Special Interview戸邉直人(『月刊陸上競技』2019年3月号誌面転載記事)

Special Interview 戸邉直人 (つくばツインピークス)

IAAF世界室内ツアーで2m35の大ジャンプ!!
13年ぶり日本新、大会新&今季世界最高で優勝の快挙

今年4年目を迎えた国際陸連(IAAF)ワールド室内ツアーの第2戦カールスルーエ大会(ドイツ/2月2日)の試合前、フィールド内で戸邉直人(つくばツインピークス)に声をかけた。「調子はいいですよ! 冬季練習から故障もなく順調に練習を継続することができた分、精神的にも調子が良いですね」とリラックスした明るい声が返ってきた。その約2時間後、戸邉は13年ぶりの日本新記録を樹立し、その言葉を見事に証明してみせた。
●文・写真/望月次朗(Agence SHOT)

「2m35は想像を超えた結果だった」

――大会新、今季世界最高記録に加えて13年ぶりの日本新記録で優勝。優勝でIAAF室内シリーズのポイントも10点を獲得しました。
  今季初戦にもかかわらず、一挙に世界トップジャンパー入りする結果を残しましたね。
戸邉 まったくの想像外で実感がありませんが……、室内、屋外ともこのレベルを継続したいですね。

――この大会に出場した目的は?
戸邉 昨年のシーズンを終えてから考えていたことですが、冬季練習を故障もなく非常に順調に消化してきたので、その成果がどの程度のものなのか、冬季練習の現状を確認するのが目的です。
2019年の屋外シーズンに向けての技術的な精度を高めるための方向性、トレーニングが順調に行われているのか、結果として現れているかを感じたいということです。ですから、まさかここまで跳べるとは思ってもいなかったです。

――戸邉選手が3位タイだったジャカルタ・アジア大会で優勝した王宇選手に、今回は圧勝しました。
戸邉 結果としては、想像を超えたいい出来です。このようなジャンプを継続することが理想ですね。
今日は2m26、2m29の試技でちょっとテクニックが乱れかかったので、ギリギリでなんとか越えた感じでした。
2m31をクリアした時点で、今回のホテルで相部屋だった王宇選手をライバルとして意識するようになり、勝負がかかってきたので、この時点でもう1度メンタルの部分でシャキッと、勝利を目指してしっかり集中していけたのは良かったと思います。
彼とはよく試合をして、昨年の対戦成績では1勝2敗と負け越しています。5月のゴールデングランプリ大阪で勝ちましたが、DLモナコとアジア大会で負けています。それ以前からも勝ったり負けたりしてきた、良きライバル的な選手です。
なので、僕の中では「(アジア大会の)リベンジ成功」というよりは、「今回は勝った」という感覚が強いです。
これからも、彼とはアジアや世界規模の試合で戦っていくことになると思いますので、競いながら、お互い高めていけたらうれしいなと思っています。

――この冬季練習を迎える段階で、長年かけて取り組んできた筋力的なベースアップを継続しつつ、
昨年で固まりつつあった技術の精度を高めることを目指すと言っていました。今回の2m35成功は、その成果ですか。
戸邉 そうでしょうね。これといった練習の成果や、技術の精度が高まったという確信はなかなか具体的に説明することはできませんが、これまで積み上げてきた総合的なものの上にさらに積み上がったからこそ、これまで跳ぶことができなかった「記録」が生まれたのだと思います。
昨年も2m35は視野に入っていましたが、狙った試合でうまく跳べず、自己記録は1cm更新できましたが〝2m32どまり〟でした。
ですから、ある程度の技術的な不安定さも解消されたのではないかと考えています。

――今回の助走は6歩でしたが、どこか問題はありましたか。
戸邉 助走に関しては、昨年は9歩助走にしようとしていたのですが、日本の試合では無理なくできるけど、欧州でやると競技場のスペースが限られてくるので、会場によって9歩助走と6歩助走を使い分けてやっていました。
ただ、1つ自信を持って言えることは、筋力的なベースアップかもしれませんが、昨年から故障をしていないことで、「蓄積」ができるようになったこと。これは大きな進歩だと思います。

――昨年からの変化はありますか?
戸邉 昨シーズンを終えて、メンタルの部分で問題があった思いました。
どういう問題かと言うと、結果、記録への執着心がそれほど強くなく、「とりあえず出場する」ような気持ちだったな、と。
でも今は、1回目のジャンプで成功することも大事ですが、3回失敗しなければ競技を続行できると考えると、リラックスできてチャンスがもっと広がるように感じます。そうすることによって各ジャンプを冷静に分析することができ、バーの落とし方が背中なのか、肩なのか、それとも全然ダメだったのか、次のジャンプに余裕を持って調整、対処できるようになりました。
2m37の最初のジャンプは突っ込み過ぎましたが、2回目、3回目は冷静に分析、調整ができて良い跳躍だったと思います。
この戦い方は、昨年のDLファイナルのブリュッセルで経験したことからヒントを得ています。
2m26を僕が1回でクリアした時点で、トップに立っていましたが、次にバーが2m29に上がると、トップ選手が突然ギアチェンジ。
たちまち5人が1回で越えていった衝撃が忘れられません。試合の進め方、大事な局面でのエネルギーの使い方など、見習うことはまだたくさんあります。

※この続きは2019年2月14日発売の『月刊陸上競技』3月号をご覧ください