1位 順天堂大学 11.07.47(往路2位、復路1位)
2位 駒澤大学 11.12.33(往路1位、復路5位)
3位 神奈川大学 11.17.00(往路6位、復路2位)
4位 中央大学 11.17.15(往路4位、復路4位)
5位 東海大学 11.20.51(往路3位、復路9位)
6位 山梨学院大学 11.22.00(往路8位、復路3位)
7位 大東文化大学 11.26.28(往路9位、復路6位)
8位 日本大学 11.28.17(往路5位、復路12位)
9位 東洋大学 11.29.07(往路12位、復路7位)
========シード権ライン=========
10位 早稲田大学 11.29.47(往路7位、復路13位)
11位 拓殖大学 11.30.13(往路13位、復路8位)
12位 日本体育大学 11.30.55(往路10位、復路10位)
13位 中央学院大学 11.38.18(往路15位、復路11位)
14位 法政大学 11.39.32(往路11位、復路15位)
15位 帝京大学 11.40.45(往路14位、復路14位)
<区間賞>
1区(21.3km)東 勝博(拓 大4) 1.04.01
2区(23.0km)三代直樹(順 大4) 1.06.46=区間新
3区(21.3km)野々口修(神奈川大3)1.04.18
4区(20.9km)藤田敦史(駒 大4) 1.00.56=区間新
5区(20.7km)柴田真一(東海大1) 1.12.35
6区(20.7km)中澤 晃(神奈川大4) 58.06=区間新
7区(21.2km)吉田行宏(拓 大4) 1.04.41
8区(21.3km)相馬雄太(神奈川大1)1.06.07
9区(23.0km)高橋謙介(順 大2) 1.09.17=区間新
10区(23.0km)宮崎展仁(順 大2) 1.11.08
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順大が駒大の3冠を阻止。4区間で新記録が誕生
2区で驚異的な区間新記録を打ち立てた順大の三代直樹 優勝争いは前回大会に続き、3連覇を狙う神奈川大、出雲・全日本を制していた駒大、その両大会で準優勝だった山梨学大による「YKK対決」と見られた第75回大会。 前回出場校の専大、関東学院大が予選会敗退を喫した一方で、法大が2年ぶり、中央学大が4年ぶりに本戦出場を果たした。 1区はスローペースな出だしから17km過ぎにペースアップ。スパート合戦を制した拓大の東勝博(4年)が区間賞を手にした。優勝候補の神奈川大(小松直人)と駒大(西田隆維)が3秒差の同タイムで2位、3位となり、山梨学大は先頭から33秒差の9位スタートとなった。 各校のエース級が集う2区では、順大の三代直樹(4年)が圧巻の走りを見せた。8位でタスキを受け取ると、その1つ前を走っていた日大の山本佑樹(3年)とともに先頭に追いつき、終盤は独走。最大の難所である残り3kmの上り坂を驚異的なペースで駆け抜け、渡辺康幸が1995年に作った区間記録を2秒更新する1時間6分46秒のスーパー区間新記録を樹立した。1分24秒差で2位は駒大、さらに1分04秒差で東海大が3位で続いた。 3区でも順大は1年生の入船満が区間3位の好走で2位・駒大との差を2分20秒まで広げたが、4区では駒大が反撃に出た。藤田敦史(4年)が区間2位に2分34秒差をつける区間新記録の快走で逆転。5区でも首位を守り切り、初の往路優勝を果たした。1分50秒差で順大が往路2位。2区以降、順位を落とさなかった往路3位の東海大は5区に起用された1年生・柴田真一の区間賞が光った。 復路では8区まで駒大が首位の座を死守したものの、9区では順大の高橋謙介(2年)が区間記録を13秒を更新する区間トップの走りで58秒差を再逆転。逆に1分33秒差をつけた。順大は10区の宮崎展仁(2年)も区間賞とダメ押しし、10年ぶりの総合優勝と復路優勝を手にした。大会前は出雲5位、全日本8位と優勝候補に挙がっていなかったが、箱根路で番狂わせを起こした。 駒大は4分46秒差で2位。初優勝と史上2校目となる学生駅伝3冠を逃した。神奈川大は復路2位の追い上げで総合3位は死守。中大は3年連続の4位、優勝候補に挙げられた山梨学大は往路の出遅れが響いて総合6位に上げるのが精一杯だった。 シード権争いは、9区終了時で12位だった東洋大が最終10区の柏原誠司(3年)の3人抜きで制す。10位の早大は40秒差で8年ぶりにシード権を落とした。また、全日本で3位に食い込み、この大会でも1区と7区で区間賞を獲得した拓大はその他の区間が伸び悩んで11位にとどまった。 <人物Close-up> 三代直樹(順大4年) 順大ではトラックでも活躍し、10000mでは2年時の世界ジュニア選手権、3年時のユニバーシアードで7位入賞したほか、日本インカレでは4年時に5000mと10000mの2冠に輝いている。箱根駅伝では2年目から花の2区を担い、4年生で1時間6分46秒の区間新記録を樹立。この記録は2008年に山梨学大のメグボ・ジョブ・モグスが塗り替えるまで9年間破られず、日本人最高記録としても19年に塩尻和也(順大、現・富士通)が更新するまで20年間残った。富士通に入社後は01年のエドモントン世界選手権10000mに出場(22位)。08年に現役を引退し、現在は富士通の長距離コーチを務めている。 <総合成績> 1位 順天堂大学 11.07.47(往路2位、復路1位) 2位 駒澤大学 11.12.33(往路1位、復路5位) 3位 神奈川大学 11.17.00(往路6位、復路2位) 4位 中央大学 11.17.15(往路4位、復路4位) 5位 東海大学 11.20.51(往路3位、復路9位) 6位 山梨学院大学 11.22.00(往路8位、復路3位) 7位 大東文化大学 11.26.28(往路9位、復路6位) 8位 日本大学 11.28.17(往路5位、復路12位) 9位 東洋大学 11.29.07(往路12位、復路7位) ========シード権ライン========= 10位 早稲田大学 11.29.47(往路7位、復路13位) 11位 拓殖大学 11.30.13(往路13位、復路8位) 12位 日本体育大学 11.30.55(往路10位、復路10位) 13位 中央学院大学 11.38.18(往路15位、復路11位) 14位 法政大学 11.39.32(往路11位、復路15位) 15位 帝京大学 11.40.45(往路14位、復路14位) <区間賞> 1区(21.3km)東 勝博(拓 大4) 1.04.01 2区(23.0km)三代直樹(順 大4) 1.06.46=区間新 3区(21.3km)野々口修(神奈川大3)1.04.18 4区(20.9km)藤田敦史(駒 大4) 1.00.56=区間新 5区(20.7km)柴田真一(東海大1) 1.12.35 6区(20.7km)中澤 晃(神奈川大4) 58.06=区間新 7区(21.2km)吉田行宏(拓 大4) 1.04.41 8区(21.3km)相馬雄太(神奈川大1)1.06.07 9区(23.0km)高橋謙介(順 大2) 1.09.17=区間新 10区(23.0km)宮崎展仁(順 大2) 1.11.08 PlayBack箱根駅伝1998/神奈川大が往路・復路完全制覇で2連勝 【学生駅伝ストーリー】77歳の“新指揮官”青葉監督が目指す名門・日大「箱根シード権への道」 【学生駅伝ストーリー】東海大黄金世代、それぞれの4年間(1)館澤亨次 頼れる主将 【学生駅伝ストーリー】“高校最速”から学生長距離界のトップへ。お互いをライバルと認め合う早大・中谷雄飛と駒大・田澤廉 【学生駅伝ストーリー】相澤晃を育てた「ガクセキ・メソッド」と東洋大での4年間
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