注目の高校アスリート2019 出口晴翔(『月刊陸上競技』2019年3月号誌面転載記事)

注目の高校アスリート2019 出口晴翔(東福岡2福岡)

ターゲットは〝為末超え〟
ユース五輪男子400mH金メダリストが高校記録に挑戦

 2018年は出口晴翔(東福岡2)にとって、大躍進のシーズンになった。男子400mハードルで8月の三重インターハイで2年生優勝を果たすと、10月のブエノスアイレス・ユース五輪でも安定したレースで、同大会の日本陸上勢唯一の金メダルを獲得。185cm、75kgの恵まれた体格で、将来性も見込まれ、日本陸連のダイヤモンドアスリートに認定された。その一方で、誰からも信頼される人間性への評価も高い。来たる2019年シーズンへの目標、それは高校記録の更新だ。
◎文・写真/田端慶子

冬季は走力アップに着手

 指導者の語り口から、出口晴翔(東福岡2)の冬季練習の充実ぶりが透けて見えた。
「今年の出口はいいですね。冬季は(400mハードルの)前半を楽にスピードに乗れるようにするため、走力をしっかりつけるというテーマで取り組んでいます」と顧問の植木貴頼先生。東福岡は冬季の場合、月曜から金曜まで、校内(福岡市博多区)にある約130mの全天候直走路や砂場、トレーニングルームで汗を流すが、土曜になると、自転車で約20分の博多の森競技場周辺へ移動。競技場近くの階段と坂を使ったハードメニューをこなす。約220段の階段を1段ずつや1段飛ばしで2~3往復した後、300m続く傾斜のきつい坂を使って何度も走り込む。

 練習メニューは、キャプテンと副キャプテンが決めるのが東福岡の通例で、出口は「キャプテン(宮崎匠)と副キャプテンの自分は追い込みたいタイプ。自分たちの学年はみんなやりたがるので、負荷が大きい内容になっています。この時期は大会が少ないので、成果がわかりませんが、来シーズンが楽しみだなと感じています」と言う。

 植木先生も「今年は倒れ込むほど追い込んでいます。それほど、気合いが入っているんじゃないでしょうか」と肌で熱量を感じている。

 2018年の高校男子400mハードルの主役を飾った出口。三重インターハイでは高2歴代5位の51秒17で優勝。さらに、10月には大きな勲章を手にする。
 ステージ1とステージ2の合計記録で順位を決める形式で競ったブエノスアイレス・ユース五輪。一般・高校用(91.4cm)よりも低い高さ(84.0cm)で行われたレースで、出口はステージ1で51秒40をマークして首位に立つと、3日後のステージ2も51秒28で制し、金メダルを獲得した。
 そうした実績などが評価され、11月には日本陸連の第5期ダイヤモンドアスリートに認定された。

 4月から3年生。これまで以上に注目を集めるだろう。だが、「注目されるのは好きな方。先生からは常に『周りから応援される選手になりなさい』と言われているので、応援されると力になります」と至ってマイペースだ。

 高校入学後は親元を離れ、寮生活を送っているが、自室の常に視界に入る場所には、年初にその1年の目標を書いたA4の紙を貼っている。「昨年は『日本一』と書きたい気持ちもありましたが、ユース五輪があると聞いて、できたらいいな程度の軽い気持ちで『ユース五輪の代表』と書いたんです。それが叶ったので、目標は大きく掲げた方がいいんだと思うようになりました。それで、今年は『高校記録更新』と書きました。為末(大)さんの記録は別格ですけど……」。高校記録は49秒09。後に世界選手権で2度銅メダルを獲得した為末が、広島皆実高3年時の1996年に出したもの。この記録をターゲットに、冬季練習にもより一層気合いが入る。

中3は〝目標通り〟の全中6位 〝悔しい〟ジュニアオリンピック2位 

 福岡県の東部、周防灘を望む苅田町出身の出口。陸上と出会ったのは小1の頃。幼稚園で一番仲の良かった友人が、町内の苅田与原RCに加入したことに感化されて始めた。小2からはスイミングスクールにも通ったが、小5で陸上に専念。「試合にも出ていましたし、ランニングクラブなら友人に会えたので」と言うのが理由だそうだ。

 夏は短距離、冬は長距離という二刀流だったため、地区の駅伝大会で区間賞を取ったこともあるとか。小5の冬にはチームが県から推薦を受けたというかたちで、全国小学校クロスカントリーリレーにも出場した。

 苅田中では、ランニングクラブの仲間たちと一緒に陸上部に入り、当初は100mだったが、より高いステージを目指して秋に110mハードルに転向。新人戦の県大会(100mハードル)でいきなり決勝に進み、5位に入った。2年生になると勢いは加速し、出るたびに自己記録を更新するような好レースが続いた。夏は九州大会に出場し、低学年100mハードルで優勝している。

 中学での初の全国大会は、その年のジュニアオリンピック。Bクラスの110mハードルでは1位と同タイム、着差ありの2位(14秒77)。「全国大会に出られるだけで幸せだったので、全然悔しくなかったですね。しかも先を見たくない性格なので、来年は全中で勝とうと思うこともなく、冬季練習をがんばろうというあっさりした感じでした」。

 中3の長野全中には400mと110mハードルの2種目で出場。400mは予選落ちだったが、決勝進出を狙った110mハードルは目標通りに6位に入った。ジュニアハードル(ハードルの高さ99.1cm)で行われるジュニアオリンピックは、「(顧問の森上直久)先生に日本一をプレゼントしたい」と優勝を目指したという。しかし、準決勝でタイムが伸びず、決勝が9レーンになったことで気落ちしてしまい、2位(14秒71)。初めて、「負けた悔しさ」を実感した。

※この続きは2019年2月14日発売の『月刊陸上競技』3月号をご覧ください