11年ぶり高校新「13秒34」の背景を探る(『月刊陸上競技』2018年10月号誌面転載記事)

追跡・三重インターハイ 女子100mH 小林歩未(市船橋3千葉)

真夏の主役となったシンデレラガールが刻んだ快挙までの軌跡

うだるような酷暑に見舞われた三重インターハイで誰よりも力強く、どのアスリートよりもまばゆい輝きを見せたのが女子100mハードルの小林歩未(市船橋3千葉)だ。6月の日本選手権の準決勝で高校歴代5位タイ(当時)の13秒47(+1.5)をマークした勢いそのままに、インターハイは13秒34(-0.3)で制覇。同種目で2005?07年に3連覇を成し遂げた寺田明日香(恵庭北・北海道)が07年に樹立した高校記録13秒39を11年ぶりに更新した。真夏の主役となったシンデレラガールが刻んだ快挙までの軌跡、急成長を遂げた3年間を、指導する後藤彰英先生が語ってくれた。

未完成だったフィジカルと感じたポテンシャル

2013年から市船橋高(千葉)で指導にあたる後藤彰英先生が小林歩未と出会ったのは2015年6月のこと。「とにかく華奢。(成長までに)時間はかかるかな」というのが第一印象だったという。その一方でポテンシャルの高さも感じ、「基礎体力、走力の強化」をテーマとして高校1年目をスタートさせた。

「小林を初めて見たのは彼女が中学3年生だった6月です。本校の卒業生で400mハードルをやっていた比嘉和希(現・山梨学大)と同じ習志野六中出身で、指導されていた富所裕先生が練習に連れてきてくれました。その頃は中学1年生みたいな体格で、スタートから1台目まで8歩でいけるのかなと思うくらいでした。その年の県通信大会は向かい風が強くてハードル間を3歩で行けず、17秒かかって予選落ちしています(17秒61 /?1.9)。それでも県中学総体では全中の参加標準記録を切りましたし、細い割にバネはあるなという印象は持ちました。時間はかかるかもしれないけど、将来的に楽しみな子だと思いました」

その半年後、小林は市船橋高に入学。こうして後藤先生との3年間がスタートした。

「本当に華奢だったので、入学した当初は『この部分を強くしよう』というレベルではなく、土台をしっかりと作らないといけないという段階でした。まずは走力を上げようと、100mのトップスピードのベースを上げることにしました。フォームは腕が伸びてしまう癖があったのですが、体幹が動かないからそうなるので、時間をかけて基礎体力をしっかりつけることも重視しました」

トラックシーズンでの着実な成長とターニングポイントとなった初めての冬季練習

小林は1年目からインターハイ路線に出場し、千葉県大会の100mハードルで7位に。秋の関東高校新人では14秒64(+0.4 /4位)までタイムを短縮し、トラックシーズンで一歩ずつ着実な成長を遂げた。

「中学でしっかり練習を継続してくれていたことも大きく、入学直後からあまりブランクは感じませんでした。スムーズに高校
の練習に移行できたのは良かったと思います。インターハイ路線でもまずまずの結果を出しましたが、正規の間隔でハードル練習を行ったのは大会直前で、まずは高さに慣れることを重点的に練習させました。中学に比べてハードルが高くなって怖さが出ないように、短いハードル間で慣れてから徐々に間隔を延ばしていきました。1年目はそこまで結果を期待していなかったので、県大会はよく決勝まで行ったなという印象です。とにかく一生懸命練習する子なので、少しずつ成長していったと思います」

そして、高校生になって初めての冬季練習では、後藤先生が1つの大きなターニングポイントだと感じる進化を見せた。

「チームとしては11月から冬季に入ります。まずは負荷を落として量を追う期間を作るんですけど、翌年にブレイクする子は11月終わりから12月くらいで、こちらが驚くような動きを見せます。小林がまさにそうでした。冬の伝統練習でもある砂浜ダッシュで、勝ち上がり形式で気がつくと一番前を走っていることが多かったのです。『これは覚醒するかも』と感じるようになりました。とにかく素直で手を抜かない子でしたので、しっかり積み重ねていけたと思います」
※この続き2018年9月14日発売の『月刊陸上競技』10月号をご覧ください

※故障を抱えたまま臨んだ三重インターハイ、インターハイ直前の練習メニュー、市船橋高のシーズン中のトレーニング例、小林選手のインタビュー、などが続きます